0035 魔導
更新が途絶えてしまって申し訳ないです。
私生活の方が忙しくなってしまったので、今後は週一回の月曜投稿にさせていただきます。
今後ともよろしくお願いします。
煙の向こうから、一つの影が現れた。…グレーウルフだ。毛並みのあちこちが焦げていて、右前足には大きな火傷を負っていた。…だが、その赤い瞳から闘志は消えていない。
「ゥウウウウウ…」
まるで仇を討つと言わんばかりに、低く唸る。
「しぶといな……」
カイルが呟く。…でも、今のグレーウルフは明らかに弱っている。あと少しだ。でも……
「レクシア、まだ魔法は撃てるか?」
「……もうMPが残ってないから、撃てないかな」
正確には、初級魔法くらいなら何発か使えるかもしれない。でも、グレーウルフを倒せるほどの威力がある魔法は、もう撃てそうになかった。
「そうか」
カイルは短く答えると、剣を握り直す。
グレーウルフは私たちを睨みつけたまま、ずっとジリジリと距離を測っていた。
お互いに、さっきまでのような勢いはない。だけど、その分だけ慎重だった。
「……来るぞ」
カイルがそういうのと同時だった。
「ォオオオオオン!」
グレーウルフが地面を蹴る。…速い。火傷を負っているとは思えない速度で距離を詰めてくる。
「速っ!」
私が声を上げた時には、カイルも飛び出していた。
グレーウルフの爪が振り下ろされ、それをカイルが剣で受け流す。まるで、水が流れる時のように、美しく。
そのまま、剣を振り上げて反撃する。
「【見切】」
瞬間、カイルの剣が燃え盛る炎を纏う。振り抜かれた剣は、グレーウルフの毛皮を厚く焼いた。
「グオオン!」
グレーウルフが苦しそうに唸る。
焼け焦げた毛皮から煙が立ち上っている。それでもなお…いや、それだからこそ、その目にはより一層強い殺意が籠っていた。
「ォオオオン!」
勢い任せに、再び突っ込んでくる。それは、今までで一番速い突進だっただろう。でも、それでも……
「【見切】」
動揺してできた攻撃の隙に、カイルの剣が流れ込むようにして入っていく。
燃え盛る剣が、グレーウルフの首を切り落とした。
なんとか、グレーウルフを倒すことができた。負けそうだったけど、勝ててよかった。
そういう訳で、今は森の中、川のほとりで休憩中だ。
え、森の中にいて大丈夫なのかって?…私もそれは思ったんだけど、カイル曰く「大丈夫だ」って。
どうやら、森の中、少なくともこの周辺には、強い魔物の群れがいないらしい。というのも、もし居たとしてもさっきのグレーウルフの群れと戦って均衡するか、どちらかが滅ぶらしいから。
どちらかが滅んだ場合は、その時点で強い魔物はいないのが確定するし、均衡していたとしたら、外部の勢力に自ら襲いかかることは余裕がなくてできないから、それもないらしい。合理的だね、魔物って。忘れそうだけど、私も魔物だけどね。
そういえば、さっき確認したらレベルがまた上がっていた。
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レクシア 種族:人類/人間 年齢:13歳 性別:女
役職:魔導士 レベル:13
HP:38/56 MP:27/140
ステータス傾向:
MP:SS
魔法攻撃:S
属性傾向:
闇:S
スキル:
索知:レベル6
探識:レベル4
分体:レベル3
読書:レベル5
御伽:レベル2
偽装:レベル2
隠密:レベル1
魔導:レベル2
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あれ、新しいスキルが増えてる?
…確認したら、【魔導】スキルが増えてたみたい。魔導士になったからかな?
そういえば、役職のところも「無職」じゃなくなってる。ちょっと嬉しい。
でもやっぱり、【魔導】の効果が気になるから、【索知】で確かめとこうかな。やっぱり、魔法関連の効果が付いてるのかな?
いざ、【索知】!
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魔導: 魔法式を扱う行動に補正がかかる。 補正の種類や強さは、スキルレベルに依存。
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やっぱり、予想通りだ。…ちょっと予想通りすぎて面白くない。
「…どうした?」
向かい側で水を汲んでいたカイルが、不思議そうに首を傾げた。
「新しいスキルを覚えたんだけど、思ったより普通だっただけ」
「普通?」
「うん。魔法が扱いやすくなるだけみたい」
カイルは少しだけ考えるような表情をして、言う。
「それ、けっこう当たりじゃないか?」
「え?」
「魔法ってのは、ただ使えるだけじゃ弱いんだ。威力、制御、発動速度……そういったものが、全て重要になる」
そう言って、落ちていた近くの小枝を拾う。
「例えば、同じファイアボルトでも」
小枝で魔法式の簡単な図を書いていく。
「威力を上げるのか、速度を上げるのか、形を変えるのか……そういうので、全く違う魔法になったりする。だから、単に『魔法が扱いやすくなる』といっても、色んな恩恵があるはずだ」
「へえ……」
なんというか、理系なファンタジーだね。
「とは言っても、俺もそんなに詳しくはないんだけどな」
「ううん。分かりやすかった」
そういえば、役職といえば……
「ねえカイル、役職って、途中で変わったりするの?」
そう聞くと、カイルはなぜか一瞬だけ寂しそうな表情をしたけど、すぐに答えてくれた。
「…役職が変わるかどうかか。まあ、条件を満たしたら自然に変わるし、もちろん後から変えることもできる。普通は上位職にするな」
「上位職?」
「ああ。例えば、剣士なら剣豪や狂戦士だったり、魔法使いだったら大魔法使いになるか、魔剣士になったりする」
やっぱり、ゲームみたいだね、この世界。
「じゃあ、魔導士にも上位職はあるの?」
私がそう聞くと、カイルは少しだけ考えるように空を見上げた。
「あるにはある。……でも、かなり珍しい」
「珍しい?」
「魔導士自体がまず少ないからな」
確かに、クレアさんもマニアックだって言ってたもんね。
「有名なのだと、大魔導士とか、賢者とかかな」
「賢者!」
思わず身を乗り出してしまう。
…賢者。ゲームでもよく見るし、何よりもロマンがある。それが、現実のものになってるだなんて……
「…そんなに喜ぶことか?なれるかどうかも分からないのに」
「だって、賢者だよ?喜ぶしかないよ」
「…?」
どうやら、あまり分かってもらえなかったみたい。残念。
「賢者は、長い間誰も就けていない役職で、条件が分かってないんだ」
「…そっか」
ってことは、賢者になるのはちょっと難しいかもしれない。闇雲に条件を探すのもスマートじゃないし、しばらくは諦めるか。
「…なあ、レクシアは、やっぱり魔導士を続けるのか?」
「…?」
急にどうしたんだろう、なんか悩んでることでもあるのかな?
「辞めないよ、まだ一日目じゃん、魔導士になって」
「…そっか、確かにそうだよな。変なこと聞いたな」
カイルはそう言って、少しだけ笑う。
…でも、カイルが言う通り、やっぱり魔導士は続けようかな。
そういえば、ノーモスさんの役職って確か司書だけど、これも魔導士の上位職なのかな?今度会った時に聞こうかな。…もし派生だったらって考えると、俄然モチベーションが上がってくる。【魔導】スキル、少しずつでもレベルを上げていこう。
よし、そうと決まれば、あとは練習あるのみだ。魔法をたくさん打てば、きっと上がるはず!
「シャドウランス!」
この後MP切れで倒れたらしいです。




