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【絶望セーブ】深淵ダンジョンの管理人、捨て子のパパになる 〜最強魔王たちと育てる、パンドラの箱の最後の希望〜  作者: beens
第5章『天界逆侵攻編』

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第44話:試練の瀑布! 第三の使徒、武神の『ガチンコ勝負』とルルの覚醒

 天界の第三の丘、『断罪の瀑布ジャッジメント・フォール』。

 そこは、天から地へと流れるのではなく、地上から天へと水が逆流し続ける巨大な滝がそびえ立つ、荘厳な試練の場だった。

「……ほう。重力に逆らう水の流れか。天界の連中にしては、少しは骨のある結界を用意したようだな」

 ルシファー様が、逆巻く水飛沫を指先ではじきながら不敵に笑う。

「……おじちゃん。あそこに、誰か座ってる」

 パンドラが指差す先。激しく逆流する滝の頂点に、ただ一人、巨大な大剣を膝に置いて座る男がいた。

 天界十二使徒・第三の騎士、武神マルドゥーク。

 彼は鎧を纏わず、鍛え上げられた上半身を晒し、ただ静かに眼下の侵入者たちを見下ろしていた。

「……来たか。厄災の器と、その守護者たちよ」

 武神が立ち上がると、その圧力だけで逆流していた水が真っ二つに割れた。

「ルシファー、そして東方の古き神(上皇)。貴殿らと戦えばこの丘は消滅する。……我の望みは、破壊ではない。……其処な、影を食らう幼子よ。貴殿の『覚悟』を検分させてもらおう」

 武神が大剣を地面に突き立てると、パンドラとルルを囲むように不可視の壁が出現した。

「ルルちゃんを離して!」

「案ずるな、少女よ。我は貴殿には触れぬ。……だが、影の子よ。貴殿が『姉』を守る楯として相応しくないならば、この試練、一歩も先へは通さぬ」

『……ルルに、喧嘩……売ってる? ……お空の人、パパじゃないから……食べていい?』

 ルルが、いつもより一段低い声で呟く。

「ルルちゃん、ダメだよ! 相手はすっごく強そう……!」

「ルシファー、手を出してはならぬ。これは、あの幼子が自らの殻を破るための通過儀礼じゃ」

 上皇様が、珍しく真剣な表情でルシファー様の肩を制する。

「……チッ。気に入らんが、あやつ(管理人)がいない今、ルルが成長せねばこの先は厳しいのも事実か」


 戦闘は、武神の神速の一撃から始まった。

 ガギィィィィィィィンッ!!!

 武神の大剣が、ルルが咄嗟に出した影の腕と激突する。

 だが、武神の剣には『概念切断』の加護が宿っていた。ルルの「影」が、まるで豆腐のように切り裂かれる。

『……痛い。……切られたの、初めて』

「影とは実体の裏返しに過ぎぬ。真の無を識らぬ影など、我が武の前では無力!」

 武神の猛攻が続く。ルルは何度も影を破壊され、パンドラを背負ったまま滝の壁際に追い詰められていく。

「ルルちゃん! もういいよ、私が……私の『箱』で何とかするから!」

『……ダメ。……パパ、言った。……お姉ちゃんは、ルルが守るって。……お姉ちゃんに、汗、かかせないって』

 その瞬間、ルルの周囲から色が消えた。

 彼女が抱え続けていた「空腹」が、パンドラを守りたいという「渇望」と混ざり合い、深淵の底に眠っていた真の姿を呼び覚ます。

覚醒:虚無を啜るボイド・イーター

『……お空の人。……教えてあげる。……影の、もっと奥。……パパが、名付けた……ルルの、本当の、名前』

 ルルの小さな体が、ドロリとした漆黒の液体へと溶け落ちる。

 そして次の瞬間、瀑布のすべてを飲み込むほど巨大な、「数千の眼を持つ虚無の顎」が顕現した。

「な……っ!? これが、深淵の幼生の『成体』だというのか……!」

 武神の渾身の一撃を、ルルはその「顎」で正面から受け止めた。

 いや、受け止めたのではない。剣が触れた瞬間に、剣を構成する魔力と質量、そして『武神の攻撃』という概念そのものを食い尽くしたのだ。

『……ごちそうさま。……次は、あんたの、右腕……食べていい?』

 ルルの無数の眼が、一斉に武神をロックオンする。

 天界の守護者である武神が、初めて「捕食される側」としての本能的な恐怖に戦慄した。

「――そこまでだ!!」

 武神は剣を引き、深々と頭を下げた。

「……見事。影ではなく、真の『無』。……貴殿こそが、厄災の器を支える世界最強の楯だ。……通るがよい。我の武は、既に貴殿の胃袋の中にある」


 ルルは元の幼女の姿に戻ると、フラフラとパンドラの元へ歩み寄り、その膝に顔を埋めた。

『……お姉ちゃん。……がんばった。……褒めて』

「ルルちゃん! すごい、すごかったよ! 怖かったけど、カッコよかった!」

 パンドラがルルを強く抱きしめると、ルルは満足そうに「ふふん」と鼻を鳴らした。

【ログ:天界第三の丘を突破。武神マルドゥークが戦意喪失(および武器を完食される)。】

【獲得ポイント:+80,000,000P(誇り高き武神が味わった『自分の存在がただの糧にされるという生物的絶望』より)】

【ルルのステータス:スキル『深淵の真姿ボイド・フォーム』を習得。】

【管理者コメント(自動返信):ルル……よく頑張ったね。パパ、モニター越しに見ていてちょっと怖かったけど、パンドラを守ってくれてありがとう。……お礼に、帰ったら『最高級魔石のフルコース』を作ってあげるからね】

「パパ、見ててくれたんだね! よーし、この調子でどんどん進むよ!」

 パパの言葉を支えに、姉妹の絆は天界の理さえも飲み込みながら、さらなる高みへと駆け上がる。

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