表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
宇宙人は今ここで  作者: ゴトーセイヤ
7/10

そのいち 楽して生きたい。切実に。6/6

 一方そのころ、藍子は一彦と沙耶を探し、校内を歩き回っていた。


 「たぶんこっちの方に来たと思うんだけどなぁ。どこ行っちゃったんだろう。ほんとヘンなことばっかりして!ちゃんと私が止めなくちゃ!!……って、なに!?」


 突然、プシューという蒸気の吹き出すような音が鳴ったと思ったら、次には地響きが鳴り校舎が揺れる。


 思わずその場に尻もちをつく藍子。決してサービスカットなどではない。


 「イタタタタぁ……。絶対お兄ちゃんたちの仕業だ。3階ね!」


 尻を抑えた情けない姿でも、しっかりと音の発生源を特定していた藍子は、身体を起し走り出す。

 っと、ちょっと躓き、顔を赤くして再び走る。


 

 絶対ここだ、と藍子が足を止めたのは、化学実験室。

 放課後には使われない教室なのだが、中からは怪しい気配がムンムンと色を伴って放出されている。


 あくまで気配であり、物理的なものではないのだが、藍子は気味の悪いそれを手で払いのけると、ふぅー、と深呼吸して尋ねるのだ。


 「お、お兄ちゃん?いるんでしょ?」


 覚悟を決めた割にその声はあまりにも弱弱しい。

 中からの返事はない。


 でも、絶対いるはず。

 耳を澄ますと室内では物音がしていた。


 ピタ、ピタ、と裸足でゆっくりと歩いているような音だ。

 それから、ドン、と何かにぶつかったみたいな音……。


 なんだろう。不安が増していく。

 胸の前で、弱弱しく両手を握りしめているさまが、藍子の心境をよく表していた。


 「お、お兄ちゃんなんでしょ?!は、入るよ!」

  

 その不安を払しょくするように、今度は少し声を強めて尋ねる。


 「なななななななな、なんだ、藍子か?ど、どうしたんだ」


 ドアのすぐ向こうからだ。

 一彦の声が聞こえた。


 聞きなれた声に藍子は安心したが、なぜだか兄の声が震えているし、ハアハアと息切れしていることに気付く。


 「なにかあったの?すごい音がしたし……。沙耶さんもいるんでしょ?」


 「おおおおーう。藍ちゃんかー。ハァ。わ、私もいるぞ。ハアハア。別に怪しい事なんかしてないからね。ハア。し、心配しなくてもいいよ」


 「おいバカ!余計なこと言わんでいい!!」


 沙耶も一彦同様、声は震え、ハアハアと息を切らしている。

 加えて、二人の意味深な会話。

 藍子の疑心が確信へとかわる。


 「二人ともすごく怪しいよ!また何かしようとしてるんでしょ?!は、入るからね!」


 「おーいおいおいおい待て待てぇい!」一彦の声が、ドアに手をかけようとする藍子を制止する。「なんて言うかだな、あれだ。お前にはそのままでいてほしいって言うかだな。こんな不純な世界、知らないで育ってほしいんだ!」


 さらに沙耶が続ける。


 「そ、そうよ藍ちゃん、よく聞いて!正直に言うわ。きっと私たち悪いことをしている。もし藍ちゃんが、一彦と私が二人でこっそり、しかも学校でこんなことしてるなんて知ったら、ショックを受けるの」

 

 「ま、またヘンな想像しちまうようなことをお前は……!ま、まぁでも、そうなんだ。わかってくれるなら、そのままおとなしく家に帰ろう。な?それで明日からまた、いつもの日常で楽しく暮らそう」

 

 「私……よくわからないよ」


 藍子には一彦たちの言っている意味が分からなかった。なんだか泣いているような声音である。

 藍子は純粋な心で一生懸命考えた。


 「わからないよ。不純な世界とか、二人でこっそりとか、しかも学校でって……え?」

 二人の異性が、学校でコソッリ不純な行為……。

 「……?!」


 藍子の全身が、つま先からみるみる真っピンクへと染まっていく。

 その無垢な心で何を想像しているのか、滝沢妹よ……。


 「だ、だって、そうゆうことなんでしょ!?お兄ちゃんと沙耶さんが……。放課後の実験室、あんなこととか、こんなこととか!た、たしかに、お年頃の男女が一つ屋根の下で一緒に生活してるんだもん。そういうことになったって……。でもまさか、お兄ちゃんと沙耶さんが!え、そ、そんな……」


