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11話 合宿編4 (夢の中で逢えたなう)

太一は、気付くと家の玄関の前にいた。

日差しが照りつけ、気温がかなり高い。

セミの声が響き、どうやら季節は夏らしい。

「あれ?さっきまで、タカシたちと一緒に合宿にいたはずなのに・・・」

家の前で、独り言を言っていると、玄関の扉が急に開いた。

「あら?お帰りなさい。随分遅かったのね。お父さん、お姉ちゃん、さやかちゃんが、あなたを待っているわよ。高校入試合格のお祝いをしましょう♪」

「えっ?なんで母さんが、日本にいるの?海外に父さんと一緒に、出張中のはずでしょ?」

「何言を言っているのよ。太一のために、帰ってきたんじゃない?忘れたの、おかしな子ね」

太一の母は、笑っている。

太一の頭は、混乱した。

いるはずのない人たちが、なぜか家にいる事実。

それだけで、十分に混乱させられるのに、母の発言にさやかの名前があることにも驚いた。

「さやか姉もいるの?なぜうちに?」

「もちろん、太一のことを祝いにきてくれたんじゃない?あなたたち、幼馴染でしょ。ほらほら、そんなところにつったってないで、中に入りなさい」

太一は、母に連れられて、家の中に入る。

家の中は、特に変わったところはなさそうだった。

「みんな、太一が帰ったわよ。美味しいご馳走を用意したから、食べてね」

居間に入ると、テーブルを囲んでいる人たちがいた。父さん、姉貴、さやかだった。

「やっと帰ったか、太一。みんな待ちくたびれているぞ」

「太一君、おかえり。高校入試合格おめでとう!」

「太ちゃん、合格おめでとう。私、とっても嬉しいわ。太ちゃんと一緒に、同じ高校に通えるなんて。一緒に、学校行きましょうね」

太一を快く迎える三人。太一は、嬉しくなった。

願っていた理想が、目の前にあるからだ。

「さやか姉・・・」

太一は、涙をこぼした。うれし泣きというやつだ。

「私、何か悪いことした?泣かないで、太ちゃん」

泣いている太一に、おろおろしているさやか。

「いや、何も悪いことしてないよ、さやか姉。今日は、祝ってくれるんでしょ?ご馳走食べよう?」

「そうね、太ちゃんのお母さんのご馳走食べようか。太ちゃんの分、お皿にとってあげるからね」

こうして、家族パーティーは、始まった。楽しい会話に、美味しい料理。そして、この場にいる愛しい人たちに囲まれていることは、太一にとって、最高に気分のいいものであった。

