不安な日々(2)
早朝、私は大阪に向かった。
爽やかな風が朝もやの中に揺れ、私の心は、何故か 張り詰めていた。
梅田に着いたのは朝もやもすっかり晴れ、通勤客の人混みに流されるように私は電車を降りた。
伊藤さんとは、駅構内にある本屋さんで待ち合わせ。朝のオープンしたばかりの本屋には通勤客の人混みから逃れるように駆け込んだ。
「ゆきちゃん、早かったね」背後から伊藤さんの声が聞こえた。
「おはようございます。始発に乗ってきましたので…」
「じゃ、行こうか」
「何処へ?」
伊藤さんは、ニッコリと微笑んで
「これから、実家へ行こうと思ってるよ。ゆきちゃんを紹介したいんだ」
「えっ、私を…私…何の準備もしていないし、今日はこんなかっこうだし・・・」
「何も準備なんて要らないよ。格好って、ゆきちゃんは今日は一段と素敵でよ…ね、」
「でも…」
伊藤さんは、そっと 私を抱き寄せ背中を押すように本屋を後にした。
パーキング停めている伊藤さんの車は紛れもなくあのZ君だ。
阿波座から環状線乗り、私たちを乗せたZ君は、心地良く名神高速を名古屋へと走り出した。
小一時間ほど経っただろうか、伊藤さんは、突然に思いもよらない事を私に告げたのだ。
それは、プロポーズとも執れるものだった。
「ゆきちゃん、言っておきたい事があるんだけど」
「はい、何でしょう?」
「僕はね、道楽な息子でね。これまで自分のやりたい事ばかりやっていたんだ。でも、親父が亡くなった以上は、もう、我儘言ってられなくてね。年内には仕事を辞めるつもりなんだ」
「名古屋へ戻られるの?」
「そうしょうと思ってる。ゆきちゃん、一緒に来てくれるか?」
伊藤さんは、私を見た。
多分、私の返事を待ってる。
そろそろ、返事をしなくてはと思ってはいたが、状況が変わってしまっている。
どうしたらいいの。
流されるまいい加減な返事もしたくない。
「お仕事辞めて、どうされるの?」
「ゆきちゃんには、まだ言っていなかったが…実は、親父は小さな会社を経営しているんだ」
「お父さんはサラリーマンだと…」
「親父はサラリーマンだよ。社長だが一社員のように駆けずり回って一代を築いた男さ。その会社を守ってやらなきゃならないと今更ながら気づいたんだ。親父が居なくなってから…情けないね」
「ただ、これから何が待ち受けているか分からない。ゆきちゃんに側にいて欲しいんだ」
伊藤さんの決意ともいえる岐路私も共に立ちすくんでいる、そんな気がした。




