梨バカのリカ ②
「廃業ってどうしてですか?」
リカがショックのあまり強めに聞いてしまう。
「摘蕾は終わって摘花してたんだがこの怪我じゃ受粉ができね」
「わたし・・・わたしがやります」
(何言ってんの)こころの声から非難が聞こえる。
「ウチにゃ500本あるから、リカちゃんが手伝ってくれても無理だ
それに嫁もいい顔してねーんだ」
百百さんは両親とは別に養豚業を営んでいたらしく、
両親が亡くなってからはなんとか2足の草鞋で頑張っていたが、
養豚業も順調らしく奥さんの負担が大きくなっていたそうだ。
「木、切るしかねっかー」
百百さんが諦めたように言っていたのでリカはもう何も言えなかった。
救急車が総合病院に着くと百百さんは運ばれてレントゲン検査とMRIを受けるそうだ。
検査中に百百さんの奥さんが到着して、リカと目が合う。
リカは奥さんとの面識はなかったが百百さんが連絡していたのですぐにわかった。
「旦那がお世話になりました」
丁寧に頭を下げているが、不安なのが顔に出ている。
「いえ、わたしはなにも・・・」
リカもそれしか言えず俯くように頭を下げる。
そんな中、お医者さんから声が掛かり奥さんが診察室に入って行った。
リカは仕方なく、通路にある椅子に腰かけると
(あんたなんかに何もできるわけないじゃない)
こころの声が聞こえる。
(でも、お母さんの梨がなくなっちゃうよ)
(梨なんて他にいくらでもあるじゃない)
(でも、違うよ)
(あんたには無理よ、百百さんも言ってたでしょ)
(今の私には無理・・・かも、でも)
リカは去年の秋の栗祭を思い出していた。
ボランティアで栗農家を手伝い、打ち上げまで参加した。
その時のカミーネの言葉が脳裏に甦る。
『私、1人じゃ何もできなかった、みんなの協力があってこの笠門のイベントは大成功に終わることができました!』
リカは携帯のアプリ天糸を開いて、震える手でカミーネにメッセージを送った。




