第1話 こんにちは異世界
本日から新作を投稿する。私、万貴三三と申します
既知の方も初見の方もよろしくお願い致します
赤子の鳴き声が聞こえる
気が付けば白い空間にいた
何の臭いもなく、音も無い
何も無いというには明るく、まるで映画に出てくる研究室のような白い空間
「どこ・・・ここ・・・?」
そこに少年、白山健司はいた
「あっれぇ・・・俺何でここにいるの・・・?」
腕を組み少し前の記憶を思い出そうとするが、何も思い出せない
何か心残りがあった気がする
胸の奥に引っ掛かる想いはあるが、それすらもわからない
だが、だからと言って不安という訳でもなかった
逆に、胸の内からは清々しいまでに何も感じられないのだ
「あら、目が覚めたのね」
「うわっ!?」
唐突に背後から声をかけられ振り返ると、そこにいたのは金髪蒼眼の美しい女性だった
「ビックリした・・・あんた誰・・・」
バクバクと鳴る心臓を抑えながら尋ねると、女性は吊り目を細めコロコロと笑う
「いきなり不敬ね、まぁ良いわ・・・私はデアセクって言うの、まぁ女神よ、女神」
「はぁ・・・女神・・・様・・・?」
いきなり女神と言われてもと、健司は困惑してしまう
気が付いたら白い空間にいて、女神と名乗る女性が目の前にいる
状況的にはコミックスでよくある状況ではあるが、いったいこの不可思議な場所は何処でいったい何なのか
「ここはまぁ・・・あの世的な場所よ、あなた死んだの」
「ナチュラルに心読むなよ」
「良いじゃない、神なんだから」
その言葉に思わず眉を顰めた
まさか本当に女神なのかと、半信半疑だった心の天秤が揺れ動き信用へと傾いていく
「じゃあさ女神様、何で俺はここにいる訳?」
正直ここにきてデアセクの言葉を聞くまでは、あの世や幽霊という存在を健司はあまり信じていなかった
だからこそ、何故自身がここに呼ばれたのか見当も付かないのだ
よくある話であれば善行を行ったから異世界転生の為に、という理由ではあるが、生憎トラックに轢かれた記憶も無い
しかし、そんな彼の心を読んでかデアセクは「そんな有りがちな理由じゃ無いわよ」とだけ不満げに呟く
「まぁ異世界転生はしてもらうんだけど、あんたを呼んだのはただの好奇心と成り行き、そこにあんたが居たから呼んだだけよ」
「つまりは偶々と・・・」
瞼を動かしながら恐る恐る尋ねると、軽快な声で「んー、そうね」と笑う
「まぁ偶々でも良いじゃない、折角の死者蘇生の機会なんだし楽しまないと」
「死者蘇生ってそんなカードゲームみたいな・・・」
何だか適当な雰囲気を感じる態度に、思わず呆れてしまう
だが、先ほど聞こえた気になる単語にそんな呆れも吹き飛ぶ
「え、死者蘇生?」
「そう死者蘇生、あなた復活出来るの・・・まぁ所謂異世界転生ってやつ?」
一体自分はいつの間に死んだのか、そもそも偶々と言うにはあまりにも幸運過ぎると思ったが、また心を読んだのか「なんか私もやってみたかったのよねぇ」とだけ彼女は答えた
「そんな理由・・・?」
「そうよ、折角デアテラの代行が出来てるんだし、これくらい経験しとかないとね」
いったい何を言っているのかサッパリだが、漫画や小説のような体験を出来るのであれば何でも良いと心が踊る
「とりあえず早く送ってくれよ」
急かすように言うと、「そう慌てない・・・えっと・・・」とデアセクは言いながら人差し指を立てクルクルと回す
まるで何かを探すようにあれでも無いこれでも無いと唸り、その度にキラキラと光が舞う
「あ、あったあったこれこれ」
そう呟くと、「えい」と言い健司に向けて指を向けた
思わず彼女の行動に身構えたのだが
「・・・何やったの?」
何も起こらない
というよりも、何をしたのかわからないというのが実情ではあった
「今あんたに女神様のご加護を授けたのよ、ひとつは過去を見に行ける能力」
「タイムリープ能力ってことか!」
「まぁそんな感じ」
その言葉に身を乗り出す
過去に行ける能力などチート中のチート、そんな能力を貰えたことに、「おおっ」と感嘆の息を漏らし、自身の手へと目を向ける
「スゲェな・・・」
「あともうひとつは重力魔法よ」
「・・・マジで?」
タイムリープ能力だけでなくそんなチートまで貰えるのかと目を見開く
「こんなの・・・無敵じゃん・・・!」
「でしょ? この能力さえあったらあなたは英雄にも、魔王にだってなれるかもね」
無邪気にはしゃぐ彼へとデアセクは妖艶な笑みを浮かべる
「それで・・・"忘れ物"は無い?」
「無い無い! ほら、早く行かせてくれよ!」
「良いわよ」
「そぉれ」とデアセクが腕を振るうと、健司の前に光が集まる
それは何処までも光り輝くゲートなのだと、ここを潜れば異世界に行けるのだと、不思議と確信を抱かせた
「それじゃ、いってらっしゃーい」
「おう、行ってきます!」
ヒラヒラと手を振り見送るデアセクへと手を振り返し健司は意気揚々と光へと足を踏み入れていった
ふと脳裏に一瞬浮かんだ元の世界の暮らしや、両親や友達の事など気にする事なく
