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第116話「記憶」

 私はひとりぼっちだった。お父さんとお母さんの顔は覚えていない。ただ、言われたことだけ覚えていた。

「もし、フィリアルに悪さしようとする人がいたら、その人と友達になりなさい。」

「貴女は誰とだって友達になれるわ。それが魔族でも人族でも獣族でも、龍だって。」

でも私には友達ができなかった。親のいない私を村のみんなは憐れんだり、仲間はずれにしたりした。力が強いせいなのか、みんなに怖がられた。


 そんなある日、空き家だったはずの家からピアノの音が響いた。窓から中を覗くと、そこには泣きながらピアノを弾く男の子がいた。なんでからはわからない。その子とは友達になれる気がした。


 その男の子も友達がいないみたいだった。いつも他の子にいじわるされて、1人で泣いていた。そしてその子は決してやり返さなかった。すべてのいじわるを受け入れていた。その子が強いのか、弱いのか、私にはわからなかった。


 ある時、私は村の子全員にいじわるされた。追いかけられ、土や石、木の棒を投げつけられた。なんでそんなことをされたのか、理由は覚えてない。私はひとりぼっちだったから、いくら私が強くてもぼこぼこにされた。

「やめろッ!!!」

いつも泣いていたあの子だけが私の味方をしてくれた。でもその子は強くなかった。だから2人ともぼこぼこにされて、泥だらけになった。


「私はフィリアル。ねえ、あなたの名前なんて言うの?」

「ゼベルト…。」

「そっか。じゃあゼベルト、私と友達になって?」

「…うん。よろしくね、フィリアル。」

それから私はずっとゼベルトと一緒に過ごした。一緒に食べて、一緒に遊んで、一緒に眠って。何をするにも一緒だった。ゼベルトと友達になってから、全てが幸せだった。母親と兄弟もできた。友達って素晴らしいなぁって心の底から思った。


 それから何年か経って、村が襲われた。私とゼベルトの大事なものが全部、壊されてしまった。ゼベルトが血に染められ、泣き叫ぶ姿。あの哀しみと怒りを、私は忘れたことはない。


 そして私は決めた。魔王になって世界の全てと友達になろうって。そうすれば、私の最初の友達、ゼベルトはもう泣かないで済むから。


 だからね、ゼベルト。あなたが死んでしまってはなんの意味もないの。

 私はあなたを絶対に護るわ。

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