3-extra
☆
本当はずっと、眩しい光を一身に浴びる主人公みたいになりたかった。
だけど、物心付いたときに俺の周りにいたのは、ロクでもない大人たちばかりだったんだ。暇さえあれば酒をかっくらっているような金も教養も仕事もない連中で、能があるといえば盗むことくらいで。
だから彼らは、親の顔も知らない孤児の俺に、文字の読み方の代わりに盗みを教えた。子分みたいに扱って、酒や金目のものを盗ってこさせた。
彼らは殺しや行き過ぎた暴力には関わらない臆病者だったが、それでも到底お天道様に顔向けできるような生活ではなかった。
そんな環境の中で小突かれたり蹴飛ばされたりしながら何とか大人になるまで生き延びてきたら、気づけば自分も大体そんな感じの人間になっていた。
「こんなはずじゃねえ! だって、俺は、こんなにかっこいいのに……!」
とは、何度も思った。
けれど俺自身も能があるといえば、顔がいいこと以外では彼らと同じく盗むことだけで、自分の力では到底この泥沼から抜け出せそうになかった。
そんな時、俺の前に現れたのがミシェルだった。
俺には彼女の奪われたものを、ほんの一部だけだが、力づくで取り返す力があった。
彼女には盗みしか能のない俺を、上辺だけでも違う何かに変えられる力があった。
この出会いは、運命だった。
俺という存在は、今日この日彼女に出会うために生まれてきたんだと言われても信じることが出来た。
彼女は日陰者として生きることを宿命づけられた俺の人生に奇跡みたいに差し込んで来た光だった。
だから今度は、俺が彼女にとっての光になるんだ。