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カイの講義

 カイは工房へ戻り走空車グエルの事や会議の事について考えていた。会議について考えていたのは内容の無いものだったからだ。

 対案を出さないまま相手に責任を問う会議に何か意味があるのだろうか?


(宰相のルツ殿も宮廷魔導士筆頭のディルマ殿の他、内務大臣のケルト殿も軍務大臣のグラハム殿も頭の切れる方々なのだが何故あのような会議になるのだろうか……。)


 何か作為的な物を感じるが、カイにはそれが何か今ひとつ判らなかった。


(それは兎も角、走空車グエルの改良か……。ん?色々考えこんでいたらもうこんな時間か……。)


 カイはこの後、三の姫であるマルティナ姫に錬金術と魔法の講義を行う予定があった。予定ではこの後、工房内に作られた談話室で三の姫に錬金術と魔法の講義を行う。


 コンコン


 カイが講義の用意を考えていると部屋をノックする音が聞こえた。


「どうぞ、鍵は開いていますよ。」


 工房の扉が開かれ真紅のドレスに身を包んだ女性が部屋に入って来た。その後ろにはメイドが二人控えている。

 その女性は豊かな金髪を結い上げ青い目をカイの方へまっすぐ向けている。


「ようこそ、マルティナ殿下。」


 カイは椅子から立ち上がりマルティナに深々と礼をする。


「カイ様。わたくしはお忙しいカイ様に講義をしていただいている身。カイ様が礼をするいわれはありませんわ。それにカイ様はいずれわたくしの……」


 マルティナは照れたような少し赤い顔をしてカイに答えた。ただ、最後の方の言葉は小声であったためカイにはよく聞き取れなかった。


「では談話室に移動しましょう。」


 カイはメルティナ姫と共に談話室の方へ移動した。

 談話室は工房に務める者が休憩の為に使用する部屋で天井にはガラス張りの大きな窓がありそこから部屋の中へ日の光が入りとても明るい。

 壁には大型のガラス窓がいくつもありテーブルからは部屋の外にある庭園を楽しむことが出来た。

 カイは談話室が利用されていない時間、講義の為に使用していた。

 幾つか並べられている中の真ん中にあるテーブルにマルティナ姫と並んで座っていた。

 当初は向い合わせで座っていたのだがマルティナ姫はカイの言葉がよく聞き取れないという事でこの形になっている。


「今日は魔法の講義、主に詠唱と発動でしたね。」


「はい。よろしくお願いします。」


 実際、マルティナ姫は熱心にカイの講義に耳を傾けていた。時には質問をするほどであった。

 その質問も剣士としての立ち回りと魔術師としての立ち回りの違い等、魔法を使う意図など多岐にわたった。


「……と言うわけで、一つの呪文が終わったからと突撃していいわけではなく、相乗効果を狙って別の魔法を使う場合があるのです。その為にも事前の打ち合わせが重要になってきます。」


「なるほど、呪文が終わって突撃しようものなら次の呪文によって巻き込まれることや次の呪文の邪魔になり効果的な攻撃が出来ない場合があるのですね。勉強になります。」


「いえいえ、こちらこそ。マルティナ殿下は勉強熱心で頑張っておられるので私も講義のし甲斐があります。実に楽しい時間を過ごさせていただいております。」


 その時、マルティナの後ろに付き従うメイドの目が光ったことにカイは気付いていなかった。


 ―――――――――――――――――――――


 カイは講義が終わった後はマルティナ姫と他愛も無い話をしている。

 ただ今日はマルティナ姫が何か心配そうな顔をしていた。


「……カイ様は少しお疲れの様でしたが今日な何かあったのでしょうか?」


 どうやらカイの顔に会議の疲れが浮かんでいたらしい。


「いえ、たいしたことではありません。」


「いえいえ、訓練の時でも疲れた顔をしている者は動きが悪くなり盾で攻撃を受けそこなう場合が多ございます。カイ様も疲れている場合、工房の仕事にも問題は?」


 カイを心配するマルティナ姫の言葉の中にカイは気になる言葉を見つけた。


「盾で受けるか……そうだ、マルティナ姫。強力な攻撃を受けた場合、騎士たちはどの様に対処するのでしょうか?」


「基本は受け流します。」


「では、受け流せないような場合、例えば受け流すとその方向に仲間がいた場合は?」


「その場合は盾を構えて受け止めるしかありません。攻撃に対抗する力を徐々に加えて攻撃を受け止めるかたちですね。他に裏技として盾を壊すと言う物もあります。」


「盾を壊すのですか?」


「はい。正しくは“盾を壊させる”でしょうか。盾が無くなった場合、次の攻撃を受ける事も流す事も剣でするしかない為問題なのですが……。」


 その言葉を聞いてカイは理解した。

 マルティナが言った“盾を壊させる”ことに攻撃の力を分散させる方法だ。

 だがこれは走空車グエルの改良にヒントになるのではないか?

 カイの頭に閃くものがあった。


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