ひょんひょろ侍〖戦国編〗ひょんひょろのボンヤリ過去話(3)
お久しぶりです(* ̄∇ ̄*)
一体いつになったら肝心の依頼話がはじまるのか。。。
奇知左衛門は、手を揉み揉み、気も揉み揉みしつつ。じょろ様こと《ひょんひょろ》の、未だにぼんやりとしてどこにあるのかよく分からない存在感の口が動くのを、今か今かと待って居た。
〘左様マジマジと見つめられては敵いません〙
「こ、これは!失礼いたし申した!」
茫洋とした。そう、いつもの無表情で茫洋とした佇まいのままのひょんひょろ《じょろ様》は左手を右手にそっと重ねて、奇知左衛門がまんじりともせず自信を眺め見るのをやんわりと制止した。
奇知左衛門は、あわてた。
あわてて、額を擦るように平伏して「平に平に」と許しをついつい請うてしまっていた。
なんだろう。
〘これこれ〙
発言したあと、いつもの様にボンヤリしていたじょろ様は、奇知左衛門の取った突然の行動に彼らしくなく面食らったらしい。
右手をユラユラ上下に振り、首をあげるように促した。
「も、申し訳ござらん。取り乱しま……」
〘人集めですよ〙
「は?え?ひ、ひとあつめ、で、ござるか?」
いきなり問いかけの答えの端くれを突き出され、奇知左衛門は一瞬、悩乱した。
〘左様にございます。兼寿さまと御社さまに申し付かったのは、此の国と茅野家の御為に役立つ人。役立たない人をそれとなく見出すことにございました〙
それからじょろ様は、少しだけ遠くを望んでいるような面持ちを為され、やがて左手を覆うように右手で包み込んで、またしても揉むような仕草をしてから顎を上へと持ち上げ云った。
「意味がよく分かりかねますが。それは、どういった仕事にございまするか?」
奇知左衛門は首を傾げながら、如何にも判らぬと云った風情を体中から醸し出しつつ再び尋ねた。
〘なに、難しい話ではございません。此の国を御社様が統一成された暁には、いえ、統一成されるについて必要な人材を探し御社さまや兼寿さまに引き合わせ、必要ではない人材はお調べした上で報告いたしまして、あわせて参爺を交えた談合にて茅野家の総意を決しまする。その人選びの一端を預からされた。それだけにございますよ〙
じょろ様は、じょろ様らしくもなく、、、これを云うのは本日何度目であろうかな?。。件の、スラスラとした物言いでありはするものの、実のところ拙者の問いかけに対してろくすっぽ明快な答えを云うでもなく、真意の話をチラチラ覗かせるだけ覗かせて、内実についてはのらりくらりとはぐらかせるばかり。。なんせさっきじょろ様は、主二人の依頼を【無理難題】とか申しておったくせに、この説明の仕方なのだから。
うん?もしかしたら。。
いや、よくよく思い出してみれば【じょろ様】という摩訶不思議な御仁は、どこにいっても誰と会っても、自らは決して事柄の肝心の中身については一切語らず、常に何かしらの薄絹をかけてはぐらかして誤魔化しては、聞く相手に何かしらの動きをさせようと仕組んでいるのではないか?
もちろん、主の飯井槻さまに対しては恐らく誠実に接しておられるだろう。。いやはや、どうであろうか。
茅野家の端っこで余り飯を食んでいる奇知左衛門には到底知る由もないことながら、そんなじょろ様の、なんとも喰えぬ感じを彼はすこぶる好ましく思った。
むろん、これは奇知左衛門の脳内の妄想に過ぎないと断じられれば、「はあ、まあ左様ですな。。」としか応えようがない想定に過ぎないのだが、なぜだか自信を以てそうに違いない。と、思い込めた。
〘おや、如何なされました?御白いことにでも気付かれましたかな?〙
そして奇知左衛門は今、自分がじょろ様になにやら試されていることにも、気付かされたのだ。
では、またー!




