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レクシア -de quodam lexicone fabula-  作者: Nekke
第3章 ヴォルクス編
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36/36

0035 魔導

更新が途絶えてしまって申し訳ないです。

私生活の方が忙しくなってしまったので、今後は週一回の月曜投稿にさせていただきます。

今後ともよろしくお願いします。

 煙の向こうから、一つの影が現れた。…グレーウルフだ。毛並みのあちこちが焦げていて、右前足には大きな火傷を負っていた。…だが、その赤い瞳から闘志は消えていない。

「ゥウウウウウ…」

 まるで仇を討つと言わんばかりに、低く唸る。

「しぶといな……」

 カイルが呟く。…でも、今のグレーウルフは明らかに弱っている。あと少しだ。でも……


「レクシア、まだ魔法は撃てるか?」

「……もうMPが残ってないから、撃てないかな」

 正確には、初級魔法くらいなら何発か使えるかもしれない。でも、グレーウルフを倒せるほどの威力がある魔法は、もう撃てそうになかった。

「そうか」

 カイルは短く答えると、剣を握り直す。

 グレーウルフは私たちを睨みつけたまま、ずっとジリジリと距離を測っていた。

 お互いに、さっきまでのような勢いはない。だけど、その分だけ慎重だった。


「……来るぞ」

 カイルがそういうのと同時だった。

「ォオオオオオン!」

 グレーウルフが地面を蹴る。…速い。火傷を負っているとは思えない速度で距離を詰めてくる。

「速っ!」

 私が声を上げた時には、カイルも飛び出していた。

 グレーウルフの爪が振り下ろされ、それをカイルが剣で受け流す。まるで、水が流れる時のように、美しく。

 そのまま、剣を振り上げて反撃する。

「【見切】」

 瞬間、カイルの剣が燃え盛る炎を纏う。振り抜かれた剣は、グレーウルフの毛皮を厚く焼いた。

「グオオン!」

 グレーウルフが苦しそうに唸る。

 焼け焦げた毛皮から煙が立ち上っている。それでもなお…いや、それだからこそ、その目にはより一層強い殺意が籠っていた。


「ォオオオン!」

 勢い任せに、再び突っ込んでくる。それは、今までで一番速い突進だっただろう。でも、それでも……

「【見切】」

 動揺してできた攻撃の隙に、カイルの剣が流れ込むようにして入っていく。

 燃え盛る剣が、グレーウルフの首を切り落とした。






 なんとか、グレーウルフを倒すことができた。負けそうだったけど、勝ててよかった。

 そういう訳で、今は森の中、川のほとりで休憩中だ。


 え、森の中にいて大丈夫なのかって?…私もそれは思ったんだけど、カイル曰く「大丈夫だ」って。

 どうやら、森の中、少なくともこの周辺には、強い魔物の群れがいないらしい。というのも、もし居たとしてもさっきのグレーウルフの群れと戦って均衡するか、どちらかが滅ぶらしいから。

 どちらかが滅んだ場合は、その時点で強い魔物はいないのが確定するし、均衡していたとしたら、外部の勢力に自ら襲いかかることは余裕がなくてできないから、それもないらしい。合理的だね、魔物って。忘れそうだけど、私も魔物だけどね。


 そういえば、さっき確認したらレベルがまた上がっていた。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

レクシア 種族:人類/人間 年齢:13歳 性別:女

役職:魔導士 レベル:13

HP:38/56 MP:27/140

ステータス傾向:

MP:SS

魔法攻撃:S

属性傾向:

闇:S

スキル:

索知:レベル6

 探識:レベル4

分体:レベル3

読書:レベル5

 御伽:レベル2

偽装:レベル2

隠密:レベル1

魔導:レベル2

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 あれ、新しいスキルが増えてる?

 …確認したら、【魔導】スキルが増えてたみたい。魔導士になったからかな?

