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7番目のシャルル、聖女と亡霊の声  作者: しんの(C.Clarté)
第十三章〈大元帥の復帰〉編

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勝利王の書斎23:死んだ人間は戦争をしない

 第十二章から第十三章へ——。

 《《勝利王の書斎》》は、歴史小説の幕間にひらかれる。


 こんにちは、あるいはこんばんは(Bonjour ou bonsoir.)。

 私は、生と死の狭間にただようシャルル七世の「声」である。実体はない。

 生前、ジャンヌ・ダルクを通じて「声」の出現を見ていたせいか、自分がこのような状況になっても驚きはない。たまには、こういうこともあるのだろう。


 ただし、ジャンヌの「声」と違って、私は神でも天使でもない。

 亡霊、すなわちオバケの類いだと思うが、聖水やお祓いは効かなかった。

 作者は私と共存する道を選び、記録を兼ねて小説を書き始めた。この物語は、私の主観がメインとなるため、《《歴史小説のふりをした私小説》》と心得ていただきたい。


 便宜上、私の居場所を「勝利王の書斎」と呼んでいる。

 作者との約束で、章と章の狭間に開放することになっている。



 恒例のフランスの慣用句シリーズ、現在進行中の物語に合うのはこれだろうか。


"Homme mort ne fait guerre."


「死んだ人間は戦争をしない」


 読者諸氏にわかりやすい例えをあげるなら、「死人に口なし」だろう。

 死んでしまえば、口外することも反論することもできない。当事者が亡くなると真相がわからなくなり、あわよくば死者に罪を着せることもできる……。


 犠牲者の無念と、悪人の心理を説き、警鐘を鳴らしている。


 この慣用句は、他にも複数の意味が込められている。

 ひとつは、「戦いの無意味さ」。

 私はもともと流血や戦争が嫌いだから言われるまでもない。

 なぜ、死の危険を冒してまで戦うのか? これまでに何度も自問自答した。


 もうひとつは、「生き延びなさい」。

 まるで正反対だが、逆説的に考えるとこうだろう。

 死んでしまったら戦えない。何も変えられない。

 だから、命がある限りは生きて戦え——。自分の生と正義を全うするために。


 どの意味であろうと、「火刑後のシャルル七世」にこれほどふさわしい慣用句はないだろう。


 ジャンヌ・ラ・ピュセルは死んだ。

 その死に意味を持たせることができるのは、生きている人間だけだ。

 ましてや、異端審問の有罪判決という汚名をすすぐことができるか否かは、私の後半生にかかっている。


 ジャンヌの死によって、私は何がなんでも「聖女に導かれた正統なフランス王」にならなければいけなくなった。向いてなくても、やりたくなくてもだ。


 もし、敗北して王位を失うか、残虐非道の暗君または無能な狂王として君臨すれば、ジャンヌの声は間違っていたことになってしまう。シャルル七世が良き王として生涯を全うしたとき、ジャンヌは正しかったと万人から認められるだろう。


 ……しかし、死後に亡霊となった今にして思えば、私はこの時、ジャンヌに報いるために、「勝利王」の名と引き換えに「自分自身」を殺してしまったのかもしれない。



 さて、時間が来たようだ。

 これより青年期編・第十三章〈大元帥の復帰〉編を始める。


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