第21話「VS関東大瑞穂高校③」
前半は一方的に関東大瑞穂高校がボールを保持する展開が続くが得点を取ることはできず
南東京高校の開始30秒でのゴールで1対0で前半終了となった。
「ここで前半終了のホイッスルだ~!
前半は南東京高校が1点リードで前半を終了しました。」
「栗林監督が言うとおりに関東大瑞穂高校は攻めあぐねた展開に感じました。
そろそろ原因を教えていただけますか?」
木村がしびれを切らして質問する。
「答えは・・・」
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「個人での打開力がない。監督の言うとおりですね」
ベンチに用意されているボトルを手に宮本が話しかけてきた。
「1軍と2軍ではメンバーが違うから100%はまるか心配だったが、
1軍にそもそも人材がいないんだから、やはり問題はなかったな。」
プラン通り。
「抜かれる心配がないので、スライドや受け渡しもそこまでないし
体力をそこまで使わずに済みました。」
宮本を含め選手は手ごたえを感じた顔をしている。
「ここまではプラン通りだ。このまま守りきろう。
あとはカウンターだけ狙ってやっていこう」
「はい!!」
選手たちは後半に向けて各々で打ち合わせをし始めた。
「ただ、気になることが一つあるとすれば・・・」
このまま上手くいくとは思えない。
最悪のシナリオを想定してある選手を呼んだ。
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どうするか。
このままでは点を取れるとは思えない。
かといって、今から練習でやっていないことをやっても・・・
「悩んでるな~」
後ろから聞きなれている声が聞こえる。
「栗林監督」
力なく返事する。
「すいません。
ふがいないサッカーで。」
頭を下げる志波。
「いやいや、いい経験をしてるだろ。
相手を格下とあなどり、しっかり対策をされた上で先制点を取られる。
本当に鳥海の思い通りなってしまってるな。」
言い返す言葉もない。
「だからこそ、思い切って試せるな。」
笑顔でそう言ってくる栗林監督。
「わかりました。」
ここまできたんだ。覚悟を決めるしかない。
「凌馬を呼んでくれ」
マネージャーに声をかける。
「なんでしょうか?」
呼ばれた選手がやってきた。
「凌馬。後半から出るぞ」
簡潔に用件を伝える。
「出ていいんですか?」
驚いた表情でこちらを見ている。
「負けるわけにはいかないからな。
頼むぞ。」
ラストピースを投入する。
「わかりました。アップします。」
そう言うとグラウンドでボールを蹴り始めた。
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「すいません、戻りました。」
栗林監督が席に戻ってきた。
「いえいえ、どんなお話をされてきたんですか?」
「一言、覚悟を決めてチャレンジしろと言ってきましたね。
後半は期待してもらっていいですよ。」
「わかりました。後半にむけて選手が出てきました。」
両選手がグラウンドに出てきた。
「関東大瑞穂高校に選手交代があるようです。
交代で入るのは、志波凌馬選手です。」
「え~と、こちらにあります選手情報ですと、
今回監督している志波コーチの弟さんなんですね。」
栗林監督に話をふる。
「そうですね。それと今年入学した1年生です。
下級生ですが、いいものを持ってますよ。」
「ポジションはどこに入るんですか?」
「それは、この交代票を確認して
皆さんにアナウンスしてもらえればと思います。」
「わかりました。そちらはお任せください。
それでは後半開始です!!」
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「鳥海監督」
控え選手が声をかけてくる。
「なんだ?」
「相手選手が一人交代するようです。」
「そうか。
もしその選手がウイングに入るようであれば、気を付けなければいけないな。」
最悪なシナリオがちらつく。
「なんでですか?」
また、控え選手が全員こちらを見てくる。
「それは、この状況を変えられる選手ということだ。
つまり、一人で打開できる選手ということになる。」
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会場内に選手交代のアナウンスが流れる。
「関東大瑞穂高校、選手の交代をお知らせします。
後半から出場するのは、背番号10番 志波凌馬選手
ポジションは右ウイングです。」
木村のアナウンスがこれからの激闘の始まりを告げた。
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