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第103話「真実」

魔王軍と武闘国家オーディロダムの決闘から一ヶ月後。アドナロ王国、連合国ドゥナロープ、魔導国家ザリグルク、三つの国以上に、武闘国家オーディロダムと魔族の関係性は良好で、フィリアルの理想的な『友好的外交』がなされていた。魔族領の鉱山資源とオーディロダムの海産資源がお互いに利益を出し合っていた。


「俺と食事をしたいなんて、変わった野郎だな。アンタ。」

オーディロダム王城、国王ジェラルド・クラウディスの部屋で食事をしているのは、魔王軍四天王プラグマ・キシュルネライト。今回で4度目。あの質問をプラグマはジェラルドにしに来たのだった。

「『武王』という漢が、一体どんな食事をしているか気になったもので。」

「ははっ。別に俺は大したもん食ってねえよ。肉と魚。あと野菜とパン。まあ、食う量はめちゃくちゃ多いけどな。」

そう言って骨付き肉にかぶりつくジェラルド。

「決闘が終わってから、貴方は随分ご機嫌なように見える。」

野菜をフォークで口に運ぶプラグマ。

「まあ、俺の人生を試すことができたからな。そんでなんか答えみたいなもんも見つけた気がする。だから、俺は超ご機嫌だぜ?」

「答え、とは?」

手を手巾で拭いながらプラグマは聞く。

「愛と勇気だ。」

指についた油も気にせずに、ジェラルドはパンを口に放り込んだ。

「何に対しての愛と勇気か、聞いても?」

グラスを傾け、プラグマは葡萄酒で口を湿らした。

「勇気は自分、愛は…まあ、娘だな。」

食べる手を止めて、ジェラルドは照れながら言った。

「それは好都合。」

口を手巾で拭くプラグマ。そして指を鳴らした。


 扉の開く音。入ってきたのはゼベルト。しかし彼は一人ではない、その片手で一人の女を連れてきていた。

「テメエら、何のつもりだ…?」

ゼベルトが連れてきたのは、シャルロット・クラウディス。ジェラルドの娘だった。そして彼女の腕と脚は魔封石の錠で拘束され、目隠しと猿ぐつわ、耳栓を付けられていた。

「…。」

シャルロットは声を上げることもできず、何が起こっているのかも把握できていない。

「何、僕らの質問に答えてほしいだけだ。彼女の命を救うため、貴方は命を捨てることになるけれどね。言ったじゃないか、勇気と愛。素晴らしいと僕は思うよ。」

プラグマがゼベルトと立ち位置を変わる。そしてゼベルトはジェラルドの頭を抑え、食卓の上に寝かせた。娘を人質に取られているジェラルドはただ状況を受け入れるほかなかった。

「おい、何のつもりだ。速く要件を言え。それでシャルロットを解放しろ。俺の命はどうなってもいい。」

「潔くて助かる。」

ゼベルトは『魔喰らいの剣』をジェラルドの首に添えた。


「ジェラルド。アンタは賢者と繋がっている。魔族と人族の戦争によって大陸を調整し、賢者と共に人族の国王、そしてその身分に準ずる者は大陸に調和をもたらしている。人族が50年、魔族が10年、交互に大陸での主導権を握る。そしてその循環に従って、10年後、魔王フィリアルは新たな勇者に殺される。これが俺たちの考察だ。間違っているか?」

ゼベルトが殺意を滲ませながら、質問をした。

「その質問には、答えられない。」

ジェラルドの返答。それはアドナロ王国国王と魔導学園学長と同じ返答だった。


「いや、答えられる。俺たちが答えられるように場を整えた。」

ゼベルトの言葉は嘘ではなく、事実。

「『契約魔法』は強力だった。どんな方法を駆使しても、真実を喋らせる前に死んでしまう。でもね、死んでもいいなら、喋らせることはできるのさ。」

プラグマの言葉も事実。

「どういうことだ…。」

ジェラルドは当然、説明を求めた。

「人体を斬り離すと、契約魔法は最も大きな部位にのみ残る。僕は数多の人族を殺して発見したよ。そして、真実を喋ってもらうには、首から上があれば十分だ。」

プラグマが冷淡に解説した。その顔は真実を知れるという歓喜で歪んでいた。

「俺が嘘を言ったらどうする? というか、首を斬られたら痛みでしゃべれねえだろ。」

ジェラルドが至極真っ当なことを意見する。

「嘘は大丈夫だ。俺が聴き分けるから。」

ゼベルトが自身の耳を指で叩く。

「痛みに関してだが、僕が痛覚削除の魔術をかける。一応、君の料理に痛覚が失効する薬も混ぜておいた。さあ、速く真実を話してくれ。ジェラルド・クラウディス。」

プラグマの表情はなお高潮する。葡萄酒が彼の歓喜を増幅させていた。


「俺が何も喋らなかったら、どうする。」

「娘を殺す。シャルロット・クラウディスをこの場で殺す。」

「…そうか。じゃあ、シャルロットに俺が『愛してる、直接言えなくて悪かった』って伝えてくれ。。」

「ああ、伝える。」

愛と勇気という答えを獲得した『武王』ジェラルド・クラウディスの決断は速かった。否、そこにいたのは、シャルロットの父親、ただのジェラルドだった。

「行くぞ。」

言って、ゼベルトが剣を振りかぶったその時。


「何をしている!!!」

部屋に、リュウシンが入ってきた。刀に指をかけ、その顔を怒りで満たしていた。

「気づかれたか。まあ、じっとしといてくれよ。リュウシン。さもないとシャルロットの命はない。」

ゼベルトが簡潔に言い放つ。プラグマは魔杖をシャルロットの首筋に這わせた。

「無論、君たちは決闘後に、魔族に敵対行為を働かないという『契約魔術』を結んだから、何もできないけれどね。」

「くっ…。」

リュウシンの握りしめた拳と噛み締めた唇から血が流れる。


「リュウシン。シャルロットを頼んだぜ。」

リュウシンを眼に映して、ジェラルドはそれだけ言った。

「ジェラルド殿…!!!」

依然、リュウシンは何もすることができない。

「なぜこんなことをする!! ゼベルト殿、いやゼベルト!!! 我々は、武闘国家オーディロダムと魔王軍は友になったのではないのか!? あの決闘は一体なんだったのだ!!!」

リュウシンが声を張り上げ、ゼベルトたちに訴える。

「友よりも大事なものがあるんだ。俺たちには。」

ゼベルトが冷酷に言い放って、そのまま剣を振った。


ジェラルドの頭と胴体が一刀両断される。ジェラルドの赤髪が血に染まった。血飛沫が食卓に迸った。血の匂いがシャルロットの鼻口をついた。血の濃赤がリュウシンの瞳を染めた。

「正しい。お前らの考察は何一つ間違ってない。全て正しい。しかしこれを知って、お前らは一体どうする? 大陸に、世界に、循環に、勇者に、賢者に、抗うの…か…?」

ジェラルド・クラウディスは死んだ。真実と、愛する娘、信ずる男を世に残して。

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