#20 ロリっ子がいよいよ迷宮攻略に本腰を入れる話。
「そしてルーガーは死んだ。栄誉の死だった。女神達はルーガーを祝福したが、魔王の呪いを一身に浴びたルーガーがその瞼を開ける事は無かった。パリストンは国へ帰り、ルーガーの墓を立てた。それはクレアの墓の隣だった……っと」
なんだ。結局このオチか。あんまりストンとしない終わり方だったなぁ。
さて、次の本は……
ん?
手応えが無い。何度も探っても掴むのは空ばかり。
無い。本が無い。つまり?
終わり?
「お、お、お、終わったぁー!?」
ついにこの時が来たか。キャンドルさんと暮らすこと六十三日。いやあ、辞書は強敵でしたね。
「本当かい!? アイリスちゃん!?」
バッターンとドアが吹き飛ぶ程大きな音を立て部屋に入るキャンドルさん。
パラパラと訳した本を流し読みすると、にっこりと微笑んだ。
「うん。良い出来だ! 字も丁寧で読み易い! 本当に良くやってくれたよ。あ、待っててね。今報酬を……」
キャンドルさんがポンと札束をくれる。
「はい。報酬。二百万フェルと五十万フェルだよ。五十万フェルはボーナスだ。貰ってくれ」
「え、で、でも……」
「受け取ってくれ。大丈夫。うちにはまだ蓄えがあるから」
じゃあ、ありがたく貰おう。
本当に、キャンドルさんにはお世話になった。有難い。
玄関から出る時、硬く握手をした。涙が出そうになったが必死で堪えた。
……でも、出てしまった。それはきっと幼女の体だからで、涙腺が緩かったからだろう。
ふと顔を上げると、キャンドルさんも泣いていた。私はもっと泣いてしまった……
二ヶ月ぶりの街だ。そういえば二ヶ月ぶりだ。
よくよく考えれば私、二ヶ月も缶詰になってたんだな。感慨深い。
さて、資金は潤沢にできた。次は装備だ。あと普通の服も欲しい。今日までは安定していたからよかったものの、流石に白ワンピでサバイバルは出来ない。
あとキャンプセットだ。よし。買い物だ!
魔導具店。
「あの、杖を探してるんですが」
店主のおばあさんが出て来た。
「あぁい? 最近はこんなちっこい子供まで魔法を使うのかね。全く、魔法なんて碌でもない……」
じゃあなんであんた魔導具店やってるんだ……
中々良い杖を買った。私の身長の半分より長い位の。先っちょに赤い魔石が付いてる。
……結構高かった。
ちょっと通りすがりの人に回復を掛けてみたけど、魔力の滑らかさが段違いだった。素晴らしい。これなら獄炎も……いや、まだ止めておこう。
服屋。
白のワンピをもう一着購入。それと長袖のジャケットとちゃんとしたズボン。これで山道も安心だね。
アウトドア用品店みたいな店。
テントセット一式と、魔力で熱を出すコンロ、食器を購入。
それと方位磁針。店に貼ってあった地図を見ると、この街はヒマシというらしい。
で、ヒマシから真西にずーーーっと行った所にアルートルという街があるみたい。国の端っこだけど活気があって、話によるとコロシアムとかもあるみたい。そこが十三大大迷宮の一つに近いみたい。
もっと西に行くとデトリアという国があるみたい。どうも、最近力をつけてきた大国で、獣人や亜人がわんさか居るとか。
そういえばこの街も亜人とか獣人は居るっちゃいるけど数は全然少ないよなぁ。なんでだろ?
市場。
食料も買い込もう。私はアイテムボックスがあるから食べ物が腐ったりする心配もないし、思いっきり買い込んだ。
そういえばと、水筒もありったけ買い、水汲み場で水筒を全て満杯にする。
どうやらキチンと水は容器に入れないとアイテムボックスの中がびしゃびしゃになるみたい。水ってフォルダを作っても良いけど、それだと使い辛いしね。
公衆トイレで着替え、防具をつける。ヴェネチカのホルダーを胸元に固定する。これでいつでも取り出せる。
杖は持ちっぱなしで良いよね。なんかあったら直ぐアイテムボックス。で、ナイフ。
よし。完璧。
ヒマシの外壁にある門を出る時、ヴェネチカを握り締め、覚悟を決める。
腰まであった薄緑の髪を肩程の長さまで切り落とす。
覚悟は決まった。私は冒険者。
いざ、西へ。待ってろ、アルートル!




