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Doubt common sense ~名選手が必ずしも名監督とは限らない~  作者: ぷやっさん


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20/72

第20話「4-4-2の鉄壁 ― 王者を止める“欠けたピース”」

「よし」

鳥海は右手で小さくガッツポーズを作った。

狙い通り。

いや、狙い以上だった。

坂崎のプレーは完璧だった。

外に張る“普通のSB”ではなく、

中に絞ってボランチの位置で受ける“偽SB”。

その一歩の違いが、

瑞穂のゲーゲンプレスを完全に無効化した。

「坂崎〜!」

逆サイドの坂崎に向けて、

鳥海はグッドサインを送る。

坂崎も胸を張ってグッドサインを返した。

(やっぱり見抜いてくれるんだな、鳥海監督は)

自分の判断を評価されたことが、

坂崎の胸に熱く残った。

(普通は加藤や佐藤を褒めるところだろ……

でも最初に声をかけてくれたのは俺だ)

坂崎は静かに拳を握った。

(次も応える。必ず)


■ 実況席の衝撃

「ゴ~~~~ル!!」

木村の声が裏返る。

「先制したのは南東京高校だ~~~!!」

解説席の栗林は、苦笑しながらも目が鋭くなる。

「いや~……やられたくないことを、いきなりやられましたね」

「栗林監督、いったい何が?」

栗林は深く息を吸い、淡々と語り始めた。

「キックオフ直後はプレスがかかりづらい。

でも宮本くんが少しもたついたことで、

“行ける”と判断したFWとMFが前に出た」

「その瞬間、CBに戻したことで瑞穂のDFはロングボールを警戒して下がる。

結果、バイタルにスペースが生まれた」

木村が息を呑む。

「ただ問題はそこじゃない。

右SBの坂崎くんが“外ではなく中”で受けたことだ」

栗林の声が低くなる。

「外に張ると思ってスライドした瑞穂のプレスが、

あの一歩で完全にズレた。

あれは……準備してきた動きですね」

木村が震える声で言う。

「南東京高校……準備してきたんですね?」

「まぁ、そう言わざるを得ないでしょう。

それに……こちらの油断もあった」

栗林はピッチを見つめながら、

志波の苦悶の表情を横目で見た。


■ 志波の焦り

「マジか……」

志波は頭を抱えた。

(あそこにSBが入ってくるなんて……

まるでマンチェスターシティのカンセロじゃないか)

鳥海の仕込みに、

志波は戦慄していた。

(まだ時間はある……まだ……)

だが、状況は最悪だった。

瑞穂の最大の弱点――

先制されると崩せない。

引いた相手を崩す攻撃力が、

まだ育ちきっていない。

志波は数名の選手を呼び、

短く指示を出す。

「元々試す予定だった形だ。

信じてやるしかない」

瑞穂のキックオフで試合が再開。

丁寧なパス回しが始まった。


■ 栗林の分析

「栗林監督、ここからどう追いつくのでしょうか?」

木村の問いに、栗林は淡々と答える。

「ショートカウンターは使えない。

だからボールを保持して、

相手のスキを窺うしかない」

「ポゼッションサッカー、ということですか?」

「そうですね。

ただ……点を取るための“ピース”が、

うちにはいない」

栗林は静かに続けた。

「そして南東京高校は……

この展開を想定していたようですね。

ほら、早速対策してきました」


■ 鳥海の“鉄壁”

「監督!」

控え選手が不安げに声をかける。

「なんだ」

「相手、全然前に運べてません!」

鳥海は短く答えた。

「わかっている」

瑞穂のポゼッション率は70%を超えていた。

だが――前に進めない。

その理由はただ一つ。

「4-4-2」

鳥海が呟く。

控え選手が首をかしげる。

「監督、なんで4-4-2だと前に運べないんですか?」

鳥海は簡潔に説明した。

「ディフェンスライン4枚。

その前にボランチと両サイドハーフで4枚。

守備ラインが2本できているだろ」

控え選手たちは一斉に頷く。

「このブロックは強固だ。

しかも先制しているから、

無理に攻める必要がない」

鳥海はピッチを見つめながら、

静かに言った。

「それに向こうには……“あれ”がいない」

控え選手が聞き返す。

「“あれ”って……?」

鳥海は目を細めた。

「ブロックを崩すための――

絶対的な司令塔 だ」

そして、心の中で呟く。

(なぁ、栗林)


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