表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぺんぎん  作者: kikuna
PR
38/61

第五章 便利屋07

 夏になると、避暑をかねて母方の田舎へと私たちは毎年やって来ていた。


 従兄弟と兄、そして近所の子。数名でここへやって来ては遊んでいた。

 伸びる獣道。

 そこを上って行く。

 何度も足を滑らせ、服が湿った土で汚れる。ハイヒールが刺さり、ぬけなくなりながら、ようやく明るく開けた場所に出た私は、思わず歓声を上げてしまう。

 一面の緑。


 この場所を見つけたのは偶然だった。

 兄たちに置いていかれ、私は夢中で捜し歩いた。普段は、絶対に上って行かない獣道。地元の子達さえ、蛇が出ると恐れている道だった。

 祖母からも、散々話を聞かされていた。

 その時、私は一人でトイレに行けなくなってしまうほどに、怯えさせられた言葉がある。


 ……神隠し。


 背筋が寒くなり、私は両腕を摩る。


 忽然と人がいなくなってしまう話だ。


 それほど危険な場所だから、近付いちゃダメってことよ。と母親が細くして聞かせられたが、先に聞いてしまった言葉のインパクトが強すぎて、そんな言葉が入り込むよりなどなかった。


 どこを探しても見つからない兄たち。もしかしたらと、少女だった私は本気で考えてしまっていた。

 半泣きで、棒切れで生い茂る草を叩き、何度も兄たちの名前を呼ぶ。

 どのくらい歩いたのだろう。目の前に白い門扉が見えて来て、私は夢中で駆け寄る。

 ずっと先まで続く芝生が植えられた庭。ちょこんとおかれた白いブランコに少年が一人、遊んでいるのが見えた。

 少年の髪は、光を浴びる度、黄金に輝き、鳥たちとまるで会話を楽しんでいるよう思えた。

 何度も指に止まらせては、羽ばたく鳥を目で追いながら、いつの間にか目の前に現れた少女を少年は、微笑んで迎い入れる。。

 じっと見つめる私に、少年は何も言わず、鳥が止まっている指を目の前へと差し出す。

 私にもそうするようにと言わんばかりに、微笑む。

 恐る恐る差し出す私の指へと移って来た鳥は、ちょこんと首を傾げてから、囀りを始める。

 「君のこと、気に入ったようだね。僕は、ギルバード。君は?」

 「さゆり。松野さゆり」

 もう少年の興味はそこにはなかった。

 風が吹くたび、ふんわりと髪を光らせ、駆け出す少年の後を、私は夢中で追いかけだす。

 何かを思い出したように少年は振り返り、私に目をつぶるように言う。

 「良いものをあげる」

 そう言った少年が、何をしたのか分からない。

 しかし、目を開けた私は、驚きで目を瞬かせる。

 指に止まった鳥の声が、そう、鳥の声が何を話しているのか、分ってしまうようになっていた。

 少年は楽しそうに、笑うばかりで何も教えてはくれなかったが、その日から、私は彼の虜になったのは言うまでもない。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=615037994&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