108[2-42].沢山の嘘の中に、一つの真実がある《ライズ・アンド・トゥルース》②
苦手な戦闘パート。。長いです。
分割しようかと思ったけど、一気に話を進めるために、1つにまとめました。
俯いていた顔を、ユーサはゆっくりと上げた。
頬には、まだ乾ききらない涙の跡が残っている。
「もう……ここからは、家族じゃないから……本気で行きますよ」
震えた声だった。
けれど、その震えは弱さじゃない。
怒り。
悲しみ。
踏みにじられた幸せ。
その全部が、同じ喉を通っただけだった。
ユーサは乱暴に涙を拭い、そのまま地を蹴った。
一直線に、ヘディへ殴りかかる。
「――っ!」
ヘディが身を捻る。
拳は空を裂く。
「……かすった」
エヂヒカが息を呑んだ。
ペイシンとエヂヒカでは、当てることすらできなかった。
残像みたいに消え続けたヘディの身体に、ユーサの拳が、ほんのわずかだが触れていた。
「流石っすね、ユーサさん……! あの悪魔人の速さに追いついてる!」
「……そうだね。ただ、速いだけじゃない」
エヂヒカの目が細まる。
ユーサの拳筋を追いながら、違和感を拾っていた。
ただ速さで追っているだけじゃない。
かすった、その瞬間。何かが“仕込まれている”。
「速い……いや」
ヘディが一歩引く。
眉を寄せた。
「オレが……遅くなったのか?」
違和感は脚だけじゃなかった。
瞼が妙に重い。呼吸もわずかに鈍い。視界の端が、薄く滲んでいる。
ユーサの拳が、また掠める。
「……まさか」
ヘディが、ぼそりと呟いた。
「これは……確か、ク・エル、……天使長を倒したという情報の……睡眠【魔法】か」
「す、睡眠!? 【魔法】!? ク・エル天使長を倒した!? ユーサさんが!? すげぇっす!!」
ペイシンが顔を上げる。
だがヘディは、驚きより先に分析していた。
紙一重で避け続けながら、かすかな接触を警戒する。
「……触れた者に眠気を宿すのか。……通りで、動きが鈍るはずだ」
言っている間にも、拳が迫る。
袖を裂く。頬を掠める。髪を散らす。
その“かすり”が、少しずつ、確実に増えていく。
「それなら――」
ヘディが胸元へ手を伸ばした。
取り出したのは、細いペン。
躊躇なく、それを自分の腕へ突き刺す。
「痛っ!!? ったそうっすね!!!」
「アイツ……何してんだ?」
ペイシンとエヂヒカが思わず声を漏らす。
ヘディは顔をしかめながら、ゆっくり息を吐いた。
「ふぅ……目が覚めたぜ。面倒なことさせやがって」
ペンを抜く。
血が垂れる。
だが次の瞬間には、傷口が魔力で塞がり始めていた。
眠気を、痛みで叩き起こしたのだ。
そして――
ー 「……」 ー
呟きのような“詠唱”。
胸元の血まみれのペンを押さえ、何かを確かめるみたいに指を滑らせる。
橙の月が、熱を帯びて見えた。
次の瞬間。
ヘディの周囲で、橙のオーラが跳ね上がる。
「うっそだろ!? 俺達が戦った時より、人数が多いっすよ!?」
「しかも……ただの幻影じゃない」
エヂヒカが低く言う。
「一人一人に、魔力反応が均一にある」
ヘディが八人に分かれていた。
路地を囲むように。
逃げ道を塞ぐように。
八人が同時に呼吸し、同時に笑う。
「「「さぁ、どうする、ユーサ」」」
八つの指先が揃う。
「「「これだけの数だ。どうやって防ぐ?」」」
全員が同時に、太陽光線を形にし始める。
逃げ場はない。
