指名依頼
あれから数週間経った頃、ちょくちょく休みを入れながら冒険者稼業をやっていたのだが、俺たちに初めての指名依頼が入った。
内容は、この街から王都までの往復護衛依頼だ。
「指名依頼か。どうする? 受ける? ちなみに、この街から王都まで馬車でどれくらいかかるの?」
「そうですね。大体15日程です」
俺が聞くと、リュゼが答えてくれた。
「行き帰りするだけで一か月か。それに向こうに二週間くらい滞在が必要なんだろ?」
「ですが、報酬は破格ですよ。普通の倍近くの値段が提示されています」
シノがそんなことを言ってきた。
「それもちょっと謎なんだよな。俺たちをわざわざ指名して、しかも値段が倍って怪しいよな」
俺たちは相談の末、一度依頼主に会って話を聞いてみようということになった。そして今日、その依頼主と冒険者ギルドで会うことになっている。
「レインさん、ついてきてください。依頼主はもう来ています。副マスターもそちらにいます」
冒険者ギルドに入った時、声をかけてきたのはセレナさんではなく、違う従業員だった。その誘導を受けて、俺たちはいつもの部屋に案内された。
中に入ると、そこには想像もしていない人が待っていた。
「よう、レイン。一か月ちょっとぶりか?」
「ゴズさん。もしかして今回の依頼主はゴズさんだったんですか?」
「そうだ。この間会った時、お前さんにランクを聞いただろ。なんのためにわざわざそんなこと聞いたと思ってるんだ」
そういえば前回会った時にランクを聞かれたが、あれは俺たちに指名依頼を出すためにランクを確認してきていたらしい。
「そうですか。それで、王都まで何をしに行くんですか?」
「前にお前さんに言っただろ。魔道具研究発表会があるって。もうそろそろその時期なんだよ。今回はあれを持っていくから、お前にも来てほしかったんだよ」
「別に護衛依頼を受けるのはかまわないんですけど、俺たちまだ護衛依頼一回もしたことがないので、あまり自信がないんですが」
「何言ってんだ。ギルドに聞いてみりゃ、新人の中では注目のパーティーらしいじゃねえか。それにもうBランクの魔物まで倒してるんだろ? だったら十分だ。魔物がうじゃうじゃいる場所に行くわけじゃねぇんだ。ただ王都まで付いてきてほしいんだよ」
「そういうことなら、喜んで受けさせていただきます」
「では、レインさんのパーティーは指名依頼を受けるということでよろしいですね」
横で静かに待っていたセレナさんが依頼書を渡してきた。
俺はその紙を受け取り、承認をした。
「それで、護衛はいつからですか?」
「大体二週間後だな。そのくらいに出れば十分間に合う。向こうには二週間くらい滞在するから、その用意だけはしといてくれ」
「わかりました。準備しておきます」
そのあとは軽く打ち合わせをして、その日は終わりになった。屋敷に帰った後、三人と話し合うことにした。
「ごめん。勝手に受けるって決めて」
「いいんですよ。ご主人様が決めたことですから。それにそもそも受けようという話だったじゃないですか。ただ私たちに依頼した理由を調べに行っただけで」
「そうです。ご主人様が気にすることはありません」
そこから二週間、俺たちは護衛依頼の準備をした。装備を充実させたり、役に立ちそうな道具を作ったりしていた。
俺たちが新しく新調した武器や防具は、すべて自分たちで作ったものだ。
武器は魔鉄を利用し、魔力の通りがいいものを作った。これ以上いい武器を作ろうとしたら、魔剣の類を作らなければならないだろう。
防具はシノとロイが作ったロイヤルシルクスパイダーの糸で作った超丈夫な服だ。それに俺が一応、急所用に魔鉄の防具を作った程度だ。
それに、あまり凝ったものは作れなかったが、付与魔法をつけてみたので、それなりに便利なものが出来上がった。
できたものがこんな感じだ。
・調温のマント:着ていると気温を調節して、ちょうどいい温度にしてくれる。
・MP回復の腕輪(小):つけていると少しMPの自然回復量が上がる。
この二つを全員分作るのが精一杯だった。やはり魔道具を作るのは難しすぎる。
「ついに明日ですね」
「そうだな。結構準備をしたし、どうにかなるだろ。それと屋敷の管理だけど、この後グランツ商会に行って頼んで来ようと思うんだけどいいかな?」
「それでいいと思います。さすがに放置はまずいと思うので」
「確かに、こんな豪華な屋敷をだれもいない状態にしておくと、何かされてしまいそうですしね」
約一か月半の間、屋敷をあけるので、その間屋敷の管理をどうするのか悩んでいたのだが、グランツ商会に頼むことにしたのだ。
「いらっしゃいませ、レイン様。本日はどういった御用ですか?」
「一か月半~二か月ほど屋敷をあけるので、その間の管理をしてもらいたいのですが」
「わかりました。奥の部屋へどうぞ」
そうして俺たちは従業員に案内された。部屋で少し待っていると、グレンさんが来た。
「お久しぶりです、レイン様。今日は屋敷の管理を任せられるものを探しているとのことですが、雇うのか、それともこちらが管理をするのか、どちらにいたしますか?」
「そうですね。グランツ商会の方にすべてお任せしたいと思っています」
「わかりました。それでしたら、ひと月金貨一枚でどうでしょう」
「それでお願いします」
そうして俺たちは契約を済ませ、屋敷に帰った。
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