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【怪盗リュミエール、死す!】
悪夢のような幕引きだった。
昨夜、予告状通り仕立て屋「プール・トゥジュール」に現れた怪盗リュミエール。いつものごとく華麗な手口で配備された警察官を欺くと、お目当ての『陽光のかけら』を奪取した。
ここまではよかった。
だが、現場で警備に当たっていたパリ警視庁コランタン警部は、執念深かった。姑息な手段で壁際に怪盗を追い詰めると、逃げ場のない怪盗へと投げナイフを放った。
その技術で若くして警部にまで成り上がった男のナイフは、標的を逃がさない。
コランタン警部の放ったナイフは、確かに怪盗リュミエールの心臓を貫いた。
力を失った怪盗の身体は、それでもなお逃げ出そうとした窓の外へと落ちて行く。
その高さ、五階。
さしもの怪盗も、ひとたまりもないだろう。
こうしてパリの街は強く輝く一つの光を失うこととなった。
この結果に、怪盗リュミエールにまつわる一連の事件の責任者として長く怪盗を追ってきたペイラード警部は、「姑息な小悪党に随分手を焼かされてきたが、結果良ければすべて良し。これからもこの経験を生かし警部としての責務を果たして行きたい」とし、近頃警視庁内に流れる降格人事の噂を否定した。
また記者からは「逮捕のためとは言え、犯人を死にまで追いやる必要が本当にあったのか?」との質問も上がったが、当のコランタン警部は終始無言を貫き、居合わせた記者陣からは強い非難の声が上がった。
☆
「コランタン警部、怪盗リュミエール、殺しちゃったんですか!?」
コランタンが出勤するなり、彼のデスクにすっ飛んできた部下は素っ頓狂な声を上げた。その手に掲げられた今朝の新聞には【怪盗リュミエール、死す!】という見出しと、四肢がバラバラに吹っ飛んだ怪盗リュミエールの挿絵が一面にでかでかと踊っている。
コランタンは何でもない顔で机に座り、いつもどおりの、冷酷にすら感じさせるほど極めて冷静な口調で言った。
「私としては、善処したつもりだ。だが、こういう結果になった。それだけのことだ」
部下が困惑するように眉根を下げる。
「で、でも、怪盗リュミエールは『ソレイユ事件』の重要な証拠を握っている可能性が高いって言ったの、コランタン警部でしょう? 殺しちゃったら情報もクソもないじゃないですか!?」
「それはそうだろうな」
おもむろに椅子から立ち上がるコランタンは、まだなにか言いたげな部下を手で制してから告げた。
「少し出てくる。君は前に言っておいた資料集めを頼む。いつも通り、くれぐれも他部署の人間には感づかれれないように」
「あっ、ちょっと警部!? コランタン警部――」
追いすがるような部下の声は、コランタンが彼にしては珍しくやや乱暴に閉じたドアの向こうに掻き消えた。




