第72話 魔女、地下へ向かう
王妃のティアーナは、見ただけじゃあ年齢が全くわからないほど幼く見える。最初見た時ティアーナのほうがスレイナの妹さんかと思ったくらいだ。ちっちゃくてかわいい彼女の身長は、私の肩くらいまでしか無いのではないだろうか。
噂で国王がロリコンだというのがあったのだけど、この王妃を見たらその噂も仕方ないと思えてしまう。そんな王妃だけど子どもを五人も産んでるというのは驚きに値する。国王は王妃一筋で側妃やら妾はいないとのことなので色々と頑張ったんだろうね。
未だに男性陣が戻ってきていないようで、なんだか女子会のような食事会になった。話の殆どは私が旅に出てからのもので、和やかに食事は進んだ。一番興味を持たれたのは私が錬金術師としてニーナとアデラを弟子にしたというところだった。
今この国には錬金術師の数が少ないみたいで興味を持ったみたい。だけどまだまだ成長の途中だし年齢も低いので手出ししないようにお願いしておいた。代わりに私が作った特製の美容液をレシピ付きで譲渡したのが良かったのか手を出さないと約束してくれた。
ちなみに、食事が終わっても男性陣はひとりとして食堂にやって来ませんでした。翌日に聞いたらあのまま誰一人復活できずに一晩転がされていたようです。ああいった乱闘のような訓練? 鍛錬? ストレス発散? みたいなのはたまにあるとのことだ。
あそこまで酷いのはそうそう無いらしいけど、たまにでもああいった状況になるって何なんだろう。今後は是非私を巻き込まないでもらいたい。
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翌日、朝食の時には流石に復活を果たしたようで食堂に現れた。
「さすがはお祖母様の教え子ということだな。アルバートとスレイナのこと、改めてお願いしたい」
「任されるのは良いけど、今回のようなのは勘弁願いたいかな」
口調に関してはこれでいいと言われた。堅苦しいのは式典だけにしてほしいらしいのと、なぜだか私も身内判定されているようで訳がわからない。
ディーさんの従姉妹が私の師匠で、その師匠が実はこの国の建国に関わっていたり。その師匠の弟子であると同時に、ディーさんの教え子でついでに王妃のティアーナがディーさんの弟子で私の妹弟子になるとか。結構意味不明な間柄の結果そうなった。うん、意味がわからないよね。
それにプラスする感じで、アルバートとスレイナと一緒に黒龍と戦いに行くのも理由に含まれているとか。アルバートなんかは朝顔を合わせた時、私のことを師匠とか言ってくるし、この国の王族はやっぱりちょっとおかしいのかな? 他の国の王族には会ったことはないけど多分この国の王族とは違うよね。
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黒龍と戦うために地下へ向かうまでの間、みっちりとアルバートとスレイナを鍛えた。あとはたまにティアーナと手合わせしたりもした。改めて思ったけど才能がある人ってすごい。私が百年近く鍛錬して辿り着いた境地に数年で辿り着いてしまうのだから。
素手だけならティアーナと私の実力は私のほうが少し上かなって程度の差しかない。そんな私とティアーナの手合わせを見たからか、国王も混ざりたそうにしていたけど、そちらは相手にしなくて良いということだったので放っておいた。
そんな感じで数日過ぎてついに地下へと行く日となりました。片道で十日ほどかかるらしいのでその分の食料を渡された。王城の地下には神殿のような物が作られていて、そこから更に奥へ進むと天然の洞窟が続く。そしてその最奥に黒龍がいるのだとか。
神殿自体が王族とその関係者しか入れなくて、そこに歴代の王族の墓があるようだ。地下に広がる洞窟は天然の迷宮のようになっていて、ダンジョンとは違い魔物がいるわけではない。
ただただ歩き続けて、行くだけで十日ほどかかる。帰りは行きとは別に帰る手段があるので行けばわかるとだけ言われて送り出された。魔法で光を灯して三人でひたすら歩く、途中アルバートやスレイナの冒険者時代の話を聞いたり、私の森での話やここに来るまでの話をしながら暇をつぶした。
それで結局なぜ黒龍と戦いに行かないといけないのかだけど、火龍の時と同じといえばわかってもらえると思う。つまりは龍の試練黒龍バージョンってことだろう。それもこの国の王族限定だということだ。
建国のきっかけの邪龍と言われていたのがこの黒龍のことで、実際は討伐されてなかったってわけだ。詳しくは王家の秘事扱いなので教えてもらえなかったけど、後に建国王となる人から助力を請われて、当時既に魔の森に引きこもっていた師匠が参戦したようだ。
城下町の中央にはその当時関わっていた人物のブロンズ像が建てられているようだ。師匠のブロンズ像とか見てみたいからこの件が終わったら見に行こうと思う。
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出発から九日。予定より一日早く到着しました。私たちの目の前には、ぐーすか鼻提灯作って寝腐ってる黒龍がいる。
「…………」
「…………」
「とりあえず本気で一発殴っておく?」
「それは流石にやめておいたほうが、師匠の本気の一撃とか恐ろしくてどうなるかわかりませんので」
何度か声をかけたのだけど全く起きる気配がないので、軽く叩いてみたのだけど反応がない。どうしたものかなという感じだ。仕方がないので一旦食事でもしようかと調理道具を取り出して料理を始める。
ここまで来る途中もちゃんと料理して食事はしていた。一度に三食分作って収納ポシェットに保存してその都度食べていた。アルバートもスレイナも料理ができるのでそれぞれが作って持ち寄る感じだったけどね。各自料理を作りベルダから譲り受けたテーブルと椅子を取り出し料理を並べる。
「ふむ、うまそうじゃの、妾のも頼めないだろうか」
気がつけば寝ていたはずの黒龍の姿が見えなくなっていた。その代わりに目の前に現れたのは黒色のドレスを着た、床に届きそうなほど長い銀色の髪を持つ女性が立っていた。言わなくてもわかると思うけど、人化した黒龍なのだろう。
「ええ良いですよ。多めに作っていますし」
驚いているアルバートに対して、スレイナは戸惑いながらも了解の返事をしている。流石に食事につられて起きてくるとは思っていなかった。せっかく起きてきたわけだし食事をしながら話でもしましょうか。