 そういえば、役職のところも「無職」じゃなくなってる。ちょっと嬉しい。

 でもやっぱり、【魔導】の効果が気になるから、【索知】で確かめとこうかな。やっぱり、魔法関連の効果が付いてるのかな?

 いざ、【索知】!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

魔導: 魔法式を扱う行動に補正がかかる。 補正の種類や強さは、スキルレベルに依存。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 やっぱり、予想通りだ。…ちょっと予想通りすぎて面白くない。

「…どうした?」

 向かい側で水を汲んでいたカイルが、不思議そうに首を傾げた。

「新しいスキルを覚えたんだけど、思ったより普通だっただけ」

「普通?」

「うん。魔法が扱いやすくなるだけみたい」


 カイルは少しだけ考えるような表情をして、言う。

「それ、けっこう当たりじゃないか?」

「え?」

「魔法ってのは、ただ使えるだけじゃ弱いんだ。威力、制御、発動速度……そういったものが、全て重要になる」

 そう言って、落ちていた近くの小枝を拾う。

「例えば、同じファイアボルトでも」

 小枝で魔法式の簡単な図を書いていく。

「威力を上げるのか、速度を上げるのか、形を変えるのか……そういうので、全く違う魔法になったりする。だから、単に『魔法が扱いやすくなる』といっても、色んな恩恵があるはずだ」

「へえ……」

 なんというか、理系なファンタジーだね。

「とは言っても、俺もそんなに詳しくはないんだけどな」

「ううん。分かりやすかった」


 そういえば、役職といえば……

「ねえカイル、役職って、途中で変わったりするの?」

 そう聞くと、カイルはなぜか一瞬だけ寂しそうな表情をしたけど、すぐに答えてくれた。

「…役職が変わるかどうかか。まあ、条件を満たしたら自然に変わるし、もちろん後から変えることもできる。普通は上位職にするな」

「上位職?」

「ああ。例えば、剣士なら剣豪や狂戦士だったり、魔法使いだったら大魔法使いになるか、魔剣士になったりする」

 やっぱり、ゲームみたいだね、この世界。


「じゃあ、魔導士にも上位職はあるの?」

 私がそう聞くと、カイルは少しだけ考えるように空を見上げた。

「あるにはある。……でも、かなり珍しい」

「珍しい?」

「魔導士自体がまず少ないからな」

 確かに、クレアさんもマニアックだって言ってたもんね。

「有名なのだと、大魔導士とか、賢者とかかな」

「賢者!」

 思わず身を乗り出してしまう。

 …賢者。ゲームでもよく見るし、何よりもロマンがある。それが、現実のものになってるだなんて……

「…そんなに喜ぶことか?なれるかどうかも分からないのに」

「だって、賢者だよ?喜ぶしかないよ」

「…?」

 どうやら、あまり分かってもらえなかったみたい。残念。

「賢者は、長い間誰も就けていない役職で、条件が分かってないんだ」

「…そっか」

 ってことは、賢者になるのはちょっと難しいかもしれない。闇雲に条件を探すのもスマートじゃないし、しばらくは諦めるか。


「…なあ、レクシアは、やっぱり魔導士を続けるのか?」

「…?」

 急にどうしたんだろう、なんか悩んでることでもあるのかな?

「辞めないよ、まだ一日目じゃん、魔導士になって」

「…そっか、確かにそうだよな。変なこと聞いたな」

 カイルはそう言って、少しだけ笑う。

 …でも、カイルが言う通り、やっぱり魔導士は続けようかな。

 そういえば、ノーモスさんの役職って確か司書だけど、これも魔導士の上位職なのかな?今度会った時に聞こうかな。…もし派生だったらって考えると、俄然モチベーションが上がってくる。【魔導】スキル、少しずつでもレベルを上げていこう。

 よし、そうと決まれば、あとは練習あるのみだ。魔法をたくさん打てば、きっと上がるはず!

「シャドウランス!」

この後MP切れで倒れたらしいです。

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