第21話「後半開始 ― 王者の切り札、投入」
前半終了。
スコアは 南東京 1-0 関東大瑞穂。
瑞穂が70%以上ボールを持ちながら、
一度も南東京のゴールを脅かせなかった。
■ 実況席のざわめき
「ここで前半終了のホイッスルだ~!
南東京高校が開始30秒のゴールを守り切り、1点リードで折り返します!」
木村が興奮気味に続ける。
「栗林監督、関東大瑞穂高校は攻めあぐねた印象でした。
そろそろ原因を教えていただけますか?」
栗林は、少しだけ間を置いて言った。
「答えは……」
そこで映像は切り替わる。
■ 南東京ベンチ ― 鳥海の読み
宮本がボトルを手に話しかけてくる。
「個人での打開力がない。監督の言うとおりですね」
鳥海は頷く。
「1軍と2軍ではメンバーが違うから心配だったが……
1軍にそもそも“打開できる選手”がいない。
だからプラン通りだ」
宮本も納得している。
「抜かれる心配がないので、スライドも受け渡しも楽でした。
体力もそこまで使ってません」
選手たちの顔には手応えがあった。
「このまま守り切る。
あとはカウンターだけ狙え」
「はい!!」
選手たちは後半に向けて動き出す。
だが――鳥海の表情は少し曇っていた。
(気になることが一つある……)
最悪のシナリオを想定し、
鳥海はある選手を呼んだ。
■ 瑞穂ベンチ ― 志波の焦りと決断
志波は頭を抱えていた。
(どうする……このままじゃ点は取れない)
そこへ背後から声。
「悩んでるな~」
振り返ると、栗林が立っていた。
「すいません……ふがいないサッカーで」
志波は頭を下げる。
栗林は笑って言った。
「いい経験してるだろ。
格下だと思って油断し、対策され、先制される。
鳥海の思い通りだな」
志波は言い返せない。
「だからこそ、思い切って試せる」
栗林の目が鋭く光る。
「……わかりました」
志波は覚悟を決めた。
「凌馬を呼んでくれ」
マネージャーが呼びに行く。
「なんでしょうか?」
現れたのは、
背番号10――志波凌馬。
「凌馬。後半から出るぞ」
「出ていいんですか?」
驚きと喜びが混ざった声。
「負けるわけにはいかない。頼むぞ」
ラストピースが動き出した。
「わかりました。アップします!」
凌馬は走り出した。
■ 実況席 ― 後半開始前
栗林が席に戻る。
「どんな話をされてきたんですか?」
「覚悟を決めてチャレンジしろ、とだけ言いました。
後半は期待していいですよ」
木村が声を張る。
「両チームの選手がピッチに戻ってきました!
関東大瑞穂高校、選手交代があるようです!」
アナウンスが響く。
「後半から出場するのは――
背番号10番、志波凌馬選手。
ポジションは右ウイングです!」
木村が続ける。
「志波コーチの弟さんで、今年入学した1年生……
栗林監督、この選手は?」
栗林は微笑む。
「下級生ですが、いいものを持ってますよ」
■ 南東京ベンチ ― 鳥海の警戒
「鳥海監督!」
控え選手が駆け寄る。
「なんだ?」
「相手、選手交代です!」
鳥海は静かに言った。
「もしその選手がウイングなら……気をつけろ」
控え選手たちが首をかしげる。
「なんでですか?」
鳥海は短く答えた。
「この状況を変えられる選手――
つまり“一人で打開できる選手”ということだ」
その瞬間、アナウンスが響く。
「背番号10番 志波凌馬選手、右ウイング」
鳥海の目が細くなる。
(来たか……最悪のシナリオ)
後半開始の笛が鳴る。
南東京 1-0 関東大瑞穂
後半、運命の45分が始まった。
ウンスがこれからの激闘の始まりを告げた。
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