起⑥
⑥学内で学生用駐輪場から バイクを出そうとして ふと視線を感じて振り返ると 何やら自分を いや バイクをか 注視している御仁がいた やぁ おいっす ハマサキZ2か 久しぶりに見る 横田で見かけて以来だから 大分前か やっと合点がいった 玄徳か いや悪い いや ありがとう なんか君が自転車を見つけてくれたと聞いて なんかお礼を言わなければと思って しかし いいバイクだな でも 確か 君 ええと 堀部 法正だったっけ 堀部でいいよ 堀部のところは 自分達でもバイクを生産しているだろう あぁ 自分達の工場 の製品 ブランドを乗らなくていいのか いや 自分のところは おやっさんの方針で 自社の製品に限らず 自分の好きなもの 自分に合ったものを 選んでいいことになっている だから 内外問わず 他所の会社の製品だらけだよ そう なのか 自分も ガキの時分から 自分達の会社の製品でなくても 他所の会社でいい製品があったら ソレを買い求めて与えてくれた ウチはコレが当たり前だった 変わっていると言われれば 変わっているかも知れない 玄徳が日常使っている 自転車を盗まれたといって 躍起になって捜している というのは 学内で 結構 ウワサになっていた 鳳雛や 伏龍でさえ 捜すのを手伝ってくれたのに 見つからない 一応 サツにも届け出ていたが さっぱりだった 年代物の古いタイプのハンドルもギアも重いシロモノだったが 玄徳に何やら思い入れがあるらしく かなり真剣かつ神経質になって捜していた が手掛かりさえ掴めない 流石の鳳雛も探し倦ねて 法正堀部に助けを求めた 法正は しかし いとも簡単に見つけ出した 自転車は 大学校と隣りの会社の塀と塀との隙間に 器用に落とし込まれていた 大学校の駐輪場に停めてあり 夕方玄徳が乗って帰ろうとしたら見当たらなかった ということから 多分極近くにある 隠されているのではないか との推測から 割りと簡単に探し出せた という しかし かなり面倒な手の込んだイタズラ 嫌がらせだった あるいは からかいか 金持ちの本田のお坊ちゃんが 古臭い自転車なんぞに乗っている ソレが癇に障ったか 虫が好かなかったのであろう 自転車は玄徳の元に戻ったが それ以来 玄徳はもう その自転車には乗らなかった 聞けば 静濱の本田本家に戻してしまった ということだった よほど大事な自転車だったんだろう あぁ 少し訳ありでね 大事なモノだったもんだから 助かった ありがとう いや どういたしまして あまり話をしたことがなかったっけ これからは もうちょっと 話をしよう 自分はこれから 野暮用があって 失礼するが いいかな 悪い 引き留めて申し訳無かった じゃあ また今度 あぁ 又な ナウ ゼッツ 堀部は立ち去っていった




