始まりの日
「世界樹は竜が作り出した物だって!!」
カイ達は驚きの声を上げる。
「アイナリンドは知っていたのか?」
「いえ、私、私達にはそこまでの事は知らされていません。
ただ・・・」
「ただ?」
「ただ、
“エルフの町は白い竜の温情によって作られた。何人も竜を害してはならない。“
と言う掟があります。」
「なるほど。・・・ん?」
カイは少し疑問に思う。
「ところで、白竜様?クレタ様?」
<白竜でもクレタでも好きな方で呼ぶが良い。>
「では、クレタ様。
昔話での約束は一晩だったと思うのだが?
一体いつの話なのでしょうか?
それとも約束は一晩では無い?」
<ふむ、間違いなく約束は一晩である。
そしてそれは今この時も続いている。
我は寝てはおらぬし、起きてもいないからな。>
「まさか一晩と言うのは・・・」
<寝て起きるまでの間の事よ。
我が微睡でもう何年になるかな。>
驚くことに白竜は世界樹を作って以来、微睡でいると語った。
やはり竜とは人知を超えた存在なのだろう。
<我を中心として外よりマナを取り込み循環させ世界樹を維持する。
世界樹の恩恵を受けた者が大地に帰り大地にマナをもたらす。
世界樹は大地よりマナを吸い上げ外に放出する。
森羅万象の循環の中に組み込まれているのだよ。>
「・・・精霊石を中心・・・循環・・・マナ・・・外・・・」
カイが何かを思いついたのかブツブツ呟いていた。
「カイ?どういう事?」
カイがルリエルの方へ顔を向けるとフィリアやアイナリンドもカイの方を見ていた。
「グウィバーが言っていた精霊石の活用だよ。
精霊石を中心に外よりマナを取り込み循環する。
それにより飛行船を動かす。
つまり、普通に動かすだけなら精霊石の消費が皆無になる。
魔法陣自体の寿命が存在するから一概に言えないが、
精霊石が存在する限り半永久的に飛ぶことが出来る。」
「半永久?」
「とても遠くまで行けるという事ですか?」
「カイ殿それはすごい事なのでは?」
ルリエルやフィリア、アイナリンドさんが口々にカイに話しかけた。
「ただ疑問なのは、それだけ長い時間を飛ぶ飛行船がなぜ必要なのかという事だ。
試練の内容を考えると、クレタ様。
貴方は予知能力をお持ちですね?」
カイは白竜クレタに尋ねた。
<いかにも。我はある程度の事象を予知することが出来る。
だが、そなた達の未来を予知することは不可能だ。
知っての通り、予知は己に関することは出来ない。
そなた達の行動はそなたたち人族だけでなく我ら竜族にも影響を及ぼす。
その為、そなた達に関する予知は不可能になってしまったのだ。>




