第88話 魔女、出立する
教会での治療の手伝いは、神官が復帰した事でお役御免になった。そうなってくると冒険者ギルドでのお勉強会以外の時間は暇になるわけだ。
そういった暇な時間を使って、再会を約束していたガーナ、サマンサ、ミランシャの三人娘と共に出かけたりもした。最初にダーナの街で出会ってからもうすぐ一年になる。三人は相応に成長をしているようでそろそろブロンズランクから、アイアンランクになれそうなのだとか。
ここ最近は、そんな三人を少し手助けするつもりで指名依頼を出して、薬草や素材の採集を依頼している。王都周辺はなかなかそういった素材を手に入れるには不便な所なので大助かりである。
お勉強会にも誘ってみた所、一人の孤児の見習い神官と仲良くなりパーティーメンバーにスカウトしていた。パーティーに入れる入れないは私はノータッチなので好きにしたら良いと思う。一応教会長の許可はもらいなさいとは言っておいた。
戦士のダーナ、魔術師のサマンサ、盗賊のミランシャ、そこに神官が加わればバランスの良いパーティーになるんじゃないかな。
後は改めてケンヤのひ孫であるアデリシアに会いに行き無事お米を始め調味料を大量に手に入れた。アデリシアからケンヤに今回の呪い事件の事が報告されてたようで、ケンヤからお礼の手紙といっしょに追加で色々いただくことになった。
別に気にしなくてよかったのにね、とは思ったけど貰える物はもらっておくことにした。なんとなくそろそろアンジュが戻ってくる気がしている。そろそろ次の旅に向けての準備をしないといけない。
冒険者ギルドでのお勉強の方も、一定のレベルに達した子から卒業していってもらっている。卒業した子は国の施設でしばらく過ごして、それぞれの望む道へ進む手助けをしてくれるらしい。
その辺りはアルバスさんが主導してやるようなので、私は錬金術や薬学に必要な設備や道具類を揃える手伝いをした。卒業した子たちは中級くらいまでなら作れるようにはなっているので、後は私が卒業の証として渡した書物で勉強していけば、上級までいけるかも知れないね。
錬金術に関しては、流石にニーナちゃんほどの才能をもっている子はいなかったかな。ただ一人だけ薬学を本気で学びたいという子がいた、その子は卒業を遅らせる感じでしっかりと薬学の知識を伝授しておいた。きっと王都きっての薬師になってくれることでしょう。
若干やりすぎたかなとは思ったけど、神殿長のおばあちゃんから文句は言われてないのでまあ良いでしょう。ちなみにミーシャは錬金術は初級が何とか、薬学はそこそこ止まりだったとだけ言っておきましょうか。
そしてお勉強会から全員卒業したタイミングを見計らったようにアンジュが王都に戻ってきた。アンジュは挨拶だけ済ませると、次の世代が訪ねてくるまで寝るといって巣穴に戻っていった。
◆
王城の前には王族や騎士団長を始め騎士の方々が集まっている。
「師匠お元気で、また会いに来てくださいよ」
「アルバート、いい王様になりなさいなんてことは言わないわ。私にはいい王様がどういうものかなんてわからないからね。だから、好きに生きなさい。悔いのないように自らの心に従い生きなさい。きっとそれがこの国にとっていい流れになるでしょうからね。ただし、人の迷惑になることは駄目だよ。スレイナもこんなのが王様だと苦労するかも知れないけど、支えてあげてね」
「はい、こんな兄ですので皆で支えていこうと思います」
「途中まで良いこと言ってると思ったんだが、師匠もスレイナもなんか酷くないか? 俺ってこの国の王様なんだけど」
同意を得ようと周りを見回すアルバート・ドレスレーナだけど、みんな顔をそらして目を合わせないようにしている。
「おい、流石に俺でも怒るぞ」
「そう思いたいなら、さっさと俺を隠居させてほしいものだな」
「ぐぅ、隠居はもう少しだけ待ってくれ」
「わかっておるわ。今のお前をほったらかして隠居など民がかわいそうだからな」
前国王のアルガス・ドレスレーナが、バシバシとアルバートの背中をたたきまくっている。
「試練のこと、それに俺達を鍛えてくれたこと、錬金術師不足の解消や薬師の育成など、色々とお世話になりました。師匠もお元気で」
全員が右手を左胸に添えて直立している。私もそれに合わせるように右手を左胸に添える。しばらく見つめ合うように視線を交わして腕を下げる。最後に集まっている人たちと別れの挨拶を済ませる。
「それじゃあね、みんな元気で。それとそうだね。これは私からの祝福ということで受け取っておきなさい」
私はポシェットから杖を取り出し、魔力を込めて石突で地面をトンと叩く。そうすることにより杖の先端から魔力が空へと登っていき、花火のように破裂した。破裂した七色の魔力は集まっていた王族や騎士の人たちに降り注ぎ、その体に染み込むように消えた。
「師匠今のは?」
「ふふ、魔女の祝福だよ。悪いものではないから。それじゃあね」
私はそう言って用意されていた馬車に乗り込む。中にはティッシモが既に乗っている。前方の窓をこんこんと叩くと馬車は進み始める。私が急に祝福を与えた事で多少の騒ぎは起きているが、そんなことは関係ないというように馬車は進んでいく。
魔女の祝福と言ったけど、悪いものではないのでぜひ活用してもらえると良いかな。馬車は御者さん込みの無期限で貸し出してくれるということだったけど、流石に悪いので隣の街まで乗せていってもらうだけにしてもらった。
「別れはすみましたか?」
「まあね」
馬車は城下町を出て東へ進んでいく。このまま馬車で進めば、目的地には大体一週間ほどで着くんじゃないかな。急ぐ旅でもないのでのんびり行きましょうかね。私はごろりと座っていた座席に横になり目を閉じた。
ここまでが書籍2巻該当部分となります。
続きはカクヨムにありますが、未遂降板となっております。





