141話
「それで?ここからはどこに行く予定なんだ?」
「まずは封国に行こうと思う」
「やっぱりか」
「ああ。倒すのが無理でも、かの国ならば封印する為の魔法が見つかるかもしれないからな」
最初の予定通りってわけだ。
既にアルは帰ってしまっているが、この間の通話で顔合わせは済んでいる。
だからあっちに行っても無下にはされないはずだ。
だが俺の要望で、アルにはそれが出来そうな魔法は隠してもらうことにした。
探す期間もあるだろうが、その間に俺が全てを終わらせる。
期間で見れば、封国だけにいる時間は短い。
だが他の国にいる期間と、移動に使う時間。後は・・・
「・・・」(グッ
何故かどや顔でサムズアップしてるあのアホがいれば問題は無いだろう。
最低でも数か月は時間を稼いでくれるはずだ。
「それで?いつ出発するんだ?」
「・・・そうだな。アカリ」
「もう出れる」
「そうか。では、準備が出来たら、明日にでも行こうかな」
「分かった」
ではこちらも準備を済ませよう。
アカリ達にも食料やら荷物は渡すつもりで、そちらの準備はフィアが整えてくれた。
この世界で旅をする上で必要な物は、俺よりフィアの方が詳しいからな。
そして俺も・・・準備を終わらせよう。
場所は変わりサーベス内。
基地で製造したいくつかの武器も持ち込み、対海魔用のストレングスギアを完成させる。
『ドルフィンレーン』を改造機。その最終調整を終わらせる。
元々の『ドルフィンレーン』は、水中戦に特化した丸みを帯びた機体だ。
各種の性能としては、どちらかと言うと海中での機動性に重視した機体と言える。
要するに、攻撃面でも防御面でも目立ったところがないのだ。
そこを補うための『シャイク』という専用バイクがあるのだ。
改造において、改善したかったのはそこだ。
『シャイク』がないと性能が他の機体に劣る状態では、どうしても不安が残る。
特に今回相手にする海魔はかなり巨大な敵らしい。
それを相手取るなら、単機でも戦えた方が良いと思ったのだ。
そこでまずは『ドルフィンレーン』の純粋な性能強化を目指した。
一番最初に手を加えたのは水中での機動力を決める部分。
やったことは単純・・・機体を削った。
これは防御面での不安を残すことになるが、機動力を上げるという点ではこれ以上は無い。
だが基本的な形状は変えない。水中ではこの丸みを帯びた形が一番いいのだ。
直線番長にしたいなら鋭角でもいいが。
これだけで機動力は2割上昇。
そこから更にフィンの形状を変えて1割。合計で3割の機動力上昇に成功した。
代償として装甲は1割ほど減った。
よりスマートになった『ドルフィンレーン』
元々はかわいらしさすらあった機体の面影は、限界まで削られた影響で大分印象が変わった。
お次は火力面。
武装を持たせればそれだけで解決する点ではある。
その為の基地製造の武器だ。実はサーベスの中では作れないタイプだった。
ハープーンガンとかの武器は種類はそのままで性能だけ上昇。
基地で作ったのは魚雷系だ。それも戦略兵器クラスの。
「装填数僅か二発。一発でレイドボスに致命傷を与えるレベルの凶悪兵器」
使用場所は水中のみと言う制限があるからこその単純に火力が高いタイプ。
『アトミックサブマリン』
所謂短期間で膨大な熱量を増幅させて、衝撃を相手に叩き込む。
もちろん核兵器ではない。ゲーム特有の謎理論で構築されたトンデモ兵器だ。
しかも衝撃を出す方向に指向性を持たせられるから回避もしにくい。
ぶっちゃけ水中での戦闘が面倒だっていうランナーたちの要望に運営が答えた結果だったりする。
これ一発あれば大体の戦闘は終わるからな。俺みたいにこういう兵器を使いたくないっていうこだわり・・・もとい縛りプレイをしてる奴じゃない限りは持ってる。
態々基地で作ったのはこのためだ。危険物扱いなので、基地みたいな施設じゃないと出来なかったのだ。
持ってたら作る必要ないし、サーベスで作れるなら基地ではやらなかった。
アカリが聞いた製造の音ってのはこれの音だ。これだけ特殊な音がするからな。
「んで、こいつを20本程作ってみたんだけどどうだろうな」
『過剰戦力かと』
「だよなぁ」
だってこれだけあったらリアも倒せるもん。
水中に引きずり込めればって前提があるけどな。
だけどそれだけのポテンシャルがあるのだ。
単発火力では最高峰ではある・・・水中でしか使えないけど。
あ、もちろんクリーンな兵器だからな?
