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「もう無理!」
フーゴは限界を感じて一旦足を止めた。数少ない足場を跳んで進まされる回廊を抜けた先に待っていたのは、同じように跳んで進んでいく歯抜けの床の回廊だった。そこを抜けたと思ったら、また同じような床がない回廊。時々現れる普通の床でようやくひと息がつける。フーゴは、ドカッと床に腰を下ろした。
跳躍を繰り返して、足の疲労が溜まりに溜まっている。フーゴは細く長く息を吐いた。
「荷物の整理する余裕もないんだよ……」
時折現れる敵を倒してアイテムを得ても、それを確認するだけの暇もなかった。フーゴは、何を得たのかを知るためアイテムを広げる。
「うーん。リンゴ? これは、さっさと食べるとして。カップが3個に、剣がさらに一本増えてコインも2種か……」
鑑定の巻物が手に入らない。収納のカップと合成のカップを手に入れたいが、それを確認する術がない。
一か八かに賭けるか……
普段、そんなに緊張を感じる方でもないが、フーゴはさすがに逡巡した。
正体が不明のカップに剣を入れる。入れるとして、まずどの剣を入れるか。
フーゴは除霊の剣を別で持つのが煩わしくてさっさと合成してしまいたかった。だが、自分の今使っている剣に合成することにためらいがあった。
今使っている剣は大した業物ではない。だからこそ、強化させることにもったいなさを感じる。
だが、ユリシーズに捧げたいと思っている剣に除霊の剣を合成したくない。剣は使えばさすがに傷みが避けられない。亡霊系の敵がよく出てくるこの場所で除霊の剣は使うことを避けられない。
「う~~ん……」
フーゴは悩んでいた。除霊の剣はとりあえず後回しにするか。他の剣を合成してしまうか。
ユリシーズに捧げる剣を作りたい。だが、その剣の合成を失敗したくない。だから、合成のカップを手に入れたとして、それを使うことに緊張が走る。
「まずは、確認しよう……」
フーゴは3つのカップの内ひとつを手に取る。カップを眺める。変化のカップとは、デザインが違う。なので、これらは変化のカップではない。
変化のカップではないなら、合成したい元の剣が変化してしまうことはないので、まだ安心して剣を入れられる。これが変化のカップだった場合、せっかくの剣を失ってしまうことになる。
「収納のカップで、取り出せないってやつがあるとか……」
過去の攻略を思い出して、フーゴは考察する。取り出せないだけなら、最終的に割ってしまえばいいので、その剣が失われることはない。だが、不便ではある。
「えーと……挑発のカップとか、水流のカップは中にものが入れられなかったな……」
とりあえず、手で持ったカップに手を突っ込んでみる。手が入っていくので、それらではない。
「やるか……」
フーゴは覚悟を決めて、ユリシーズに捧げたい剣をカップに入れようとした。
「……いや、入んねえ!」
剣はカップの中に入っていかなかった。
「何これ?」
フーゴはカップの中を覗く。
「え? 本当に何?」
カップの中が妙に明るい。そして、底の方に羽が見えた。鳥の背にあるような羽が広がっている。
「?」
フーゴはその羽を取り出せないか、カップの中に手を突っ込む。
羽に手が触れた感触があった。瞬間、カップの中からぶわっと一陣の風が吹き出してくる。フーゴはその風を浴びた。
「うわっ! なんだ、これ!」
その風は不快なものではなかった。爽やかな春の風のように気持ちがいい。
「……?」
特に不都合は起きていないようである。フーゴは首を傾げた。
「なんだったんだ……」
何も起こらなかったと判断しかけて、はっと気づいた。脚の疲労が大幅に軽減しているのだ。
「体力回復させるのか!」
フーゴは嬉しくなってリンゴをほお張る。
「……これ、多分リンゴも回復アイテムだなあ」
同じように体力が回復されたと感じた。
回復アイテムの無駄遣いをしてしまったことに気づいて、もったいないことをしたとフーゴは少し後悔した。




