選ばれし者編side story「自然と衝撃を掌理する者」
「諦めるな。大魔法使い候補よ」
大魔法使い候補。それは、ナンバー1を指す言葉だった。それ故、ナンバー1は、まるで自分の事を呼ばれたものだと、視線を真横から聞こえた声の方へ向ける。
しかし、確認すると同時に、火と雷の攻撃がナンバー1を襲った。とっさに目を閉じるナンバー1。
全ての思考が停止し、何も考えられない。痛みも感じなかった。しかし、声だけはしっかりと聞こえてくる。
「お前は、過ちを正す者になるのだ。私では、止められん。しかし、今の敵の攻撃を止めるのは容易い事だ」
ナンバー1は、恐る恐る目を開ける。徐々に明るくなっていく視界。眩しい視界の中、必死に前方を確認すると、以前自分が止めを刺したはずの、老人が敵の魔法を食い止めていた。腰を曲げて、片手で魔法の進行を遮っている。もちろん、周囲はその魔法の火と雷で何も見えない。
「お、お前は……? 俺が、倒したはず……では」
「大魔法使い、自然と衝撃を掌理する者、メイガス。待たせたな」
名乗ると同時に、手を振り払い魔法を完全に打ち消すメイガス。その衝撃で、辺りに散乱する魔力の断片が、異様に美しく見える。
そして前方で余裕の表情をしていた女性に、とうとう焦りと驚きが現れた。
「へぇ~、大魔法使いねぇ。こんな老いぼれがねぇ」
「そうか。だが、ただの老いぼれと思って甘く見ない事だ」
メイガスはそう言うと、ローブの内ポケットからカプセルを取り出し、それを口に含んだ後、ブツブツと何かを呟き始める。
すると、徐々に体が膨らみ始め、瞬く間に筋肉質で逞しい肉体へと変化していき、顔が若返り始める。身長もかなり高くなったようだ。その為、今までローブだった衣服は、マントへと早代わりしていた。
「あぁ……これが、真の私だ」
ナンバー1は、若返ったメイガスになぜか見覚えがあった。しかし、それがなぜかは一向に分からなかった。どこか、懐かしい感じがする。
「ど、どこかで会った事があった……か?」
ナンバー1はその事を、メイガスに聞かずに入られなかった。すると、メイガスは、
「なぜ、私はお前の事を知っていると思う? 懐かしさ感じるのであれば、お前が私と同じ立場になった時、思い出せるだろう」
それだけ言い残し、女性の方へと歩いて行く。それに対して、女性は楽しそうに構えを取った。
「どうやら、大魔法使いってのは、本当のようね。だったら。力比べといきましょーか」
「来い、私にとっては戯れに過ぎん」
女性が、猛スピードでメイガスに近づく。そして、そのまま勢いを利用して、飛び蹴りを繰り出した。それに対してメイガスは、繰り出された足を握り、そのまま後ろへ投げ飛ばす。ナンバー1を掠め、飛ばされていく女性は、空中で華麗に体勢を整え、地に着地する。そして、前方を確認すると、目の前でメイガスが魔法を放つ準備を整え終えていた。
「新・古今魔法『ダークレイディエーション』」
メイガスの手の平から、黒き光線が放たれる。女性は、顔の前で腕を交差させる事により、光線を防御した。が、勢いは諸に食らってしまい、そのまま後ろへ吹き飛ばされ、地面を転がっていく。
そして、受身を取って起き上がった女性は、余裕の表情で話しかけた。
「あぁん、もう! 衣服がボロボロじゃない!」
女性の服は所々破れており、腕の部分に関しては、完全に焼けていた。メイガスは、不敵な笑みを浮かべ、足を綺麗に揃え、紳士的に立っている。
「衣服の心配をしている場合か? 貴様は今、危機的な状況に置かれているのだぞ?」
メイガスの両手から、黒き光線が放たれる。が、その光線はメイガスの手からある程度放出されると、ぴたりと動きを止めてしまった。宙に浮かぶ、2本の黒い光線。メイガスは、その二本の内、一本を片手で掴むと、なんと剣のように振り回し始めた。そして、満足気にもう片方の手でもう一本を掴むと、ゆっくりと女性に近づき始める。
「さぁ、再び破滅へと誘ってやろう」
極力かっこよく書きたかった……