1、白亜の杜
「良い天気だねぇ」
伏せて、膝を抱いて、涙を流しているとそんな声をかけられた。
え、と顔を上げた泣いて、ぐしゃぐしゃになった顔で。
声の主を見る。
「――良い天気、だよねぇ」
そこにいたのは高学年の男の子。だと思う。
それくらいの顔だと思うのだけれど、正確な所は分からない。
なぜなら、少年の座高しか見えていないからだ。
木陰で車いすに座っていたのは線の細い少年だ。
「なのに、君だけ雨を湛えているのはどうしてかな?」
涙で歪んだ視界の中で笑顔が見える。
赦されるような笑み。
「……悲しい事があったのかい?」
「ぁう」
私はしゃくり上げる嗚咽と共に頷いた。
「此処はそう言う場所だからね」
白い墓碑。この町で一番白い建物だ。但し、周りは保養地としての森に包まれている。花蓮台総合病院、と言うのがその名前。
「……君はどこも悪く無いみたいだしね。君の親しい人に何かあったのかな?」
「……おかあさん、が」
少年は先ほどまでしていた作業を止めて、車いすを動かしてこちらに来た。三メートルを動いてきて。
ぽん、と頭に手を乗せる。
「……おかあさんがね、この病院に運ばれてきたの。よくわかんないんだけど、『かんぞうはれつ』だって」
「事故、かい? 大丈夫、此処の先生は優秀だから」
そう言って、頭を撫でる少年。
「……お兄ちゃんは?」
「僕かい? 僕は……足が悪くてね、痛くはないんだよ、――痛くさえない。いや、それはどうでもいいね君の話を聞かせてくれないか?」
少年は、優しい笑みを浮かべていた。




