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わがままな婚約者はお嫌いらしいので婚約解消を提案してあげたのに、反応が思っていたのと違うんですが  作者: 水谷繭
12.妨害と隠し部屋

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12-7

「おかしな空間ですわよね。学園にこんな部屋があったなんて知りませんでした」


「うん、なんなんだろう、この部屋……。本棚以外に扉も何もない部屋なんて不気味だ」


 私たちはしばらく異様なその空間を眺めていたが、部屋は静まり返っているばかりで、何も起こらない。


 状況はわからないままだったけれど、ひとまず私は立ち上がった。


 早くどうにかしないと。このままここにいてはテストが始まってしまう。


「アベル様、とりあえず部屋の中を確認しましょう。外に出る方法が見つかるかもしれません」


「そうだね、探してみようか」


 アベル様は私の言葉にうなずいた。



 それから私たちは部屋の中を探り始めた。といっても、あるのは本棚だけなので、探れるものもそれしかない。


 私は本棚の前で頭を悩ませる。


「この棚を動かしたら後ろに扉が隠れていたりしないかしら……? 扉のない部屋なんて明らかに変ですわよね」


「でもこの本棚、壁とがっちり固定されてるみたいだよ」


 アベル様はそう言いながら、本棚の端を引っぱる。いくら引っぱっても、本棚は少しも動かなかった。動かして後ろを確認するのは無理そうだ。


「本当ですわ。ちっとも動きません……! もう、なんなんですの!」


「仕方ない。リリアーヌ、本棚の中に外に出るヒントが隠れていないか調べてみよう」


「そうですわね。それ以外に調べられるところはなさそうですしね……」


 私は力なく言葉を返す。


 しかし、本棚とその中の本をひとつひとつ確認してみても、一向にヒントになるようなものは見つからなかった。


 途方に暮れて、私は部屋の真ん中にしゃがみ込む。


「もう、なんなんですの! こんな異様な部屋から外に出る方法なんてわかりませんわ!」


 私が泣き言を言っていると、アベル様は口元に手を当てて言う。


「……ここ、もしかして隠し部屋なんじゃないかな。過去の戦争の名残の」


「隠し部屋? どういうことですか?」


 私が尋ねると、アベル様は説明してくれた。


「この学園は数百年も前からあるだろ? 過去には戦争や内乱で国が荒れた時期もあった。この学園には昔から王族や貴族の子供たちが集まっていたから、狙われることも多かったらしいんだ。そういうときに逃げ込めるように、隠し部屋を用意してたって聞いたことがある」


「そんなものが……?」


 私は改めて部屋を見回した。


 扉も窓もない異様な空間。突然ここに落とされて、来た道すら見つからない。


 しかし、王族や貴族の子供たちの身を守るための隠し部屋だと考えると、その異常性にも納得してしまう。


「私たちは隠し部屋に落とされたのでしょうか……」


「その可能性が高いと思う。ただ、隠し部屋は安全な今の時代には必要ないから、完全にロックされているって聞いたんだけど……」


「もしかして、誰かが仕組んだのでしょうか? 私の本をわざとオブジェの左手に置いて見えるようにしておいて、何らかの方法でロックを外した隠し部屋に落としたとか」


「そういうことも考えられるね」


 私たちは顔を見合わせた。


 なんだか想像以上に厄介な事態になってしまったのかもしれない。



 私は改めて部屋をぐるりと見渡した。


 隠し部屋というくらいなら、脱出用経路が用意されているのではないだろうか。当時の王族や貴族の子供たちだって、出口を必要としたはずだ。


 部屋を眺めていると、ふと、部屋の床に絵があることに気づいた。


 王冠に大きな翼を持つ凛々しい鷲の絵。


 これはソヴェレーヌ王家の紋章だ。どうして床に紋章があるのだろう。それに……。


「なんでこの位置なんですの?」


 私は首を傾げた。


 紋章を床に刻むにしても、部屋の真ん中でもなく、右端当たりにぽつんと一つ紋章があるだけなのは違和感がある。


 この場所に何か意味でもあるのだろうか。


「本当だ。変な場所にあるね」


「何か意味があるのでしょうか?」


 しばらく首をひねって考え込んでいたけれど、答えは見つからなかった。


 ひとまず紋章のことは置いておいて、本棚に意識を向ける。


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