――絶体絶命。
だが、その瞬間だった。
ユーサの赤い秘力が、怒りを燃料にしたみたいに跳ね上がる。
稲妻のような気配が、その身から弾けた。
「……コイツ!? まだ力が上がるのか!?」
ヘディの一体が太陽光線を撃ち出す、その一瞬前。
ユーサは横へ跳んだ。
壁際へ。
拳が唸る。
ヘディが避ける。
ユーサの拳が、石壁へめり込んだ。
轟音。
石壁が砕け、瓦礫が崩れ落ちる。
次。
今度は反対側。
また避けられる。
拳が別の壁へ沈む。
亀裂。崩落。砂塵。
それが一度、二度では終わらない。
「……馬鹿力め。そんな遅いパンチ、当たるかよ」
ヘディが呆れたように笑う。
だが、ユーサは息を乱さない。
「それはそうですよ」
淡々と、返す。
「……当てるつもりはないから。そんな得意気に言うことじゃないですよ」
「……なら、何してんだよ。こんな狭い場所で、猪か? 馬鹿か?」
「敵に種を教える馬鹿はいませんよ」
挑発に、ヘディの眉がわずかに動いた。
その間に、路地の形が変わっていた。
砕けた壁。
積み上がる瓦礫。
崩れた石が道を塞ぎ、並びを変え、八人の隊列を知らぬ間に揃えていく。
ユーサはエヂヒカとペイシンを背にした。
守る位置。
背負う位置。
横には瓦礫の山。
砂塵が舞い、視界が揺れている。
その状態で、ユーサは腰の薬袋を放った。
「……っ!? 回復薬……?」
「あざっす!! 助かるっす!!」
ヘディが鼻で笑う。
「ふっ。雑魚どもを回復させて、三人なら勝てるとでも思ったのか?」
「同じことは言いたくないけど……敵に種を教える馬鹿はいませんよ」
ユーサは視線を逸らさないまま言った。
「それに――これは、僕の戦いだ」
声は低い。
「手出しは無用だよ。ヘディさん。貴方は、僕だけで倒します」
挑発。
いや、宣言だった。
「ほう……お前一人で勝てると思ってるのかよ。傲慢な野郎だ」
ヘディが乗る。
八人分の魔力が一気に膨れ上がる。
「さぁ、どうする、ユーサ。これだけの数だ。どうやって防ぐ? 蜂の巣になるぞ」
八つの太陽光線が、一斉に放たれようとした、その瞬間。
「蜂か……」
ユーサが小さく呟く。
「それなら、防ぐよりも――さっさと害虫駆除しましょうかね」
パチン。パチン。パチン。パチン!
メリケンサックが消え、別の武器が闇から滑り出す。
【秘術:黒曜石の十三種手札】
一度出せば、次に呼べるのは一日後。
下手に切れば、手札は尽きる。
だからこそ、用途で選ぶ。
「害虫駆除は、埋めるのが一番」
ユーサの手に現れたのは――黒曜石のオールだった。
海でもない。
川でもない。
こんな路地裏には、あまりにも場違いな長物。
八人のヘディが、揃って笑う。
「ははは。何を出しているんだ、ユーサ。間違ってないか? ここは海じゃないぞ?」
余裕。
光の手が、わずかに緩む。
その傲慢が、仇になる。
ユーサは何も返さない。
ただ、真顔のまま瓦礫へオールの先を差し入れた。
長さを活かす。
支点を作る。
「 《 ー 僕を生かせるのも 殺せるのも 自分次第 ー 》 」
左手から全身へ、赤色の神秘オーラが走った。
《神秘術:人間の現界を超える領域》
重心を乗せる。
テコの原理。
持ち上げるのではない。
――跳ね上げる。
壁の破片が、投石台から放たれた岩みたいに飛んだ。
橙の月光を裂き、一体のヘディへ、一直線に叩き込まれる。
ドゴォン!!!