環境に悪影響は与えないのは既に確認済みだ。
単純な火力はこれだけで十分だろう。
だが一応他の武器も作ってある。こちらはサーベス製。
『セイレーン』と『赤星』
『セイレーン』は魔法的な要素を含んだ特殊兵器。
『赤星』は新しく湧いてきたアイディアを元に製造した。
『赤星』はハープーンガンだ。
今までのは特に名前も無い普遍的な物だった。
今回の『赤星』は撃つと赤い光を放つ。着弾と同時に爆発し、それがまるで流星の様だと思ったのだ。
火力自体は普通。だがその代わり連射性が高い。デカい相手でもかなりの成果を出せるだろう。
そして目玉の『セイレーン』
こちらは魔力に干渉する・・・どちらかというと妨害攻撃兵器だ。
ノーツの能力からインスピレーションを受け、魔力を音で表現することに成功。
音ように波形に魔力が広がり、魔法の使用を阻害するのだ。
時間が経てば経つほど妨害率は高くなる。
実験に付き合ってくれたノーツ曰く。
「こんなにも不快な音始めて聞いた・・・」
と言ってクロウに抱き着いた程度にはやばい音らしい。
アルにも見てもらったが・・・
「よ、よくこんな邪悪な物を・・・」
と、ドン引きされた。
それほど魔法を使う存在に沿っては最悪の代物に仕上がったらしい。
まぁこれもまだ水中でしか使えない。
音が水中でないと上手く伝わらないのだ。
魔力の変換が上手く行かず、ちゃんと伝えられるようにするのには水が必須だった。
それでも水の精霊のアルは非常に嫌がっていたが。
「『シャイク』にアトミック積むか」
『使用後の回収が難しくなります』
「いいだろ。どうせ線でつないで遠隔爆撃の予定だし」
正直これでケリがつけばいいなとか思ってる。
『シャイク』に『アトミックサブマリン』を積んだミサイルポッドを牽引させ、射程内にいれたら発射。
どれだけ着弾するかは賭けになるが、直撃しなくても十分なダメージが期待できる。
残りの武器はそれで倒せなかった時用だ。
特に『セイレーン』での妨害には非常に期待している。
「さてと。じゃあ残りは機体本体の名前を決めないとな」
『基本が『ドルフィンレーン』なので、変更の意味は無いかと』
「それでもほとんど別物だからなぁ」
確かに基本スペックは『ドルフィンレーン』の延長線上だ。
だが明らかに運用方法が変わっている。
今のままで見るなら、最大瞬間火力を叩き込んで離脱するなんて戦法も出来る。
それもほぼノーリスクでだ。
この厄介さは水中戦限定とは言え、俺の他の機体の戦闘力を大きく超えている。
やたらと使えない『グランデス』より良いんじゃないか?
『単純に戦闘を終わらすだけなら『グランデス』を超えることはありません』
「どんだけだあの化け物機体」
周囲への悪影響を考えなければ最強だってさ。
知ってたけど、ここまでなりふり構わない機体でも超えられないとかどうなってんだ。
「ちなみに地上での似たような危険物積んだ場合どうなる?」
『『グランデス』に軍配が上がります』
「どんだけだ」
キクヒメの評価的には、どれだけ頑張っても消耗品である危険物兵器では『グランデス』を超えられないらしい。
まぁあっちは消費する物ないし、大体攻撃範囲的にも勝ってるものが多い。
何て言うか・・・バグ機体の面目躍如というやつか。
「この世界で使うことあるのか・・・?」
『現状では、ダイジュナ様やリア様クラスとの戦闘時に検討されます』
「それでも確定じゃなくて検討か。それ上か?」
『汎用性や周辺地域への被害を考えた場合で変わります』
考えた場合は『アビスキュイラス』や『エアロード』以下。
無い場合に限って初めて使用が現実的な物になるんだとか。
「こっわ」
『機体の名称変更はするのでしょうか』
「ああそうだった」
とは言っても既に決まってたりするのだ。
元から機体の名前は最初から決めて作り始めるしな。
「『オルカ・ラーゼン』」
『機体名称変更。『ドルフィンレーン』から『オルカ・ラーゼン』に変更。
戦闘評価再考・・・特殊環境下での戦闘時に限り、戦闘評価A++』
「お、そこまで行ったか」
『特殊武装である『セイレーン』の評価を高めに設定いたしました。
現世界での効果を考えれば、水中でも十分かと』
「やっぱり魔法そのものを妨害出来るのはえぐいってことか」
これだけでも最悪封殺が可能になりかねない。
相手の体が大きいって点だけに注意すればいいだけだからな。
「んじゃ調整すっか。シミュレーター設定を水中にしろ」
『ランナー搭乗開始。シミュレーター起動。
仮想敵を『海上要塞アトランティス』に設定』
「・・・さりげなくまたアホみたいな敵を設定しやがって」
それも一人で戦うタイプではないなぁ・・・
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