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第117話「魔王 対 勇者 -決着-」

黒。黒。黒。世界樹の麓は漆黒に塗り潰された。白は言わずもがな、他の色、余白さえも一切残ることはなかった。それはつまり勇者アリスの敗北を意味する。魔王フィリアルは勝利した。魔王フィリアルはよろめきながら地面へと降り立ち、勇者アリスはゆっくりと地面へと落下した。


魔王フィリアルの褐色肌と黒髪の一部が勇者の白色に侵食されていた。肩で息をしながら、フィリアルは漆黒の剣を納刀する。勝利したといっても、全ての魔素を使い切り満身創痍の状態になった。


勇者アリスの全身は余すところなく漆黒に塗り潰された。その身体の末端から徐々に塵のように崩壊していった。勇者は魔王に殺された。それは世界樹大陸の『循環』通りの結末だった。


「あ、アリスさん…?」

思い通りに動かない体を引き摺って、ユーリが地に落ちた勇者アリスのそばに歩み寄る。返事はない。ユーリは手を伸ばす。しかしその手が勇者アリスの体に触れる前に、勇者アリスの全ては漆黒の塵となって消え去った。

「は、はは…。」

絶望の笑いが溢れた。怒りと絶望。その二つを過剰摂取したユーリは跪いてただ呆然とする。ユーリの眼の前に残ったのは漆黒の魔素に侵食され、醜く錆びた『神剣』のみだった。



「フィリアルっ!!!」

着地したフィリアルの元へゼベルトが駆けつける。よろめき倒れそうになったフィリアルの体をゼベルトは支えた。

「はぁ…はぁ…。ゼベルト、なんでこんなことしたの?」

息を切らしながら、フィリアルはゼベルトに問うた。

「フィリアルこそ、なんで俺がここにいるってわかったんだ?」

「もう二度と、誰も死なせないために、ちょっとした印をプラグマにつけておいたの。みんなでコソコソ動いているのも知っていたし、プラグマが瀕死になったのに気づいてここまで転移魔法で吹っ飛んできたの。」

プラグマを探して辺りを見回す。魔王と勇者の激突の余波に当てられてか、後方へプラグマは吹き飛ばされていた。

「ねえ、今度はゼベルトが私の質問に答えて?」

支えられていたフィリアルはゼベルトの両肩に両手を置いて、まっすぐにゼベルトの眼を見つめた。紺色の瞳を漆黒の瞳が射抜く。


「フィリアルが死なないために、新たなる勇者を無力化した。」

「…この世界の『循環』について知ってるのね。」

「ああ、随分前にフィリアルと賢者が話してるのを聞いた。フィリアルに、俺は死んでほしくない。」

「ゼベルト。2人とも死なないって約束したでしょ? もう少しで勇者に殺されるところだったじゃない。」

少し、声に怒りを混ぜてフィリアルはゼベルトを睨んだ。

「それになんでずっと黙ってたの? 私に直接相談してくれたら、もっと他の方法があったかもしれないのに。」

「相談できるわけないだろ!! 話した時点で、契約魔法が発動してフィリアルが死ぬかもしれないのにッ!!!」

今度はゼベルトが怒る番だった。今まで溜めていた鬱憤が飛び出た。フィリアルに迫る死、望まぬ人族の鏖殺。ゼベルトの精神は最近ずっと不安定だった。

「何度も言うけど、俺はフィリアルに死んでほしくない!!! フィリアルの夢がどうだとか、本当は、正直どうでもいい…。俺は…。」

ゼベルトは息を大きく吸い込んだ。この時、ゼベルトは混乱していた。そしてつい怒りに任せて、フィリアルに対する自分の気持ちを言葉にする。


「俺はフィリアルが好きだ!!! 死んでほしくない、ずっとフィリアルの隣にいたい。俺が魔王軍に入ったのも、強くなったのも、誰かを殺すのも、全部、全部、フィリアルのためだ!!! 好きなんだ、好きなんだよ、出会った時からずっと…。」

世界樹の麓、鏖殺の起こった学舎の傍、種族最強が殺し合った戦場。恋情を吐露するには、あまりにも場違いな場所だった。それでも、ゼベルトはその恋情をフィリアルにぶつけた。


「…そ、そうなんだ!? ぜ、ゼベルトって私のことが好きだったのね!? え、えっと私そんなの気づかなかったし、えっとその、それについては、えええっと…。」

動揺。褐色肌を赤らめる。壊れた機械人形のようになってフィリアルはまごつく。ゼベルトの好意に気づいていなかったと言うのは嘘。ただその好意を直球にぶつけられ、魔族の王はただただ動揺とした。


 そんなフィリアルの様子を見て、ゼベルトはとんでもないことをとんでもないところで言ったと自覚した。そしてその自覚と共にゼベルトも顔を真っ赤にする。

「あ、ええっと。その、じょ、状況を整理しよう。えっと、勇者は倒した。新たな勇者も無力化した。とりあえず、全員で魔王城に帰ろう。その、返事、的なものはまた、後でいいからフィリアル…。」

「え、ええ。そうね、一度魔王城に帰りましょう。」

うわずった声で2人とも先のことを決める。

「俺は無力化した勇者を連れてくる。えっと後ろの方にプラグマが転がってるはずだから、起こしてやってくれ。」

「ええ、わかったわ。」

向き合っていた両者は背を向け合う。ゼベルトはユーリ、フィリアルはプラグマのところへ足を進めた。

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