第50話 ワ○スピじゃないんだからさぁ…
「それでは、ただいまよりブルテナ帝国第一王子、タイクーン・バルバトスと、デミズ国王女、ガタル・メリアーヌの婚姻の儀を執り行う」
皆が飯や会話を辞め、来客で招かれた者達各々が長い長い木製の用意された木製の長椅子に座ったことを確認した司祭がそう高らかに宣言したことで、婚姻の儀は始まりを迎えた。
兵士や先程じゅんきに絡んでいたクソ野郎達が立って警護をしているような光景を見て、結婚式が始まってしまったのだと思った。
あと、私…シストリエスが周りをキョロキョロとしながら見ていると、じゅんきのことを悪く言ったクソ野郎がこっちをみてニコッと手を振ってきた。…気持ち悪い。
殺意を覚えたが、その感情を抑えた。そんな無駄なことに意識を割いていると、会場では司祭によって開始された婚姻の儀をその場にいる人たちのほとんどの者が立ち上がり、兵士、来客共々王子と王女の婚姻を祝うように歓声をあげた。
私も適当にしておいた。…全然祝ってないけどね!
その歓声に嬉しそうに、しかしどこか落ち着いているかのように腕を振り返すタイクーン、自身を望まない婚姻から助けてくれる彼を待つが、表情に出すまいとするガタル。そんな2人の婚姻は順調に進んでいった。進んでゆく内に、シストリエス、そしてユウラの頭の中ではじゅんきはまだ来ないのかという焦りが出始めていた。
そんなシストリエスとユウラの焦りを嘲笑うかのように婚姻の儀式は進んでゆく。ガタルの顔は段々と生気をなくし始め、諦めモードへとなってゆく。
そんな顔になってゆくガタルを見てシストリエスと、ユウラの焦りゲージはMAXとなり、焦りを越してなかなかにやってこないじゅんきに苛立ちを覚え始めた。
そんなこんなをしていると、とうとう最後の誓いのキスまでやってきてしまった。
「ガタル。いや、我が妻よ!さぁ、誓いのキスをしよう!」
「にゃー」
「が、ガタル…ボスは何をしてるんだよ!」
「じゅんき…」
シストリエス、ガタル、ユウラの3人が完全に諦め我らの敗北ルートへ入ったことを悟っていたその時、司祭、王子とガタルの真上のステンドグラスが各々の持つ色に光だしたと同時に謎の甲高い音がだんだん近づいてくる音によって、誓いのキスは2人の唇同時が当たる直前で止まった。
キスをしようとした王子、されかけた王女、それを観覧している者達、そして儀式を進めている司祭も光のほうをまじまじと見つめる。
私…シストリエスは感動あまり涙が出そうであった。…遅すぎるが、ギリギリで間に合ったのだ…彼が。
聞き慣れない音を聞きざわざわとしだす会場。私とガタル、ユウラの3人以外にもなぜか…というより、当たり前なのか、先程じゅんきに絡んでいたクソ野郎達、そしてそいつらの仲間っぽい奴らも何かを察したような、そして焦ったような顔や、驚きに満ちた顔や、呆れた顔をしていた。
そんな色々な感情、声で騒がしくなった会場に止まることなく近づいてくる光は強さを増し、聞こえてくる音…というより、エンジン音、わたしの聞いたことのない音だが、それがかなりの大きさになった時、突如として、「バリーン!」と言う綺麗なステンドガラスをぶち破った音と共に、人よりも大きな鉄の塊…車が姿を露わにした。
外がもう既に暗い夜だったことに加えて、車は眩しいくらいのライトをつけているので、はっきりとした色も形もわからないまま、車は会場の婚姻の儀を見届ける人たちの座っている椅子の前の方目掛けて一直線。そこらへんにいた人々だけでなく皆が立ち上がり、各々が避けてゆく。そうして誰もいなくなった木製の椅子を勢いよくバキバキとぶち壊しながら、「キー!」という音と、甲高いエンジン音を鳴らしながら、車はの入口&出口の方の大きな扉へと進んでゆく。
現れた車は私の見たことのない形であり、PRVといういっぱい人の乗れて、悪路もガンガン走れる車でもなければ、テンウイングズという最初にここへきた時に乗ってきた荷物がたくさん…というよりなんでも入りそうな巨大な車でもない。高さもなく、PRVとりも少しだけ短そうである。悪路も走れなさそうだし、人も荷物も乗らなさそう。
何の目的で作られたのか全く理解できない車…だが、綺麗に白で塗装され、細部細部にもこだわりが見える車だった。そんな謎の車は甲高いエンジン音を唸らせながら回転し、木製の長椅子を何個も破壊した後、車は食べ物の置いてあるテーブルの目の前で止まり、出口ではなく、ガタルと王子、司祭の方に車は向きを変えていた。
兵士達が武器を構えてじゅんきの車を警戒する。クソ野郎やイケメン男、先生?と言っていた女性やなんかブツブツと独り言を呟いていた女達が王様っぽそうな人を守っていたり、あんぐりと口を開けていたり、呆れていたりしていたが奴らをあの王様が連れてきたのだろう。
「な、なんだ!」
「貴様!降りてこい!」
そんなわけのわからない状況に冷静に対応する帝国兵士達は、武器を構えながら大きな声で降りろと言う。他の来客者を守るもの、そして、突如やってきた不思議な物体に怯える者達、そして、ガタルは…むかつくくらいの安堵した顔。王子はそんな王女の前に出て守るようにした。
じりじりと兵士たちがじゅんきの車に近づく。それに気づいたのか、じゅんきの車は甲高いエンジン音を唸らせた。それと同時に車後方からでっかい火花共に「バコン!」という音を鳴らした。兵士たちはびっくりして後ずさった。
