表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
160/186

魔道砲

春を待たずしてスコルナ軍が動き出した。

王国から奪取した超大型の飛行船レヴィキアを先頭にしたニ十隻の艦隊である。

スコルナ軍は王都への進路上にある都市を一つ一つ攻略していた。

その動きは真綿で首を締めるようにじわじわと、ゆっくりした動きだった。


艦隊の中心となる飛行船(スコルナ軍では飛行艦ルフトシフと呼ばれていた。)“ケフェウス”の艦橋でリュファスはつまらなさそうに下の都市の様子を見ていた。


「リュファス様、聖都ソルが降伏いたしました。」


聖都ソルは太陽神ベレーヌを祭るベレーヌ教の中心地である。

町の中央にはベレーヌを祭る大聖堂がありリヒトファラス王国で最も高いとされる塔がある。

その塔は先端に太陽のレリーフが輝きベレーヌ教のシンボルである。

ソルの人々は太陽の塔と呼んで毎朝、毎夕、塔に向かって祈りをささげていた。


「メルケル。あれは何をしている。」

リュファスは塔に向かい熱心に祈りをささげる信者たちを指さした。


「ベレーヌ教徒ですね。

彼らはああやって塔に向かい祈りをささげることで神に願っているのです。」


それを聞いたリュファスは軽く嘲笑すると

「クックックックッ、全く無駄なことをするものだ。

願うならなぜこのリュファスに願わない。

・・・メルケル、この船の主砲はまだ試していなかったな。

試すのによい的があるとは思わないか?」


リュファスが言う主砲とは“ケフェウス”の艦首に二門取り付けられた拡散魔道砲の事である。

それで太陽の塔を撃てと言っているのだ。


「はっ!了解しました!

リュファスさまのご命令だ!

艦首魔道砲発射用意!!」


それを聞いた艦長のジーン・ハイデマンは

「リュファス様。下にはソルの人々がおります。

太陽の塔が崩壊した場合、被害が出るかとそれに此処はベレーヌ教の聖地です。」

ベレーヌ教は人族の間で最も信仰されている宗教である。

当然、スコルナ領でもその信者は多い。

ジーンも信者の一人である。


だが、その言葉を聞いたリュファスはごく当たり前の顔をして

「それで?

それが主砲の試射と何か関係あるのか?」


リュファスの脇に控える執事のメルケルは

「ジーン艦長、リュファスさまの命令ですぞ。

それとも何か別の問題でもありますかな?」

と言って、冷たい不気味な目でジーンを見つめた。


「しかし、聖地を攻撃するなど・・・神の怒りに・・・。」


「ふっ、ジーン殿は度重なる戦いでお疲れの様だ。

部屋でゆっくり休むとよかろう。」

メルケルはそう言うとジーンに代わって号令を発した。


「もはや存在しないベレーヌ神に祈りをささげるのが間違っている!

その様な者に何が出来ると言うのだ!!

艦首魔道砲発射用意せよ!!

愚かな者に知らしめてやれ!」



程なく“ケフェウス”から閃光がほとばしり、ベレーヌ教のシンボルともいえる太陽の塔に襲い掛かる。

数百に及ぶ光の奔流は太陽の塔を易々と砕き、多くの破片を地上に降らせた。


「思ったより拡散するな。

塔の破片が細かくなった分、地上への被害は少ないな。」

リュファスは冷めた目で地上に降り注ぐ塔の欠片を観察しているようだ。


「はい。これは多くの艦艇を狙う物であるかと考えます。

いかがでしょう。

この砲を解析してみては?」


「やめておけ、メルケル。

魔道砲はあの魔導士が製作したと言う。

どの様な罠があるか判らぬ。

だが、こうして使う分には問題ない。」


「承知いたしました。

リュファス様この後は何処を攻略いたしましょう?」


「そろそろ王国も防衛の準備が整っただろう。

このまま北上する。」


リュファス率いるスコルナ軍の艦隊は王都を目指しゆっくりと進軍するのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