「……は?」
笑ったままの幻影が、瓦礫に押し潰されるように消えた。
続けざまに、次。
次。
次。
神秘術で強化された筋力と、人間の領域を越える速度。
壁の破片、石、砂。
路地を埋める勢いで、瓦礫の雨が叩きつけられていく。
二つ。
三つ。
四つ。
岩のような瓦礫が、ヘディの幻影を次々と埋めていくように飛ぶ。
ユーサは止まらない。
「ふ、ふざけたことしやがって!!」
「大真面目ですよ。害虫駆除には埋めるのが一番です」
顔色ひとつ変えず、ユーサは瓦礫を積み、跳ね上げ、押し潰す。
大きい瓦礫はオールを使って弾く。
腕だけで飛ばせる破片は、そのまま掬い上げて投げる。
消すために。
路地には、雷が連続で落ちたみたいな轟音が響いた。
「夜中だぞ……近所迷惑を考えたらどうだ」
「年中迷惑な、悪魔に言われたくないですけどね」
ヘディが避けながら、叫ぶ。
「このために……壁を壊していたのか!?」
幻影達の足場は崩れ、隊列は乱れ、視界は砂塵で濁っていく。
太陽光線を撃っても、瓦礫が遮る。
撃つ前に、新しい瓦礫が飛んでくる。
「……っ、ふざけ――!」
苛立ちが声に混ざった時には、もう遅い。
幻影が薄れる。
数が減る。
残り五体。
「頃合いかな……」
ユーサはオールを両手で握り直した。
斬るためじゃない。
振り回すためでもない。
残った瓦礫へ押し当て、そのまま――薙ぎ払い、押し付ける。
押し寄せる壁のように。
「!? クソっ!」
幻影の“間”へ滑り込むように踏み込む。
瓦礫と石畳を削る鈍い音。
一人対五人。
このままでは全滅すると悟ったのか、三人が同時に離脱した。
押し返す力が消える。
逃げ遅れた幻影が、圧力に耐えきれず潰れるように消えた。
「――っ!」
ヘディが、初めて間合いを引く。
ユーサはオールを地面に立て、息を吐いた。
「どうです? 間違ってなかったでしょう? 海じゃなくても、押し流すことはできます」
気づけば、ヘディは三体まで減っていた。
だが、ユーサの瓦礫も尽きかけている。
役目を終えたオールが消えた。
「……もう、砂かけ遊びは終わりか?」
「そうですね。おかげでこっちは綺麗になりましたよ。続けます?」
ヘディが目を細め、周囲を見る。
「……もしかして、幻影を潰すだけじゃなくて、これもか? 不燃性の粉では無理だぞ」
「なら、どうぞ。撃ってみたらどうです?」
砂塵が舞っている。
視界が濁るほどに。
ここで太陽光線を撃てば――粉塵が燃える。
「粉塵爆発になったら、ユーサ。お前も仲間も一緒に死ぬかもしれないんだぞ?」
「爆発しても、手があるからするんですよ。……っていうか、その言い分だと、爆発は効くんですかね?」
ヘディの顔がわずかに歪む。
「それに、飛び道具がなければ僕に勝てないんですか? 怖いんですか? 僕が」
その挑発に、ヘディが指を鳴らした。
「……良いぜ、ユーサ。わかったよ。小細工なしでも、お前ごとき倒せることを証明してやる。召喚武器を出させる隙もないほどにな!」
三体同時に襲いかかる。
腕が六本、足が六本あるみたいな猛攻。
だが、ユーサは受け止めない。
受け流す。
エヂヒカ達の戦いで、加護の力を“受ける”ことそのものが危険だと見抜いていた。
そのまま地面へ手を伸ばす。
拾ったのは、転がっていた武器。
エヂヒカのトレイ。
ペイシンのフライパン。
いなし、流し、投げる。
トレイが弧を描く。
一体の幻影が裂けるように消えた。
フライパンが壁を掠め、もう一体が消える。
残るのは、本体一人。
「これでわかったでしょう」
ユーサが低く言う。
「ギアドの武器が、どれだけの逸品か。訂正してもらえます?」
