夜、小さくなる
鏡を見た夜は驚いた。
ぷっくりした頬、やわらかそうな髪の毛、起きたばかりで潤んでいる瞳、窓から入ってくる日差しが肌に反射してきめ細かいのが分かる。自分で言うのもなんだけど男というより女っぽい…。
服はダボダボで履いていた靴下は片方脱げ素足になっている。待って…僕ズボン履いてない…。見た感じ体は4歳くらいまで縮んでいた。
頬はぷにぷに…完璧な幼児だ。
何故こんなことに……。
原因は多分…アレ…だよね。
夜は寝る前に作った筋肉痛を治す薬を見た。
うーんどうしたものか…。
そう悩んでいると「…様…。」と、リーシアの声がドアの方から微かに聞こえた。
そういえば驚きすぎてリーシアが来たことをすっかり忘れていた。
ドアの方の見るとリーシアが尻もちをついていた。
「…ほ、本当に、主様なのですか…?何故…そのようなお姿に……。」
そう言いながらリーシアは心配で堪らないというような顔をした。
「うーん、たぶんコレがげいいんだとおもう…まだかんていしてないからしてみるよ。」リーシアを安心させる為に夜は鑑定を使った。だが。
「あれ…もういっかい……あれ…?」
何回やっても鑑定は出来なかった。
異変を感じて自分を鑑定してみる。
だが、やはりステータスは表示されない。もしかして……
「主様……スキルが使えないのですか…??」
リーシアも異変を感じ取ったらしく夜に尋ねた。しばらく沈黙が続いた後「……うん…。」と夜は頭を縦に振り肯定した。
「で、では魔法はどうですか…!?」
「うん…やってみる…。」そう言って夜は水魔法で小さな水球を作ろうとした。ほんの小さな水球のはずだった。だが、現れたのは大量の水だった。いきなり大量の水が出たことに驚き魔力の調整を狂わせたのが悪かった。
水はあっという間に夜の部屋いっぱいに溜まり背が縮み魔法が使えない夜は水に飲み込まれてしまった。水流が夜の体を包み抜け出そうにも抜け出せず、その間に夜の口から空気が出ていく。
「主様ッッ!!!!」
リーシアが必死に声を荒らげていた。
そして水流に耐えきれず窓が割れ水とともに夜とリーシアは外へ流された。大量の水は勢い良く窓から流れ出し地面を打ち付けていった。
体中の酸素を失い、意識が朦朧としている中「主様ッッ!!!!」という声を聞き、気が付けば夜は水の中から脱出していた。肺に入った水を吐き出し、咳き込み、それが落ち着くと夜は頭の上に影があるのに気がつき、上を向くとリーシアが安堵した表情で夜を見ていた。
「本当に…ご無事で良かったです…ッッ。」今にも泣き出しそうなリーシアの顔を見て、夜は「だいじょうぶだよ…、たすけてくれてありがとうりーしあ…。」と微笑みながら言った。夜はリーシアを落ち着かせるために言ったのだが、リーシアはポロポロと泣き夜を強く抱き締めた。
「くる…しい……。」
夜の声を聞き取ったリーシアが即座に力を緩めた。
「も、申し訳ございませんッッ。」
たじたじなリーシアを見て夜も安堵したのか気が付いていなかったところに気がついた。
リーシアの髪濡れてるな…ん?という事は…。
そう思いリーシアの腕を見てみると濡れていて白いブラウスが透け肌色が薄く見えていた。
そういえば僕達水の中にいたんだった…!
夜は顔を赤くしすぐさまこれ以上見たいように手で顔を覆った。そして「あの…。ちょっとりーしあ…ふくをかわかしていただけると…たすかります…。」
夜が何を言いたいのか気づいたリーシアも顔を赤くし「ッッ!はっ。はい!今すぐ乾かしますねッッ!」そう言ってリーシアは、無詠唱で夜と自分を乾かした。泥もいつの間にか落ちていた。
服を乾かしたあと夜達は今後の方針を決める為リビングに集まった。
リビングに集まるとリオ達はとても驚いていた。ソファーに座ろうとすると背丈が足りずガーディルに助けてもらう形になった。情けない…。そう思っているとリーシアは僕の部屋からとってきたあの薬を机の上に置いた。
「先ほど鑑定しましたがこれは筋肉痛を和らげる薬ではなく若返りの薬でした。」
「わかがえり…?……………もしかしてわじゅそうがはいってたってこと??」
「はい、恐らく…。」
「お姉ちゃんワジュ草って何ー?」
知らない名前で気になったらしくリオが尋ねた。
「ワジュ草とは若返りの効力を持った植物です。このワジュ草を体に取り込んでしまうと体だけ若返ってしまいます。時々小さくなった影響で記憶が飛んだり、精神年齢が幼くなる時もあります。これは数も少なく手に入る事は滅多にないのですが……。主様は運が良いですからね…。」
「ヴッ…なんかごめん……。ちなみにこうかはどのくらいつづくの??」
「………鑑定した結果恐らく………持続的にかと…。」
「持続的に?」
「はい、キント草と一緒に作ったことによって効果が倍増したようです…。いつ効果が切れるのか見当もつきません…。」
キント草と一緒…たしかにキント草は傷ついた筋肉を修復してくれるものだ…それに若寿草の若返りが合わさったらたしかに倍増しそうだな両方体に関することだし…。
編集で元に戻そうにもスキルが使えない、とにかく今はどうにもならないし、現状維持で過ごすしかないな。
「もどるほうほうをさがすけど、とりあえずいまはこのままですごそう。」
夜の提案にみんなが頷き、リオが重要な事を聞いてきた。
「今までお兄ちゃんがやって来た掃除とか洗濯とかここの家のお掃除とかご飯とか王様との約束とかギルドの仕事とかってどうするの??」
その言葉を聞いた途端夜達は固まった。
普段夜がしている。掃除、洗濯、ご飯の用意が出来なくなる。
リオは少し料理の手伝いができるがリーシア達はしたことが無い。一気に場が重くなりそして、話し合いの結果、リーシアにルーメン陛下へ会いに行く話を先延ばしするよう伝えてもらい、ガーディルにはギルドへしばらく依頼を受けることが出来ない話を伝えてもらった。そして、家事を手伝ってもらう為、僕はリーシアと先延ばしにしていた奴隷達を買いに行く事になってしまった。夜がスキルや魔法が使えず、魔力で身体に負担がかからないようにテレポートを使わず隣国に行かなければならないので、その間リオ達の事をルーメン陛下に預けた。1ヶ月ほどルーメン陛下の元で暮らすことになるだろう。
隣国のレトラ国へ行く商人の荷台に乗せてもらいながら進んで行き7日が経った。
そして今、夜とリーシアはレトラ国に来ている。夜達は検問をした後外套のフードを深く被り街中へ入った。




