#19 ロリっ子が少しこの世界の事を知る話。
キャンドルさんの家に泊まり込むこと二十日目。
……翻訳って超大変。六冊で終わりかと思ったら追加で十二冊。
残り五冊。
大変だったのは小説系の物語だ。意訳とか、そういうの。
異世界転生モノの小説が出てきた時はちょっとふふっとなってしまったな。
「おーい。アイリスちゃーん。お夕飯出来たよー」
一階から声が。
「はーい! 今行きますー!」
今日の夕飯は豪勢なハンバーグだった。パンと、ハンバーグと、付け合せのポテト。
いやあ、キャンドルさんは料理の腕が良い。超美味い。布団もふかふかだし、なんて素晴らしい労働環境なのだろう。日本の暗黒企業群とは比べるのが失礼な位だろうなぁ。
私、日本で働いたこと無いけど。
「それにしても、あれだけ翻訳するだけで二百万フェルって、そんなに貰って良いんですか?」
ハムっとハンバーグを口に入れる前に少し聞いてみる。
キャンドルさんはクイっとメガネを直して、答えた。
「神象形文字ってのはね、解読は愚か、まだ全種が判明してないんだよ。文法も、読み方さえも、全く謎。極東の島国には少し読める程度の人が居るらしいけどね。でも、その人たちも読めるだけで意味まではサッパリらしい」
へぇ……じゃなくて、お金の出所は?
「だから僕達の様な神象形を研究する考古学者は国から補助金が出るんだよ。まあ、成果が出なきゃあ減らされるか打ち切られるんだけど」
苦笑いしながら言うキャンドルさん。でも、二百万も出してくれるなんて、それなりの成果は出してるんだろうなぁ。
……あれ? 今東の島国って言ったか?
「すいません。その東の島国について教えてくれますか?」
「ああ、大和道帝国かい? 僕も一度だけ行ったんだけどね。あそこは帝国主義だけど良い国だよ。魚が旨いんだ。新鮮な海魚を食べられるのは島国の特権だよね」
くつくつと笑うキャンドルさん。大和道帝国……行ってみたいなぁ。
「でも、神象形が読める君なら戦艦に行くのも良いかもしれない」
「……戦艦?」
「うん。戦艦リバルハーツ。外見は巨大な戦艦だけどね。中身は巨大な図書館なんだ。だから僕達考古学者の間では『図書艦』なんて呼ばれてるよ。まあ、あそこはキチンとした学者かギルドの高ランク冒険者、王族や貴族しか入れないんだけど。なんたって天下のギルドグループの所有物だからね」
リバルハーツ……そこにも行ってみたいなぁ。
ご馳走様でした。さて、翻訳、翻訳!