…私も周りの人全員も少しビクッとした。…かなり大きい音だったからである。
その反応を楽しむかのように何回かエンジンを唸らせた後にじゅんきの車は唐突に前に発進した。PRVなどとは別格の加速力であり、正面の兵士たちを轢き飛ばし、そして、その矛先は王子の方へと向いた。
ガタルは得意のフットワークでドレスの下部を押さえつつ飛び立った。その事実に反応が遅れ、奥さんになりうる人を守ろうとした王子は逃げ出せず、目の前でブレーキの音と共に180度反時計回りをしたじゅんきの車にぶっ飛ばされ、ガタルの避けた方向と真逆の方向に吹き飛ばされた。
「お、王子様!」
兵士が皆王子の元へと駆け寄る。怪我はそこまで大きくなさそうなのに駆け寄るとは…王子ってのはこんなものなのかと私は呆れる。
そんなこんなで兵が王子の元へと向かったのちに、車のドアが開いた…縦に。…無駄に拘られたものだと私は思いつつ、降りてきた人…最愛の恋人の元へと私は向かった。
「お、王混様!」
がしかし、近くにいた泥棒猫に先を越された。急がなければ。
「よ!ドレス似合ってるな」
私が着いた直後、明るく元気で呑気な声色でガタルのドレスを褒めたじゅんきに、私は少し怒りを覚えた。おのれ泥棒猫。許すまじ。
「ありがとにゃ❤️…だけど、私は正直これ嫌いにゃ…重いし動きづらいし、あいつに選ばれたやつだしで…てか王混様…その姿はなんにゃ?」
「これか?」
私も気づいた。彼の服装が私のあげた服ではない別の服になっていることに。…かっこいいけど、どうしたのだろうか。
「そうね。私のあげた服はどうしたの?」
「車の中でお留守番だ!どうだ?似合ってるだろう?俺はお姫様を奪いに来たいわゆる怪盗ってやつさ!ならばそれ相応の服ってもんがあるぜ!」
怪盗…なんだかわかんないけど、似合ってる…のかと私は思った。まぁ、服装は…ダンディになったから、さらに惚れたのだけどね!
「…かっこいいけど、そんな服用意してたなら言って欲しかったわ」
「せっかくトリエスが用意してくれた服なんだ。最後まで着なかったのはすまないが、それでも愛する女の用意した服を少しでも着るのが男さ」
「…キュン」
大切な服を破いたのは私でもあるし、私の好みの半ば押し付けてしまったのに…最後まで着てくれないのは残念だが、気遣いしてくれたダーリンに再度惚れ直した私である。…てか、今着てる服かっこよすぎて…死にそうである。
「く、くそう!なんなんだいきなり!」
「なんだって…俺はお姫様を奪いに来た怪盗だって」
「奪いにきただぁ?ふざけないでもらおうか」
「ふざけてないさ。大真面目だ。お前みたいな奴に元気おてんば美女獣人ちゃんは似つかないぜぇ?」
「…君。失礼にも程があるよ。人の大切な結婚式を壊しておいて…そして挙げ句の果てに僕の妻を奪うだと?ふざけるなよ!おい!あいつを捕えろ!」
王子の指示により、俺の元に兵士達が急接近してくる。
「…生憎様、雑魚の相手はしている時間はないので!呼出!ファストファフカース!雑魚を蹴散らせ!」
久しぶり、ヨビニングタイムである。久々に出てきたカースはこれまでの暇な時間から一変して自分に与えられた仕事に対してすごーくやる気になったのか、兵士たちを得意の魔法で蹴散らした。…さすがである。
「なっ!?帝国最強部隊だぞ!?」
「なら、大したことないね?クソ王子?」
「…ぐぬぬ!この…」
そう言いながら王子自ら俺に突っ込んで来る。流石時期帝王ということもあり、戦闘の身のこなしはいい感じであるが、久しぶりのシャバに出てきたカースという俺自身が作り出した中でも傑作とも言える怪物の横入り攻撃に対応できるはずもなく、俺の近くに来てもう少しの所で杖での物理攻撃を喰らい、来た道と反対方向にぶっ飛ばされ、そのまま壁をぶち壊した。…痛そうである。
俺はカースに近くでガタルを守るように命じた後に、王子の元へとゆっくりと近づいた。
「おいクソ王子。今すぐ結婚を自身で取りやめにするってんなら、俺はこれ以上なにもしないぜ?」
「…ふざけるなよ。誰かそんなことをするものか!」
「…はっ。そう言うと思ったぜ。これぞまさしく、二頭追うもの一頭も得ずってことだな」
「…なにを言っている」
「なに、お前がここの王様を倒して王になり、デミズをいいように使って更なる発展…というより、自分の至福を肥やしたいってことを言ってるのさ」
「…なっ!?…そんなこと…」
「なんだと…どういうことだ!」
護衛に守られている王様も口を開く。王子はすごーくバツの悪そうな顔をした。…ビンゴだなと俺は思った。
「なに?簡単な話…というより、先程話した内容通りさ。そこにいる王子は新たな王になりかわろうとしたってことさ」
じゅんきのその言葉に会場は鎮まり帰った。意味が不明だからである。
「信じられないって顔だな。じゃあ説明…というより、事実を話してやろう」
そう自信満々に、じゅんきは語り出した。王子の陰謀とは?次回は続く。
車好きにはたまらない伝説の名作、ワ○ルド スピード7のシーンの一つにあるドバイの超高級自動車メーカーの出しているハイパーカー(勿論レプリカ車)がド派手にビルを突き破るシーンに惹かれ、こういうのが描けたらいいなを詰めた1話です!結構すごいシーンなので、車好きの人も、そうでない人も見てみてください!(アマ○ンプライムとかにあると思います)




