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Sランクギルドを追放された魔導士、田舎でスローライフもくろむ・・・が?!  作者: 士口 十介
王国動乱

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対空艦戦

王国軍とスコルナ軍が激突したのは王都リヴェヒトから200km、王都からかなり離れた平原であった。

通常の旅なら早くて4日の距離であるが、走空車(グエル)では5時間弱の距離である。

この平原は広大さをもっていた。

だが、走空車(グエル)は良くも悪くも戦いを変えてしまったのだ。

魔術師や王国騎士でも十分に活躍できる場所でも走空車(グエル)同士の戦いでは手狭であった。


王国軍の走空車の数は四十台、それに対してスコルナ軍の走空車(グエル)は二十台。

数の上では二対一、スコルナ軍が圧倒的に不利な状態である。


だが、その中身は王国軍の半数以上が冒険者から徴収した走空車(グエル)を改造した物であり、軍用と言えるものは十台に満たない。

対してスコルナ軍はその全てが軍用である。


その上、最新鋭の飛行船(レヴィキア)、スコルナ軍の言う飛行艦(ルフトシフ)“ケフェウス”がある。

対して王国軍は飛行船(レヴィキア)と言えるものは輸送艦として作られた物とカイが所有するメルカバⅢであった。

どちらも“ケフェウス”の半分以下の大きさしかなく二台あせても“ケフェウス”に劣ると考えられている。

その為、戦力的にはスコルナ軍が勝ると考えられていた。


飛行艦(ルフトシフ)“ケフェウス”の艦橋でリュファスは展開する王国軍を眺めていた。

「王国軍は鶴翼の陣か・・・よし、“ケフェウス”を先頭に偃月陣を組め。」

リュファスの命令の元、スコルナ軍の走空車(グエル)は展開してゆく。


「スコルナ軍は飛行船(レヴィキア)を中央に偃月陣で中央突破を狙っている様です。」


「ここまでは予定通りか・・・。」

“メルカバⅢ”の艦橋で宮廷魔導士のディルマは呟く。

ディルマは一人、カイ達が載る“メルカバⅢ”に乗り込んでいた。


鶴翼の陣は数に勝る方が相手を包囲するのに向いているが、包囲が完了するまで中央は持ちこたえなくてはならない。

突破されるとその役目は果たせなくなる。

圧倒的な性能を誇る“ケフェウス”を持つならば中央突破が可能なのだ。


「メルカバと随伴の走空車(グエル)はスコルナの飛行船(レヴィキア)を受けつつ後退、その他の走空車(グエル)は左右に広がりスコルナを包囲せよ!!」


メルカバとその周囲の走空車(グエル)はスコルナの突撃に合わせ後退する。

その他の走空車(グエル)は左右に広がりスコルナの走空車(グエル)を呼び込み包囲する形になった。

だがその様な形になってもリュファスは慌てない。


「ふむ。やはり数が多いとこの形になるか。

だが、それはこちらに“ケフェウス”が無い場合は有効だったかな。

魔道砲発射用意!!」


“ケフェウス”の艦首に魔力が集まり光りだす。

魔道砲の発射態勢がとられているのだ。


「スコルナの飛行船(レヴィキア)、魔道砲への魔力を集中させています。」

メルカバの探査機を操作していたフィリアが報告する。


「よし、対魔法障壁(マジックシールド)最大展開!

大丈夫だ、あの魔道砲ならこれで防ぐことが出来る。」

船の艦長を任されていたディンカが断言する。

設計者であるカイが言う事に間違いは無いと言う表情をしていた。

カイが自信をもってディンカにそう断言した為なのだ。


「対魔法障壁(マジックシールド)最大展開。」

魔力制御を担当するルリエルが復唱し、障壁の魔法陣の魔力回路を起動する。

幾重にも重ねられ層となった障壁が“メルカバⅢ”の前方に展開した。


そこへ“ケフェウス”の拡散魔道砲からの砲撃が数百の矢となって襲い掛かる。


ガガガガガガガガガガガガガ


魔法の矢が障壁にぶつかる時に発する閃光と轟音が鳴り響く。


パリパリパリパリパリ


魔法の矢は障壁を割ってゆくが全てを割るには足りなかった。

それを見たリュファスは

「ほう。旗艦にするだけはあるという事か。

だが、二射目はどうかな?」

そう言うと、魔道砲の二射目の準備を命令した。



ディルマとカイは“メルカバⅢ“の上部へ移動していた。

「魔導士カイよ。

あの船の障壁解除のタイミングは判ったか?」

ディルマはカイに尋ねる。

「ええ、発射前、発射後に数秒ほどの時間の空きがあります。

それは最初に設定した通りで変化はありません。

ですが、“メルカバⅢ”の障壁は次の攻撃で破られます。

その余波を防ぐことは出来ますか?」


「心配無用じゃ。

その為にこの杖がある。」

ディルマはそう言うと精霊石と魔力回路で飾られた杖を取り出した。


「魔力の杖?いや、これは理力の杖。」

「うむ、そうじゃ。

この杖ならばワシの魔力を数十倍、いや数百倍に増加させる。

それで作り出す障壁ならば余波程度は防げよう。」


“メルカバⅢ“の上部から外に出ることが可能で展望デッキになっている。

展望デッキにはディルマとカイは立っていた。

ディルマは理力の杖を構え障壁の呪文を詠唱し始める。

その様子は“ケフェウス”の艦橋にいるリュファスから望遠鏡で見ることが出来た。


「手に持っている物は杖、魔導士か?

