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かくして秋雨は降る  作者: 霜月風炉
第一章
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第19話

 生きる天災――神木守玲香。

 彼女がその実力を披露した際は、その多くが周囲へ甚大過ぎる迷惑を被らせていた。

 一年くらい前には、とある事件において山の一部を大きく削り取り、世間では『謎の自然災害』として話題にもなった。

 その他にも世界中で語り尽くせないほどの被害を引き起こしていた。

 故に、生きる天災。

 五行神家の当主らも認める人類最強にして、頭を悩ませる迷惑人。


 空気が震えていた。


 アンネリーゼの顔つきが明らかに変わる。

 物事を楽しむような表情から警戒の色を強めた。


「……君、何者かなぁ?」

「あら、愚問ね。そんなことアンタが一番わかるんじゃないかしら? だって、言っていたでしょう?」

「――――やっぱり同類!」


玲香が地を蹴り、一気に宙に浮くアンネリーゼの頭上に現れる。


「どういう身体能力をしてるのかなぁ⁉」

「落ちなさい」


 玲香は大きく足を振り上げると、そのままアンネリーゼの頭上へ振り落とす。

 一撃を受けたアンネリーゼはそのまま地へと墜落する。

 が、玲香は攻撃の手を緩めない。

 右手に力を溜めると、墜落したアンネリーゼの腹部へ向かって突っ込む。


「模倣・メテオインパクト!」


 孝也の使用した技を魔力ではない別の力を用いて模倣した。

 しかし、その破壊力は孝也の攻撃を明らかに凌駕している。

 アンネリーゼの腹部に突き刺さると同時に、半径五メートル前後のクレーターが出来上がる。

 とん、とそのまま飛び退き、手を払いながら玲香は「さて……」と一言吐く。


「ま、この程度でくたばるほど弱いわけないわよね?」

「当然だよ。まったく酷いことするよねぇ? おかげで身体が上下で千切れちゃったんだけどさぁ?」


 クレーターの中央には上半身と下半身が別れたアンネリーゼの姿があった。

 だが、それも少しの間だけ。

 上半身と下半身それぞれから無数の赤い糸が伸び、互いに引き寄せあい、ぴっちりと接合する。


「だけど、この通り再生できちゃうのは、私の種族の特性に感謝だねぇ」


 何事もなかったかのように立ち上がり、お道化るようにアンネリーゼは言う。


「……随分とふざけた種族じゃないの」

「一応、これでもユゴスの人類なんだよぉ?」


 常識外の存在に、戦闘を眺めていた秋雨を除く三人はただただ唖然としていた。


「異世界人に、宇宙人? この数ヶ月で世界の常識が塗り替わり過ぎだと思うのよ」

「常識? そんなものに価値なんてないんじゃないのぉ?」

「アンタみたいな人格破綻者の相手をするのは面倒なのよね」


 ゲンナリした表情を浮かべながら玲香は吐き捨てる。


「……行っちゃて!」


 制止していた黒い雲が玲香へと飛ぶ。

 受け止めるか否か――僅かに玲香は考えたが、直ぐに回避を選択する。

 黒い雲が通り過ぎた宙に揺らぎが生じている。


「なんて奴を飼っているのかしらね」

「私の故郷の神なんだよぉ? もう少し敬ってくれても良いじゃないかなぁ?」


 再び黒い雲が玲香へと向かう。


「じゃ、私も奥の手ってヤツを使わせてもらいましょうか」


 神格が相手ならば同格をぶつけてしまえば良い。

 なぜ、玲香が人類最強なのか。

 ただの術だけの性能ならば、神火守党首の方が上である。

 答えは至極単純だ。

 玲香には術を軽く上回る権能を有しているからだ。


「天照」


 灼熱と眩い輝きが場を支配した。

 それは八百万の神々を統べる最高神の顕現。

 長時間の権限は周囲を蒸発させ、その悉くを無へと帰す。

 故に、その権限時間は僅か0.01秒。

 しかし、黒い雲を退けるには十分過ぎる時間であった。


「――何てヤツ」


 灼けた空気が漂う中で、権能を凌駕されたアンネリーゼの表情から余裕が完全に消えた。

 理由は明確だ。

 玲香という存在自体が計算外だった。


「そういうことかぁ……」


 キッと玲香を睨みながら、アンネリーゼは問う。


「やっぱり君は私と同類なんだねぇ?」

「ま、そういうことね」


 左の掌に右手の拳を当て、指の関節をパキパキ鳴らしながら告げる。


「改めて、はじめまして。何処かの頂点捕食者(エルダーワン)の小娘さん。私はこの地球(ほし)頂点捕食者(エルダーワン)である神木守玲香よ」

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