第4話「サブ組」
ずは、各個人の実力を改めて観察する必要がある。
レギュラー組とサポート組の22名を除いた、サブ組は23名。
宮本と高橋は初日から光るものがあった。
だから今日は、あえて意識しない。
純粋に“その他の23名”を見極めるつもりだった。
「集中していこう!」
「気合入れて!」
「そこ頑張ろうぜ!」
昨日とは比べ物にならない熱量が、サブ組から響いてくる。
声が違う。
目が違う。
“変わりたい”という意志が、確かにそこにあった。
今日は観察に徹するため、基礎練習からミニゲームまで、あえて選手に任せた。
「いい雰囲気だな」
思わず口に出る。
励まし合い、声を掛け合い、最後の一歩を踏み出す。
まさに“高校生の部活”という光景だ。
だが――
サッカーを上手くなりたいなら、この景色は決して良くない。
雰囲気だけでは勝てない。
その現実を、彼らに理解させる必要がある。
「じゃあ、集合しよう」
俺の声で、全員が駆け足で集まってくる。
その表情には期待と不安が入り混じっていた。
■ 鳥海の宣告
「今日一日、改めて練習を見た感想を話す」
生徒たちの目が一斉に真剣になる。
「まず、雰囲気がすごく良かった。
お互いを励まし合い、最後の一歩を出せるチームだ。
これは前監督の指導の賜物だな」
誇らしげに頷く選手たち。
だが、その誇りが次の言葉で一気に凍りつく。
「ただ――ゆえに問題もある」
空気が張り詰めた。
風の音すら聞こえなくなる。
「前監督は、おそらく自分の経験をそのまま伝えていた。
練習や声掛けから、それがよく伝わってきた」
俺は一拍置き、核心を突く。
「改めて言うが、今のままではレギュラー組に勝てない」
その瞬間、空気が震えた。
宮本が手を挙げる。
「すいません。なぜ勝てないのでしょうか」
もっともな質問だ。
「答えは簡単だ。
能力だけで戦うサッカーだからだ」
選手たちの表情が一斉に曇る。
理解できない、そんな顔だ。
「前監督はJリーガーになるような選手だった。
能力はずば抜けていたはずだ。
そんな選手が大事にしていたものは何だと思う。宮本」
「わかりません」
即答だった。
「モチベーション、つまり“気合”だ。
自分の能力を100%発揮するために、気持ちを高めることを重視していたはずだ。
そんな選手が監督になり、それをそのまま指導したらどうなる?」
「能力の高さでの戦いを強いられる」
高橋が静かに答えた。
「その通りだ。
だから森山・高橋・佐々木がいたからこそベスト16まで行けた。
逆に言えば――それ以上はいけなかった」
俺が続けようとした瞬間、
「レギュラーには勝てない」
宮本が言葉を継いだ。
「正解だ」
俺は満足げに頷く。
■ “考えるサッカー”の宣言
「そこで俺の登場だ」
俺は胸の奥にある熱を押し殺さず、そのまま言葉にした。
「能力がない俺がみんなを勝たせようと考えたとき、サッカーを深く知る必要があった。
サッカーは本当に能力だけで戦うスポーツなのか。
その構図を変えたいと思うようになった」
深呼吸をして、結論を告げる。
「俺のサッカーは“考えるサッカー”だ。
戦術を使い、自分と相手を分析し、選手の良さを100%引き出す。
そのために――気合や根性は、今は一切いらない」
ざわつきが広がる。
“気合がいらない?”
そんな動揺が空気を揺らす。
「俺が求めるのは“頭を使うこと”だ」
さらに続ける。
「まず、自分の長所と短所を把握してほしい。
そして最も大事なのは、それを言語化することだ」
選手たちの表情が固まる。
“言語化”という言葉が、彼らの価値観を揺さぶった。
「俺がみんなに与える最初の課題は――」
一拍置き、全員を見渡す。
「自分の長所と短所を、俺に言語化して説明することだ」
その瞬間、サブ組全体が静まり返った。
とまどい、困惑、そして――
ほんの少しの期待。
ここから、彼らの“革命”が始まる。
少しでも面白いと思っていただけたら、ブックマーク・評価宜しくお願いします!!




