16話 静ネゴシエーション
小説とはあまり関係ない話ですが、学生時代の友人にワンオクのライブに
誘われました。
めちゃくちゃいきたいいいいいいいいいいいい
けれど、名古屋。ちょいと遠いな、どうしよう。
明日葉ゆかりの話を静かに聞いているFクラスのメンバーたち。凛とした声が、教室中に響き渡る。
「そんなこんなで、Aクラスと喧嘩することになっちゃった。ごめん、みんな!私と吉祥寺君のせいでこんなことになって。私的には、かなり我慢したんだけど、あまりにもムカつくから、メンチ切っちゃった。あーあ、高校じゃ大人しい優秀な生徒でいるつもりだったんだけどね。
あと、委員長を退任するわ。さすがに大きいことやってしまったしね」
頭を下げる明日葉ゆかり。続いて、吉祥寺春夫も頭を下げた。
「本当に、みんなごめんよ。僕のせいで、クラスのみんなに迷惑をかけてしまって。あと、明日葉さん、ありがとう」
「あの時は、私も言い過ぎたよ、ごめん。もとはといえば、こんな大事な日にマイケルが休むからいけないのよ。まぁ、何を言っても事態は変わらないからね。後は、みんなで話し合って、新しい委員長を決めようよ。ね?みんなもそう思うでしょ?」
明日葉ゆかりの返事に、誰も返事をしようとしなかった。
「やっぱり、みんな怒っているよね?許してくれとは言わないけど、みんなの力を貸して!一人じゃどうにもならないから」
再度、頭を下げる明日葉。静かになった教室から、手を叩く音が聞こえてきた。
一つだった音が、少しずつ増えて行く。
水に出来た波紋が広がるように、音が広がる。
そして、盛大な拍手の音によって、明日葉と吉祥寺は包まれていた。
「えっ?なんで私、拍手されているの?」
訳が分からない明日葉ゆかり。Fクラスのメンバーたちから、声が次々と上がる。
「明日葉さん、よくやってくれたよ!むしろ、そんな厳しい状況で、ここまで言いたいこと言える明日葉さんはすごいよ!」
「明日葉さん、かっこいい!」
「明日葉さん以外に、委員長できる人はいないでがんすね!Fクラスのことをここまで思ってくれる人は、他にいないでがんす!」
どんどん盛り上がる、クラス内。
エリート高校に通う学生なのに、エリートたちを好まない変わり者たちが集まるFクラスらしい反応だった。
「えっ、私、委員長を続けてもいいの?」
目を真ん丸にする明日葉ゆかり。まさか、このような反応が返ってくるとは思わなかったのだ。
「もちろんだよ、明日葉さん。みんな、明日葉さんに委員長を続けてもらいたいと思っているよ」
太一は、驚いている明日葉ゆかりにそう告げた。
「風上君、みんな、本当にありがとう!」
明日葉ゆかりは、本当に嬉しかった。
自分は、こんなに良いクラスに加入することを誇りに思った。
以前通っていた学校は、一体感なんてほど遠い存在で、校内は荒れ、学級は崩壊していた。
そんな中で、明日葉ゆかりの心は荒んでいった。
彼女にとって、中学時代は黒歴史だ。
新しい学生生活で、やり直すことを目標にがんばってきた。
それが、叶った瞬間だった。
「よし、みんなで今後について話し合いましょうか」
クラスをまとめる明日葉ゆかり。机を四角に囲い、会議の準備を始める。
「今後、Aクラスへの対策を考えていきたいと思います。何か意見がある人は、手を挙げてください」
手が上がるたびに、黒板に文字が増えていった。
様々な意見が飛び出た。
次のクラス対抗能力競技大会で、Aクラスと真っ向勝負をする。
少しでもいざこざを減らすために、相手と交渉する。
次の定期試験で、学力試験で勝負するなどであった。
明日葉ゆかりは、黒板の内容を吟味した。
「まとめると、大体三つの意見にまとめられるね。まぁ、現実的な話になっちゃうけど、学力だけはどうにもならないかしら。定期試験まであまり日にちはないし。今、赤点補習に行っているメンバーは、ええと、8人か」
今、赤点補習に行っているFクラスのメンバーは、加藤クレアを含め8人である。
「もちろん、Aクラスに補習者なんていないわ。今、五月で六月に試験があるから、一か月ちょいしかない。勝てると思う?」
皆、首を振った。
Aクラスの成績の良さは、痛感していた。
授業に来る教師は、毎回こういっていた。
(Aクラスに負けないようにがんばりなさい。同じ九曾高校に入学したのだから)
Fクラスは、全国平均で言うと、そこまで頭が悪いわけではない。
九曾の授業レベルが高すぎたのであった。
「だからね、やっぱり試験後の能力の大会で勝つのが一番だと思う。会議でも言ったのだけれど、相性の良い能力者同士で組んで訓練積めば、勝機はあると思うの。まぁ、それでも、Aクラスの総合能力値は高いのだけれど。でも、チャンスはあるよ!」
この話を聴いて、能力競技大会での勝負を申し込む流れになっていた。
だが、そこに一つの手が上がった。聖生静であった。
「あの、すみません。少し、よろしいですか?」
「はい、聖生さん。どうぞ」
聖生静は、立ち上がった。
「明日葉さん。Aクラスの代表は、井久佐美咲さんですよね?」
「そうよ、井久佐美咲。Aクラスの代表だから、かなり優秀なはずね」
「なるほど。ええとですね、私に交渉人の役目をさせていただけませんか?私は、無為な戦いはしたくないんです。お願いします、私にチャンスをください」
聖生静は、頭を下げた。その言動に、クラスがざわつき始める。
普段、大人しい聖生静の主張に、驚いたのだ。
