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帰国の途に(2)

帰国してから二日目、昼前伊藤さんから電話があった。



母が取り次いでくれたのだが、なんて説明したんだろう。



確かに、伊藤さんから電話だと部屋にいた私を呼んだのだ。




伊藤さんは、二日間だけ日本に滞在しただけで 明日からヨーロッパへ再び出張だと言った。




強行なスケジュールは毎度の事だと笑っていたが、好きでなった職業ではないとも言っていたにしては、好きじゃなければ勤まらない大変な職業だと私は思った。




「ゆきちゃん、23日には帰ってくるからね」




「はい、気をつけて行ってらっしゃい」




電話を切るなり、案の定 母の視線を感じた。




「ねっ、伊藤さんって この前の添乗員さんなんだってね」




「そうだけど‥母さん、よく知ってるわね」




「伊藤さんって聞き覚えがないからさ、どちらの伊藤さんかと訊ねたんだよ。そしたら、先日の添乗員だと言われてから、どこかで聞いた声だって思い出してね」




「そう!流石ね、母さん」



「その添乗員さんが、どうしたの?」




「うん、旅行中の写真を送って欲しいって。社内報で使うんだって」




「じゃあ、早く現像しておかないとね」




「そうだね!!ねっ、母さん。あの伊藤さんって どう思った?」




「どう思ったって!可愛らしい親切そうな人みたいだよね。なんで?」




「別に」




「何か、あったのかい」



母は、いつも 察しが早い。

と、言うか、私の心を読み取ってしまう。


見透かされているのだろうけど。



きっと、伊藤さんと何かあったことを察したことだろう。


しかし、それ以上のことは聞かなかった。



それから、三日目 夏休みも終わり 新学期が始まった。




今日の講義は午後からだけど 旅行中の写真が出来上がったので早めに行って整理しょうと五人で待ち合わせた。



教室で旅行先での話題で盛り上がっていた時だった。



旅行へ行かなかったゼミ仲間の妙ちゃんが教室に入ってきた。




「ほぉーい!お久!元気だった?」




「妙子、久し振りぃ〜夏休み バイトやってたの?」



「うん!暫く、徳島に帰ってたけど〜10日ほど前に戻ってバイトしてた」



「忙しかったんだね!」




「うん!あっ、ヨーロッパどうだった?楽しかったみたいじゃん?ミハリちゃんが、大暴れで〜」



妙子は、誰に何を聞いたのか、ミハリが酔っぱらった夜の事を知っているようだ。



「えぇー!!誰に聞いたの〜」


ミハリが訊ねた。



「昨晩、バイト先に瑠璃さまたちが来てさ、旅行でのことを何だかんだって〜話して言ったよ。添乗員が必要以上にベタベタしてきて嫌だったとかさ」



妙子の言葉に一同が驚いた。



「添乗員がって、それっ、誰が言ったの?」


淳がきつい口調で言った。


「もちろん、お局瑠璃だよ」



「何言ってんの!!自分の方がベタベタしていた癖に!!ゆきちゃん、気にしちゃアカンよ」


淳が言うと、ヒラメが続いて



「めちゃ、えぇ添乗員さんやったわ〜なぁ、キョメ」


キョメにも同意を求めている。




「そうそう!最後の最後まで その添乗員さんを振り回していたのは瑠璃なんだからね」



「なんだか、旅行から帰って来てるのに自宅まで電話してきて、しつこいだの、あたしに気があるんじゃない!なんて言ってたよ」




「バカじゃないの!あのお局!!自意識過剰だね。あんな化粧お化け、誰が好きになるかよ!!」


ミハリが不機嫌そうに私を庇って言っている。




「好きなように言わせておけばいいよ。そりゃ、帰りの解散前に自分だけ とっとと帰っちゃったんだから心配もするでしょうよ。電話して当たり前じゃない」


私が、そう言うと、ミハリが私の顔を覗き込んで言った。



「ねぇー、その通りだよ!!ところで、ゆきちゃんには あれから 伊藤さんから電話あった?」




「えっ、何 何!?」


妙子が、何かを感じ取ったのか耳を傾けてきた。



「三日前にあったよ。今から金蘭を連れて行くって!社内報に使いたいから旅行中の写真を送って欲しいって!」



「うぅ〜ん、それだけ?」

淳が ニヤニヤしながら聞いてきた。




「それだけ!23日に戻るって言ってたから みんなで写真を持って行こうか」





「ゆきちゃんがいいなら、みんなで行こうか」





「ねっ、ゆきちゃんと添乗員さんが何なの?」



妙子が我慢しきれなくなって聞いたけど 誰も口を割らない。


言わなくとも、もう 解っているだろうけど 妙子には 話しておいた方がいいかもしれない。



それにしても、お局瑠璃の言いたい放題では少々 伊藤さんも可哀想に思った。





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