「……確か、ユーサのおかげで、ギアド・スターアストの商品は鰻登りに有名になったんだもんな」
「……よくそんなことも知ってますね」
「ははは。ユーサ君。情報屋を舐めるなよ。だから――」
そのやり取りは、どこか昔の空気に似ていた。
ヘディの部屋で交わした、あの距離感に。
けれど今は違う。
これは義兄と義弟の会話じゃない。
命のやり取りの距離だった。
「追い詰めた気に……なるなよ!!」
ヘディの身体が光り輝く。
閃光。
先ほどとは比べものにならない。
至近距離で、威力そのものが違う輝き。
路地が、一瞬で昼に塗り潰される。
「この光は、目を閉じても透過する! 防ぐことは不可能だ!!」
空気ごとねじ曲げるほどの白。
目を閉じても逃げ場のない光。
「終わりだ、ユーサ!!!」
ヘディが踏み込む。
――その瞬間だった。
「な!?」
ヘディの足が止まる。
膝。腰。腕。
何かに縛られ、身動きが封じられていた。
「なんだこれは!!??」
横から、気の抜けたような声が落ちる。
「ペイペイ!! お客さぁん、困りますねぇ。店の外で暴れすぎですよぉ~」
「そうだね。これは修繕費込みで、貴方に請求しますね」
ペイシンとエヂヒカだった。
ギアド特製の拘束秘術道具。
店で暴れる客を二人が締め上げるための――実務用の道具。
瀕死に近いほど体力を削られた相手を一時拘束する仕組みだった。
ヘディの顔が歪む。
「なんでだ!? こいつらも……オレの閃光で無傷な訳が――」
そこで、ユーサが淡々と言った。
「ディアの……薬のおかげですよ」
「な……ディアの!?」
「そう。……目薬」
ユーサは小瓶を見せる。
エヂヒカとペイシンの手にも、同じものがあった。
薬袋に入っていたのは、回復薬だけじゃない。
「ツェッペリンで、貴方と会う前に作ってもらっていたんです。いつ現れるかわからない、橙の悪魔人用の対策をね」
瞳孔を調整するための目薬。
暗闇と魔力、加護への防御の性質を含んだ――ディアの薬。
「僕には出来すぎた妻です。いつもディアには助けられてますよ」
ユーサの脳内で、ふと、あの時の家族の会話がよぎる。
ー「ママぁ〜。めがチカチカするよぉ〜。ゴシゴシ」ー
ー「あぁもう。ゴシゴシしちゃだめよ、マリア。目薬で良くなるから待ってて」ー
ー「……うん。おくすり、はいったよ。めが、なんだかきれいにみえるよ〜! すごいママ!!」ー
ー「あ。そうだ。ディア、こういう薬は作れるかな? 時間がかかる?」ー
ー「あなた。結構時間がかかるかも。薬とかの補充もしたいから、待ってて」ー
「『情報は武器にも防具にもなる』……って言ってましたよね?」
ユーサの声は静かだった。
「なのに貴方は、“ディアの兄”って立場のくせに、ディアの力を見くびってた。だから負けたんですよ」
一拍置いて、冷たく言う。
「……偽物のお兄さん」
その瞬間。
ヘディの瞳が、わずかに揺れた。
「そして自分で言ってたじゃないですか。エヂヒカに。『防いだのは術だけで。加護まではできないみたいだな』って」
視線は逸らさない。
「ペイシンだけがサングラスで閃光を“少し”防げた。……あれで確信した。貴方の光も、魔力だけじゃない。加護も混じってる」
ヘディが舌打ちをする。
自分で口を滑らせたと理解した顔だった。
「……だから、最初から閃光が来る前提で動けたのか。……壁を壊して砂塵を作ったのも、隊列を崩して並べ替えたのも――全部」
押し殺した声で、ヘディが言う。
「……目薬を、いつ……」
「僕が戦う前。ヘディさんが、二人と戦っていた時に」
その答えが、路地の温度を変えた。
ー「死ねると……思うなよ!!!!」ー
そう言いながら流した“涙”。
あれは怒りだけではない。悲しみだけでもない。
ヘディは悟る。