「みんな静かにして。聖生さんの意見はわかった。でもね、Aクラスとの関係を修復するのは、かなり大変だと思う。私たちの件に加えて、Aクラスのメンバーは、唐沢会長を全面的に支持しているから、Fクラスへ強硬な態度を取ろうとしているはず。それでも、やりたいと思う?何を言われるかわからないよ」
聖生静の目を、真っ直ぐに見つめる明日葉ゆかり。
静の本気を図ろうとしている。
「やります、やらせてください!」
聖生静の真摯な態度に、皆納得した。
明日、聖生静がAクラスへの交渉をすることに決まり、会議はお開きになった。
太一は、部活をしていないので、家へ直帰した。
最初は、何かしらの運動部に所属しようとしていたが、授業内容の難しさと進むスピードについていくのが精一杯で諦めた。
それに、家に帰ると、楓花軍曹の特別メニューが待っているのだ。
太一は、帰宅すると、夕食の準備をした。
今日の献立は、から揚げ、ホウレン草と野菜のナムル、冷奴だった。
料理をしていると、玄関のチャイムがなった。
持っていた包丁をまな板に置き、玄関に向かい、扉を開けた。そこには、スーツ姿の楓花がいた。
「ただいまー。あー、もう疲れちゃったわよー」
「あれ?楓花ちゃん、随分と早いね」
楓花が会社から帰ってくる時間は、いつも七時から八時の間だ。
ただいまの時刻は六時で、今日に限ってはやけに早かった。
楓花は、小さいので、玄関を開けるときはいつも太一を呼ぶのである。
「今日は外回りだったから、適当にごまかして帰ってきちゃった。夕方からの会議が、六時半よ?五時半過ぎた時点で、定時過ぎているのに。課長は、本当に残業好きだから困るわ。ま、残業ばかりするのは、仕事できないのと同義よ!」
「途中で抜けて、怒られないの?」
「今月は売上いいから、問題ないわ。売れてれば、オーケーな会社だから。あ、太一、ビール冷えてる?」
「もちろん冷えてるよ。姉貴と一緒に楓花ちゃんも飲むから、減りがすごく速いよ。今度、ケースで買わなきゃね」
ごまかすように笑う楓花。
冷蔵庫からビールを取出し、プルタブを引っ張る。
カシュッと音を鳴らし、グビグビと喉を鳴らした。
キンキンに冷えたビールは、楓花の喉を潤し、至福の時間を与えてくれた。
「うーん!この一杯のために、生きているようなものね!!」
幸福な余韻を楽しむ楓花。
「晩御飯までもうすぐだから、テレビでも見て待っていてね」
「はーい♪」
太一は、夕食の準備の再開を始めた。
楓花は、一人ぼやきながらテレビを見ている。
「あー、また打たれた。二連続ヒットとか勘弁してよねー。まだ二回の表よ。ノーアウト一塁、二塁とか」
楓花の独り言を聴きながら、太一は料理をした。
程なくして、蛍子も帰宅し、三人で夕食を取る。特に変わったことはなく、楽しい食事の時間が過ぎた。
そして、この後に待ち受けているのが、楓花の特訓タイムであった。
太一と楓花は、庭にでた。
「太一、いつもの楓花ちゃんトレーニングを始めるわよ!」
「うん、わかった」
「わかったじゃないわよ!今は、イエス、サー!よ!」
ズビシと指を太一に指す。
「イエッサー!なんで、こんな軍隊チックなことをやるの?」
「何事も形か入るタイプなのよ、私。じゃ、太一。これを付けて頂戴」
楓花は、大きなバッグをごそごそしている。
「てれれってれー。バーチャルエアメガネ!」
ドラ○もん風な効果音と共に出てきたものは、ヘッドセットの形をした謎の機械であった。
「なにこれ?しかも、メガネとかいって、ヘッドセットみたいな形してるんだけど」
「これはね、装着することによって、架空の相手と戦うことができるわ。太一は、剣を持って戦うの。実戦と大分近い訓練を積むことができる優れものよ!」
「おー!これは面白そうだね」
「でしょ、でしょ?フェアリーサポートの新商品なのよ。メガネをつけてみて」
太一は、ヘッドセットを付けた。
「何も見えないよ?」
「ちょっと待って。今から設定するから」
楓花は、ヘッドセットの裏をいじくる。
「ええと、このつまみを回して、ボタンを押して、数値を入力して。太一の能力数値は、800位だったわね」
「そうだね。あんまり誇れる数字じゃないけど、楓花ちゃんのトレーニングのおかげで、少しはあがったよ」
数値は、学生によって様々で、九曾高校の生徒は平均で1500位である。
「じゃ、今回は、この模擬刀で戦ってね。ま、バーチャルだから持ってる必要ないけど、雰囲気でないでしょ?これから、風椿を使いこなしてもらわなきゃいけないんだから、しっかり剣技を身に着けるのよ」
「あまり剣の練習してないんだけど?」
「毎日素振りしていたんだから、大丈夫よ。基礎は大事よ、基礎は。ま、実戦が一番、戦い方を覚えるのよ。訓練より実践よ!」
「不安だけど、強くなりたいしがんばるよ」
「じゃ、頑張ってらっしゃい。ぽちっとな」
楓花が、起動ボタンを押すと、機械が音を立て始めた。
太一の目の前が、青く光る。
あまりにも強い光に、太一は目を閉じた。
目が光に慣れ始め、目を開けると、そこは闘技場のような場所だった。
中央にたつ黒い人影、いや、黒い人間のような形をした物体が、太一の元へ走りこんでくる。
「随分とリアルなんだね。よし、やるぞ!」
太一は、剣を構え、戦いが始まった。
自分で書いててつっこみたいところは、いっぱいある小説ですがとりあえず完結させます!!