なぜ魔導士があのような所に出ている?

攻撃の為か?」


「おそらく、障壁の呪文を張り直す為でしょう。

攻撃はありえません。」


「どういうことだ?メルケル。」


「障壁の呪文は一度展開すれば壊されない限り展開し直す必要はありません。

ですが、ある程度消耗した状態の障壁は維持できますが、

新たな状態にするのは一度障壁を消し、もう一度展開し直す必要があるのです。

その時間は船により変わり“ケフェウス”の場合も五秒。」


「するとあの船の場合、こちらの魔道砲を討つ間隔よりも時間が掛かると見ているのか。

だが、あちらから攻撃がありえないと言うのは何故だ?」


「障壁は便利なもので攻撃を防ぎますが、こちらの攻撃も防ぐのです。

その為、攻撃の際には取り払う必要があります。

あちらの船は障壁を展開し続けているため、攻撃はありえないという事なのです。」


「なるほど、それならばこちらは魔道砲を撃ち続ければ良いという事だな。

だが、単純すぎる・・・何かあるのか?」

そう言うとリュファスは考え込んだ。


「メルケル、魔道砲発射時に障壁は解除するのだったな。」


「はい。ですが、解除するのは魔道砲周辺の部分のみで他は解除しません。

この船の障壁は細分化されており一部分を解除することが可能になっています。」


「では、解除時に潜入することは可能か?」


「魔道砲の解除部分からですか?

それは不可能でしょう。

解除される範囲は砲の周りだけですので隙間がありません。

隙間があっても再展開するまでの時間で中に入るには人間の飛行呪文では間に合わないので走空車(グエル)の速度で移動する必要があります。

その場合、見える範囲に走空車(グエル)があれば障壁を解除しなければ問題はありません。」


「・・・障壁解除と同時に突入では発射体勢時の輻射熱で近づく事さえできない。

発射後に通る場合、障壁の解除されている時間は飛行呪文で近づくには短すぎる。

その為、移動速度が速い走空車(グエル)でなければ不可能、というわけか。」


「・・・よし、魔道砲第二射発射せよ!!」


リュファスの命令で魔道砲の二射目が放たれる。

その威力は一射目と変わらない威力で“メルカバⅢ”に襲い掛かった。


残り少なかったメルカバの障壁は割れ、ディルマが展開した障壁に襲い掛かる。


「ぐぬぬぬぬぬぬ。

不味いの、思ったより数が多い。

そちらの方はどうだ?」

ディルマはなんとか持ちこたえている様である。

それに対してカイの方は片目をつぶっていた。


「まだ魔道砲の放射が終わっていません。後数秒かかりそうです。」


「うむ、まだ続くのか。それでは持ちそうにないの。

ならば、奥の手を出すか。」


ディルマは左手で杖を掲げ命令(パワーワード)を唱えた。

「理力の杖よ!その真価を表せ!崩壊(ブレイク)せよ!」


ディルマの命令(パワーワード)と同時に理力の杖が崩壊し膨大な魔力の奔流が生まれる。

その魔力は障壁を内側から壊し魔道砲による魔力の矢を弾き飛ばした。

だがその代償は大きな物だった。


「何と言う威力だ。あれが理力の杖を開放した時の物か・・・ディルマ様その姿は!!」

驚くカイの目には杖を持つ左腕が肩から消し飛んだ姿だ。

そして、その姿は“ケフェウス”の艦橋からリュファスも望遠鏡で見ていた。


「魔道砲を防ぐのに杖と腕を犠牲にするとは・・・何故だ?」


「リュファス様、第三射目はいかがいたしましょう?」

メルケルが魔道砲の使用を訊ねた。


「・・・判らない。いったい何が目的だ?

一先ず三射目の為に魔道砲に充填しておけ。

充填量は・・・三分の一。

発射命令があるまで待機だ。」


“ケフェウス”の魔道砲に魔力が充填され充填される時に放つ光が発せられる。

その光は“メルカバⅢ”上の展望デッキにいる者の目にも写った。


「リュファス、それは悪手だ。」

ディルマがそう呟く。


それを聞いたカイは呪文を唱えた。


「解析(アナライズ)」


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