「ははは……なるほど」
拘束されたまま、ヘディが笑った。
「決め手は……ディアの目薬だったのか」
その笑いは、今までで初めて“負け”を認める音だった。
「騙し合いは……オレの負けだったようだな。あの“涙”まで、嘘だったのか」
ユーサは、すぐに首を振った。
「……違いますよ」
声が、少しだけ掠れる。
「本当に、嬉しかったんです。……ヘディさんとの時間が」
拘束されたままのヘディが、目を見開く。
「だから……悲しかった」
ユーサの頬を、また涙が伝っていた。
目薬では隠せないほどの、真実の涙。
それを見て、ヘディは理解した。
自分は――戦う前から、負けていたのだと。
「ふっ……」
ヘディが、小さく息を漏らす。
「ユーサ。……二人だけの戦いだから、手出し無用って言ったよな? 嘘つきめ」
「……何を言ってるんですか?」
ユーサの目は、もう逸れなかった。
「最初に“嘘”をついたのは、そっちでしょ?」
その瞬間、空気が変わる。
「ははは、そうだな……」
ヘディの声が、ひどく静かだった。
「……嘘つきには、相応しい末路だ」
まるで、その言葉を、昔から何度も自分に言い聞かせてきたみたいな声だった。
「……その言葉も、態度も、本当に……“嘘”なんですか?」
ユーサの問いに、ヘディは何も答えず、ただ目を閉じた。
首を差し出すように。
奥にある本心を、最後まで悟らせまいとするみたいに。
「……あぁ、そうだよ」
小さく、言う。
「だから、お前の手で……終わらせろ」
ユーサは一拍だけ黙った。
「……わかりました」
パチン。パチン。パチン。パチン!
その音とともに、召喚武器が現れる。
短剣。
得意武器のひとつ。
睾丸の柄を持つ、ボロック・ダガー。
別名、キドニー・ダガー。
瀕死で苦しむ者に安楽死を与えるための、親切で残酷な短剣。
「……さよなら、ヘディさん」
拘束されたヘディへ、短剣が振り下ろされる。
嘘で塗り固めた家族ごっこを、完全に終わらせる――
「……ありがとう、ユーサ。お前は……家族を、大事にしてくれ」
――はずだった。
「ユーサさん?」
エヂヒカが、かすかに声を上げる。
短剣の刃が、ヘディの首元で止まっていた。
何かが、受け止めている。
黒い。
粘ついた、禍々しい何か。
そして。
「AッHッHッHッHッHッHッHッHッHッHッHッHッHッHッHッーーーーー!!!!!!!!!!!」
狂気の叫びが、路地一帯へ木霊した。
「!? ユーサさん、離れて!!!」
「え?」
次の瞬間、ヘディに取りついた黒い魔力が暴風のように噴き上がる。
ユーサ達は吹き飛ばされた。
それだけではない。
路地裏を囲うように、黒い結界が覆い隠していく。
「!? こ、この魔力は!?」
「まさか、これは!」
ユーサには覚えがあった。
悪魔ザドキエルと戦った時。
自分がデイ神社で目覚めた時。
【黒魔法:明けない魔夜中】
あの時と同じ感覚だった。
ヘディの橙のオーラに、黒い渦がまとわりつく。
口が開く。
だが、それはもうヘディの声じゃない。
もっと奥にいる、別の何かの声だった。
「ヘディ……何を手加減している」
黒い魔力が、愉快そうにざわめく。
「真実の力を、まだ使っていないじゃないか」
ユーサの背筋が凍る。
橙の悪魔人の本体。
その奥で笑う、悪魔の声。
「今こそ、ここで使え――、ザキヤミを消し炭にできる」
黒と橙が渦を巻く。
空気が焼ける。
結界の内側だけ、世界の終わりみたいな熱が満ちていく。
「【神の奇跡:全てを焼き尽くすイカれた太陽】を、唱えろ!!」
『作者コメント』
やっと、ずっと出したかった。
この第二章での話の核となり、能力も核となる術を出すことになります。




