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第115話「魔王 対 勇者」

「ゼベルトッ!! 退いてッ!!! ”SCHWERT”ッ!!!」

魔王の声が、最愛の声が、フィリアルの声が、ゼベルトの鼓膜に響いた。


勇者アリスの黄金と紺碧を纏う神剣。魔王フィリアルの暗黒を纏う漆黒の剣。勇者と魔王の剣撃が衝突した。爆風が吹き荒れ、両者の剣を境に、天と地に亀裂が走る。ゼベルトもユーリも地面にしがみつき、その人族最強と魔族最強の激突の余波から身を守ることしかできない。その余波が止んだ時、勇者と魔王がその顔を合わせた。


「来たか、魔王フィリアルよ。」

白の絹衣、金髪を夜風に揺らし、碧眼に魔王を映す。『神剣』を正中に構え、初めて戦闘体制を取った。

「ええ。初めまして、勇者アリス。」

黒の王服、黒髪、黒の魔石角、褐色肌。黒の瞳に勇者を映す。フィリアルは勇者アリスと対照的に、剣を鞘に納めた。同時に、背の黒翼も魔素に戻して消した。


 人族の希望と魔族の王。2人が出会った。ユーリとゼベルトにはこの先何が起こるか考えつきもしなかった。ただ2人が見つめ合っているという現実を受け止める。


「友達にならないかしら、勇者アリス。人族と魔族が争っても憎悪が連鎖するだけだわ。私は魔王。だから貴方を殺す運命にある。でも私は貴方を殺したいわけじゃない。」

フィリアルは勇者の前でもフィリアルだった。友達になろう、フィリアルは自身の思いをただ実直に勇者アリスへ伝えた。

「ほう。友達になりたい、憎悪が連鎖するのみ、殺したくない、とな? わしも最近、お主と同じようなことをよく考えておった。」

勇者アリスはフィリアルの言葉に好反応を示した。しかし、彼女の臨戦体制は崩れない。

「じゃあ、友達になりましょう?」

「それは無理じゃ。この世界が、大陸が、『循環』が、それを許さん。」

勇者は魔王の言葉を真っ向から否定した。彼女の碧眼には憂いが漂っていた。60年という人生、先代魔王との戦争。勇者アリスは魔王フィリアルの『理想』が叶わぬことを知っていた。


「それにわしは、その者を殺さねばならん。其奴はこの世界を崩壊へと導く。」

勇者アリスは依然、『神剣』を構え、ゼベルトへの殺意を露わにする。

「ゼベルトは、私の最初の友達。貴女がゼベルトを殺すというのなら、私は全力でそれを止める。無論、貴女を殺すことになっても。」

フィリアルが漆黒の剣を抜いた。

「そうか、魔王よ。お主は友愛に取り憑かれているのだな。」

「…だったら、どうしたっていうの?」

フィリアルが大気中の魔素を支配下に置き、漆黒を纏い始めた。彼女を突き動かすモノの正体。それは『友愛』。世の全てと友になりたい。そしてそれ以上に友を守りたい。

「魔族とは、愛の魔に囚われた者のことを言うのかもしれんと、わしが思うだけだ。」

勇者アリスの脳裏に浮かんだのはアニア。彼女は『偏愛』に囚われ、その全てをゼベルトに捧げた。勇者アリスに黄金と紺碧の光を纏い始めた。


勇者と魔王が命を賭けて戦う。その時はもう、すぐそこまで来ていた。

「フィリアル…。」

ゼベルトがか細い声で、魔王の名前を呼んだ。

「大丈夫よ、ゼベルト。私は勇者だってぶっ飛ばしちゃうから。」

心配で顔を埋め尽くしたゼベルトに、フィリアルは笑顔をむけて宣言した。幼い頃の約束。両手を腰に置いて、高らかに宣言する。幼い頃から何も変わらないフィリアルの姿がそこにあった。


「アリスさん…。」

ユーリも小さな声で勇者の名前を呼んだ。

「ユーリよ、『愛』と『勇気』じゃ。忘れるでないぞ。」

覚悟に満ちた表情で勇者アリスはユーリへと言葉を送った。ユーリにはその2つの言葉の意味がわからなかった。壊されてしまった彼の世界をその2つが救ってくれるとは、セリアの死を直視した今、ユーリは信じることができなかった。


「さあ、勇者アリス。」

漆黒の魔素が魔王フィリアルを覆う。夜を越えた暗い世界。

「ああ、始めよう。そして終わらせよう。」

黄金と紺碧が勇者アリスを覆う。陽を越えた眩い世界。

「”ZORN DES TEUFEL”」

魔王フィリアルが何かを唱える。『漆黒の剣』が暗黒の闇に満ちる。宵闇より深く、黒より黒い漆黒が斬撃となって世界を破っていく。


「”GOD’S PUNISHMENT”」

勇者アリスが何かを唱える。『神剣』が純白の光を輝き放つ。黄金と紺碧が混じり白飛びした白光が斬撃となって世界を裂いていく。


 世界樹の麓が白と黒に両断された。白と黒。その2つの色のみの描写しか世界は許されない。純白と漆黒。人族と勇者。勇者と魔王。破壊し、相反し、矛盾し、決して混濁することのない2つが激突と衝突を繰り返した。

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