「太一。私たちから、お前にプレゼントがある。高校入試合格のご褒美ってやつだな」

父は、嬉しそうに、プレゼントを取り出した。

「私からは、これだ。万年筆。古臭いと言われるかもしれないが、将来使う日がくるかもしれん。大事にするようにな」

「さやかお姉ちゃんじゃなくて、本物のお姉ちゃんからは、腕時計をあげるわ」

「もう、蛍子さんたら。私からは、これね。ハンカチよ。頑張って選んだよ!受け取ってね」

それぞれのプレゼントを受け取った太一。

「ありがとう、本当にうれしいよ。みんな、ありがとう」

そして、楽しい時間は、

あっという間にすぎ、気付いたら夜になっていた。

太一は、飲み物を飲みすぎたせいか、尿意を感じた。

「ちょっと、トイレいってくるね」

太一は、トイレに行った。気分は高揚し、鼻歌でも歌いだしてしまいそうだった。

トイレを済ませ、太一は廊下を歩いていた。

太一は、このとき、少しの違和感を覚えた。

さっきまで、家の中が賑やかであったのに、今は家の中が音一つ聞こえない。

そして、気配すら感じなかった。

嫌な予感がして、居間に走って戻ると、そこには何もなかった。

居間の部分だけ、ごっそりなくなっていたのだ。誰もいない、物がない、それどころではない。

居間は、がらんどうで、真っ白い世界へ続いていた。

「え、みんなどこ行っちゃったの?」

太一は、焦り、家じゅうを探し回った。

リビング、キッチン、お風呂場、二階の各部屋、クローゼット、タンス、物置。

あるとあらゆる場所を探し回った。

それでも、見つからなかった。

もう家には、誰もいない。

太一は、思い立って、玄関に向かった。

玄関を開けると、そこにも真っ白な世界が広がっていた。

外に出ようと思った太一は、引き返した。

恐らく、この世界にもういないのだろう。太一は悟った。

「どうして?どうして、さっきまでみんなここで、笑っていたじゃない?」

太一の声が虚しく響き渡る。

たった一人の空間は、あまりにも寂しかった。

太一は、さっきもらったプレゼントのことを思い出し、ポケットの中をまさぐった。

「さっき、さやか姉にもらったハンカチは・・・」

さやかに貰ったハンカチを、太一はポケットに入れていたのだ。

「ない・・・。やっぱり、ないか・・・」

太一は、居間があったはずの白い空間の前で、呆けていた。動く力がでなかったのだ。

そうしているうちに、何分たっただろうか。太一の目の前に、光の集合体が現れる。

「太ちゃん、顔をあげて」

少女の声が聞こえた。顔をあげると、そこには光と混じるさやかの姿があった。

「さやか姉!!」

「私ね、太ちゃんに最後のお別れを告げに来たの。あなたと私は、同じ世界じゃ生きることができないのよ。何も言わないで去るのも可哀そうだったから」

「さやか姉。いかないでよ」

太一の声が、涙によって歪む。

「もう、決めたことだから。ごめんね、太ちゃん。バイバイ」

さやかは、手を振って光と共に消えかかっている。

「待って、さやか姉えええええええ」

完全に光とさやかは、消えてしまった。

手を伸ばしたが、虚空を掴むだけだった。


「おい、起きろ。太一!太一!!」

太一の耳に届いたのは、タカシの叫ぶ声だった。

その声が、太一の意識を呼び起こした。

「はっ!?」

「お、目を覚ましたか。よかった。太一、お前、本当に苦しそうに眠っていたからな。どうだ、いい夢をみれたか?」

「あぁ、最高に、最悪な夢だったよ。まさか、もう一度、辛い別れを経験させられるとはね。

全く、きつい罠をしかけてくるな」

太一の意識は、まだ朦朧としていた。

だが、ここでゆっくりする気分にはなれなかった。

太一は、立ち上がった。

「よし、行こう。この先もまだ長いと思うからさ」

「風上、まだ休んでいたほうがいいんじゃない?」

心配しそうにこちらを見ている加藤クレア。聖生もまた、こちらをみている。

「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。そして、時間を浪費させちゃってごめんね」

「浪費なんて言わないでよ。私たちは、チームメイトでしょ?お互いをフォローするなんて、当たり前よ」

「クレアちゃんの言うとおりです。頑張って、一緒にC地点を制圧しましょう」

「二人とも、ありがとう」

4人は、弁当の片づけをして、再び道を行く準備をした。

太一は、お昼ご飯を食べ損ねたが、今は食べる気分ではなかったので、特に構わなかった。

「よし、行こう」

タカシの一言で、全員歩き始めた。長い長い森の中をずっと進む。

「それにしても、俺を襲ったあのガスは、なんだったんだろう?」

「多分な、あれは、催眠ガスの一種だ。眠りに落ちいらせて、悪夢を見させるガスの一種じゃないか?」

「それにしても、三人にガスが襲わなくてよかったよ。精神的にきつかったからね・・・」

「風上が、全部顔で受け止めてくれたおかげね。まさか、全部吸い込むなんておもわなかった。風上には、悪いけど、テレビにでてくる芸人みたいで、ちょっと面白かったわ」

手を押さえて、笑いをこらえるクレア。

「風上さん、さまさまですね」

「あはは。まぁ、危害がなくてよかった」

長い森の中は、安全そのものだった。

先ほどまでの罠が嘘のようになかった。

熊やシカなどの動物もでてこなく、道も険しいわけではなかった。

だが、やたら長かった。

二時間くらい歩いただろうか、C地点の近くにまでやってきた。

「この道を抜ければ、C地点だ。あそこをみてみろ。森が途中で終わり、開けた場所があるだろう?あそこがC地点だ」

タカシは、指を指した。確かに、開けた場所が見える。

「もう少しだ。がんばれ」

4人は、C地点の入り口近くまできた。

「よし、C地点の入り口だ。ここからは、敵が、占拠しているはずだ。気をつけていくぞ」

タカシは、一歩踏み出した。足が地に着いた瞬間、地面が崩れはじめた。

「やばい、三人ここから離・・・あああああ」

「きゃああああああああああああ」

タカシと聖生静は、落とし穴に落ちた。

タカシが落とし穴の中心に立った瞬間、中心から外側に落ちるという高度なテクニックを使った落とし穴だった。

静は、巻き込まれた形になる。

一瞬の出来事で、三番目にいたクレアは、何もできなかった。

「ちょ、石田、静、大丈夫―!?」

「タカシ、聖生さんー!」

下を覗き込み、声をかける太一とクレア。

穴はかなり深くまで掘り下げられ、タカシと静の姿は見えなかった。

「おーい。太一、ロコツン、聞こえるかー?二人とも擦り傷くらいで、なんとか怪我はない。出発の時に、ロープもらっただろう?あれを、下にたらしてみてくれ」

「あ、そっか。ロープがあった」

太一は、手持ちのバックからロープを取出し、穴に垂らした。

だが、ロープの長さが、タカシのいるところまで届かなかった。

「だめだ、長さが足りないよ」

穴の中に向かって叫ぶ。

「そうか。どうしたものか・・・」

「タカシ、静、聞こえるー?提案があるんだけど、いい?」」

「どうした、ロコツン」

「私たちだけで、C地点を制圧してこようかと思うの。もちろん、制圧してから助けに来るから、安心して。でも、一旦もどって、ロープをもう一本とってくる時間はないよ。だから、風上と一緒に倒してくるよ」

「えっ!?何を言っているの!?」

太一は驚いた。

「ね、風上もやる気あるよ・・・ねっ」

クレアは、太一の脛を蹴った。

「あっ!」

艶のある声が太一の口から漏れる。

「何気持ち悪い声だしているのよ」

蔑んだ目で太一を見るクレア。

これだけでも、太一の身体は反応してしまった。

さすがに、ドMなことがばれたら、まずいことになる。

「い、いや、気持ち悪い声なんて、出してないよ?はい、制圧をがんばらせていただきます!」

「ほら、風上もやる気満々よ」

なんとかごまかせたようだ。

「本当にやってくれるんだな?すまないな、俺がドジを踏んだばかりに」

「気にしないで。僕ら、友達だろう?」

「あぁ、そうだな。だが、気を付けてくれ。どんな奴がまっているか、わからないからな」

「よし、太一。やってやるわよ」

「おう」

太一とクレアはC地点に入る。

入った時点ですでに、クレアの殺気はいきり立っている。

ここには、鶴仙人の刺客がいるはずなので、太一とクレアは気合いを入れた。







やっと次の話で戦闘が入ります。

遅くなって申し訳ありません(涙)

後半は、バトル展開をかなり多くしていますので

お許しくださいorz

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