第59話 星の光
“固有魔法”、それは魔力の核心に迫ることで魂に刻まれる人によって発現内容が異なる魔法。
一方誰が使っても同じ事象が起きる魔法がある。それが“基礎魔法”
基礎魔法とは六大元素を生み出し操ることができる魔法。魔法の世界における六大元素とは「火」「水」「土」「風」「雷」「氷」のことを指す。これら6つの基本的な魔法は魔法初心者でもコツさえ掴んでしまえばそれほど苦労せず発動することができる。
しかしこの基礎魔法、これには大きな欠点がある。それは“コスパ”が悪い、これに尽きる。魔力消費量に対しての出力があまりにも貧弱なのだ。同じ魔力消費量でも炎系の固有魔法であれば岩をも溶かせる火力が出せても基礎魔法ではせいぜいお湯を沸かせる程度の火力になることもしばしば。
“戦闘で基礎魔法を使用するくらいならその魔力で身体強化をしろ”
魔法師を目指す者がまずはじめに言われる言葉がこれである。
そのため基礎魔法は固有魔法発現までの足がかり、魔力を魔法に変換することに慣れるための練習用魔法という位置づけになっている。
余談だが固有魔法を発現させるとそのぶん魂の容量が圧迫され基礎魔法は発動出来なくなる。故に複数元素を操れる魔法師は基本的に存在しない。
そう、基本的には──
「“属性付与” “水月”!!」
リヒトが愛刀「七星」に付与した元素は“水”。抜刀と共に放出、広範囲に水を撒き散らし騎士二人を水浸しにさせた。それを確認し再び納刀。鞘を中心に黄色い稲妻が帯電する。
「“雷月”!!」
立て続けに抜刀。迸る雷が水浸しとなった騎士二人に襲い掛かる。魔力強化を貫通し感電。神経や筋肉、魔力回路へと伝わる電気信号を乱し、強制的に動きを硬直させた。
リヒトの固有魔法「属性付与」は六大元素を付与する魔法。愛刀「七星」の鞘、そして愛弓「ステラ」で元素を生成、溜め込み、そこを通過した刃と矢に元素を取り込ませることができる。
一度武器を経由させる制約こそあるもののリヒトは世にも珍しき6つの元素を操ることができる魔法師。ついた異名は“六ツ星”
“六ツ星” リヒト・ライトガーデン
「通らせていただきます」
リヒトは痺れ棒立ちとなった騎士二人の間を堂々と通った。
「あとは破壊するだけ。エインさんはただ純粋な剣術で天井を軽々と斬った。魔法を使えるオレがこんな扉一つで立ち止まるわけにはいかない」
師を思い、鞘を握り扉に立つ。付与するは炎。放つは──
「千花流 “桐時雨” “炎月”!!」
受け継いだ技。数ある千花流の剣技から最も自分の魔法と相性のいい居合を放つ。赫灼たる刀身が鋼鉄の扉に衝突、火花が飛び散り扉自体が熱を帯び始める。
だが、それでも扉は破れない。
「斬れるまで……! 何度でも!!」
再度納刀。刀身へ魔法の充填を開始する。その途中で……
「──っとと……! 思いのほか復帰がはやいッスね……!」
雷撃で拘束されていたはずの騎士二人から横槍が入った。攻撃を察知したリヒトはそれを回避。振り下ろされたロングソードはリヒトの魔法で赤みを帯びた鋼鉄の扉に激突。甲高い金属音が鳴り響いた。
「今のでも破壊できないんスか。嫌になるほど丈夫ッスね。でもおかげで……」
リヒトはそこから活路を見出す。
「簡単な話だったってことに気付けました。硬ければ脆くすればいいって」
運転室から距離をとったリヒトは弓を取り出し構える。
「横、失礼します──」
弓を中心に冷気が漂う。
「“凍星の一矢”!」
放った一矢は騎士の間をすり抜け扉に直撃。凍てつく矢がリヒトの魔法で熱せられた扉を急激に冷やす。
それを確認したリヒトは扉に向かい走り出す。
「ちょっと手伝ってください」
扉の目の前まで到着したリヒトはそのまましゃがむ。それは走り出したリヒトを追従し攻撃してきた騎士の斬撃を躱すため。その斬撃はリヒトの魔法で霜がついた扉に直撃。
遂にヒビが入る──
「熱せられた金属は急激に冷えると脆くなる。この扉も例外じゃなかったッスね」
リヒトはすかさずヒビに向かって追撃。
「“桐時雨” “雷月”」
ヒビを中心に扉、そしてその周辺の壁がガラガラと崩壊を始めた。
「ご協力ありがとうございました」
礼を述べたリヒトであるが騎士たちは依然としてリヒトに向かって襲いかかる。
「申し訳ないッスけど少し手荒に……」
リヒトが反撃しようとしたその瞬間──
「ん……? 止まった……? これは……エインさんッスね……!?」
騎士の動きが止まり、その場で眠るように倒れる。それは騎士含む乗客たちがロノウェルの魔法の呪縛から解き放たれたことを示していた。
「オレもやるべきことをやらないと……! 起きてください運転士さーん!」
この暴走している列車を止めるには運転士を起こし然るべき手順でブレーキをしてもらうのが確実。そう思いリヒトは眠っている運転士の肩を揺らす。
が、起きない。
「無理ッスか……。流された魔力が多かったんスかね。しばらく起きなさそうッス。仕方ない……、オレ、列車のブレーキのやり方なんて分からないんで乱暴にさせてもらうッスよ」
リヒトは運転台に手を置き魔力を込める。
「“魔力探知” ……あんまり自信ないッスけど多分ここッスね」
魔力探知で見つけたものはこの列車の動力源から繋がる人工魔力回路。それを保護しているカバーを剥がし刀を突き立てる。
それを合図に魔導列車は徐々に減速をし始めた。
「任務完了」
そう呟き七星を鞘に収めた。
第59話 星の光




