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第六十八話◇
ー視点無しー
瓦礫の山の前に立つバルド。
その瓦礫の下から覗く真っ赤な血。
そして血溜まりの中の右手。
「あっけない物ですね…。」
カノンのものと思われる右手に呟くバルド。
「私を殺すなどと言っておいて瓦礫に押しつぶされるとは…」
「貴方は私が反乱を起こした時から何も変わっていない。」
棘棘しい反論が聞こえてこない。
血に濡れた右手がピクリとも動かない。
さらにバルドが続ける。
「貴方は何も護れない。国も、民も、仲間も、異世界からの使者も。」
次の瞬間。
開かれていた右手が、拳を作った。
「!」
ズズズッ…と少しずつ瓦礫が動く。
そしてガラガラと音をたてて山が崩れた。
影が立ち上がる。
「うるせぇな…。」
ボソリと呟く。
ポタポタと血が滴る。
「俺があの頃と一緒だって言いてえのか?ハッ…下らねぇ…。」
鼻で笑ってバルドに剣を向ける。
口の中を切ったのか口端から一筋血が伝う。
「もう失う訳にはいかねぇんだよ…。国も、民も、仲間も、ヒナタも…!!」
「来いよ!バルド!!」
ボロボロの紅い龍がもう一度剣を握った。