 藍子は目を白黒させ、今にも頭から蒸気が噴き出しそうである。


 なんとなく事の真相は理解したつもりだが、それを受け入れるハートが藍子にはまだなかった。

 ていうか、藍子が想像するようなことは断じてないんですけど……。


 「お兄ちゃんと沙耶さんが……!ダメだよ、そんなの。ダメ!絶対!!」


 もうろうとする意識の中、藍子の手がついに実験室の扉を開く。


 「……あ」

 「……あ」

 「……へ?」


 「ジュリュリュリュルルルルルゥ~」


 藍子の予想に反して、目の前に飛び込んできたのは、人間の欲望が生んだ化け物の姿であった。


 胴体にあたる部分は、ただの肉の塊で出来ており、かろうじて二本の足で立ってはいるものの、その足はよからぬ方向へと曲がっている。


 よく見ると腹のあたりから長い腕が伸びており、その腕ががっちりと地面を掴み、バランスをとっているようだ。


 当然と言うか、それとは別の腕も胴の横から二本伸びていて、何かを探るように腕を振る。そのたびに、ゴツンゴツンと近くにある机にその腕がぶつかるが、何も感じていないようで、それでも腕を止めようとはしない。

 

 顔と呼べる部位は存在しなかった。

 それでも、目や鼻や口はあるのだが、それらは取ってつけたようにバラバラに配置されている。


 文字通りの化け物であった。

 「ジュリュリュルルゥ~」と鳴きながら教室を徘徊する。


 おわかりいただけただろうか、と尋ねる前に、すでに気付いていると思うが、そう、この化け物、“気になるあの子がすぐそこに、ホレ言っちゃいなよホレ、猫さん”によって一彦と沙耶が生み出した、生物なのである。


 人間的な可愛い要素から、ありとあらゆる可愛いと言われるモノまで、適当な要素をぶち込んでいった結果、世にも恐ろしいスーパーアイドルを誕生させてしまったのである。


 目の前の悪夢に、腰を抜かした一彦たちが動けないでいる中、藍子の登場。

 そして、あろうことか、自ら悪夢の中へと足を踏み入れてしまったのである。


 藍子は動けないでいた。

 兄たちへの如何わしい想像からのこの展開、当然の反応である。


 しかし、目だけはしっかりと化け物の姿をとらえている。

 一彦たちもまだ動けないでいるらしく、震えながらお互いの手を握り合って、目には涙を浮かべている。


 すると、ヒタヒタとおぼつかない足取りで教室を徘徊していた化け物が、突如その足を止めた。


 そして、藍子の方へと目を向ける。


 ……目が合う一人と一匹。


 「ギヤァァァァアアアア!!!!!!!」


 ほとんど反射的な行動であった。

 藍子自身が考えるより先に、彼女の足が、この場からその身体を遠ざけた。

 一切の思考を捨て、ひたすら走り、悪夢から藍子の姿は完全に消え去った。


 「待つんだ妹よ!」

 

 「藍ちゃん!置いてかないでー!!」


 取り残された二人は、力の限り、救済を求めて叫ぶ。

 が、それがいけなかった。


 獲物を逃がした化け物が、次に狙いを定めるのは一彦と沙耶である。


 恐怖のあまりに声も出なければ、動くことも出来ない。

 ただただ抱き合い、泣きながらその時を待つしかできない二人。


 「カァァァアアアア!!!」


 次の瞬間には、化け物は一彦と沙耶の目前に迫っていた。




 その後、二人の行方を知る者はいない。

 地球全土に響き渡る断末魔を残して、一彦と沙耶は姿を消したという。 


 


  

 


 

 


『そのいち』終わりました!

ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます!

そのいち、でわかったように、こんな感じのしょーもない内容の話が続いて行きますw

予告していた通り、来週から『そのに』を投稿していく予定です。

次回は滝沢姉妹と沙耶の出会い編です。


まだ始めたばかりで、サイトの勝手がわからず、お見苦しいところはあると思いますが、今後ともよろしくお願いします。

では、次回をお楽しみに!


おわり


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