ただ無邪気に新しい世界での暮らしに胸を躍らせた
「行っちゃったか」
健司が白いヒカリの中へと消えていくのを見送るとデアセクは小さく欠伸をして伸びをする
「あの子がどんな暮らしをするのか・・・暫くは良い暇つぶしが出来そうね」
それだけ言うと懐に手を入れて、何かを取り出す
白いピチピチと動く人型
デアセクの腕を叩き、健司が消えた光へと必死になって手を伸ばすそれを暫し見つめ微笑む
「愛されてるのね、あなた」
愛おしそうに指先で顔を撫で弄ぶと
大きく口を開き、中へと放り投げた
最初は口の中で丹念に転がす
その度に暴れ外に出ようとする人型を吸い込むと呑み込む
コクリと喉が動き、人型が身体の中へとつるりと滑り落ちていく
胸の奥から響く断末魔のような感覚を楽しみながら、口元を孤の字に曲げて一言だけ呟いた
「あまぁい」
クスクスと嗤い、育み、育まれてきた甘い感情を貪る
赤子の鳴き声は、もう聞こえない
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光の中へと身体を沈めた後、健司は暗く染まった視界の中で音を聞いた
木々の揺れる音、鳥の囀り
そうして次第に光が現れ溢れていく
「うわぁ・・・」
風が頬を流れていく
光が晴れた時、視界の先に現れたのは雄大な自然だった
人の手がまだ入っていない広い平原に青々と萌える木々達
風が吹くたびに揺れ動きサァッと波打つような音が耳をくすぐる
それは異世界、というよりも外国に来たという感覚が勝る光景ではあったが、自分の知らない場所に来た
ただそれだけでも健司の胸は高鳴っていく
「スゲェ・・・ほんとにきたんだ異世界・・・」
感動のまま一歩を進んでみれば固い地面と靴底をなぞるジャリジャリとした土の感触
隣にある小高い崖へと手を押し当てると、突き出た石の痛みが走る
これが夢では無いのだと、健司に実感させた
「よし・・・よし! やるぞぉ!!」
やると言っても目的地は無い
だが、この世界に来たからにはチート能力で自由気ままに生きるのだと、気合を入れると大きく一歩を踏み出した
「え・・・?」
そんな時であった
「わ、わっ! ごめんごめん退いてぇぇ!」
彼の頭上に影が差し、可憐な悲鳴が響いたのは
顔を上に向けた時、そこにあったのは硬いゴム質の靴裏だった
「本当にごめんね! 怪我してない!?」
顔に衝撃が走った後、次に健司が感じたのは腹に置かれた柔らかな手のひらの感触だった
次いで聞こえてきた少女の声にゆっくりと手を上げるとサムズアップする
「だ、大丈夫」
「良かった・・・立てる?」
「お、おう、立て・・・」
そう言って少女へと顔を向けた時、視界に映る銀の糸に健司は思わず固まってしまう
彼の様子を少女は首を傾げ不思議そうに見つめるが、彼の内心はそれどころでは無かった
ーーえ、銀髪少女・・・!?
フィクション作品でしか見たことのないような太陽の光によって輝く、太くしなやかな銀髪を後ろで束ねたポニーテール姿に感激していたのだ
ーーこれも異世界ならでまってやつだな
「どうしたの?」
「あぁいや、何でもない、大丈夫」
尋ねてきた少女に首を横に振るい立ち上がると、話を逸らすべく周囲を見渡す
「ところで、ここって何処か知ってる? 来たばっかりでわからないんだよ」
「ここはストーテ州で・・・まぁタゲリの街の近くだよ」
「タゲリの街にストーテ州・・・」
聞いたこともない地名に街の名前に、暫し呆然としてしまう
「え、あの・・・大丈夫?」
「おーい」と目の前で手をヒラヒラさせる少女に「大丈夫だよ」と言って微笑んで見せるのだが
ーーキタキタァ!! なら目指すはこの街だな!
実情を言えば、内心大はしゃぎしていただけである
「なぁ! そのタゲリ? って街にはどうやって行くんだよ!」
押しかけるように顔を近付けると、彼女は驚いたように身体を逸らし困惑を浮かべる
「え、えっと・・・一応僕もこの街に行く予定だったし・・・付いてくる?」
「行く!!」
元気よく答えた健司に少女はニカリと笑い、腕を空高く突き伸ばす
「じゃあ一緒に行こうか!」
「おー!」
そうして歩き出した2人であったが、何を思ったのかすぐさま少女が「あっ」と声を出した事により歩が止まる事となる
「どうした?」
尋ねた健司の言葉に、少女は「タハハ」と笑い恥ずかしそうに頭を掻く
「そういえば君って名前なんていうのかなって・・・ほら、短い付き合いかもだけど一応知っておきたいし」
そんな彼女の言葉に、「何だそういうことか」と思うと健司は意気揚々と名乗りをあげた
「俺の名前は白山健司、生まれは兵庫のひとりっ子だ! よろしく!」
「ヒョーゴって街から来たんだね、僕は灯華だよ、よろしくね」
差し出された灯華の右手
「おう、よろしく!」
それを強く握り締め、この世界における初邂逅を終えるのだっ
読んでくださりありがとうございます!
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