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2-2

「おいおい、ここって……」

 案内された先の一室が想定以上に立派な部屋で、兄弟達は気後れした様子を見せる。

 その立派な部屋のさらに奥、寝台の前まで案内される。その寝台の中ではある人物が横たわっていた。それが誰かと疑問を浮かべる前に答えはわかった。その人物が始終何事かうわごとを呟いているのだ。そして、その声は彼らも聞いたことはあったのだ。


「来るなら来い、来るなら来い。返り討ちにしてくれるわ……!」

 その声に張りはないものの、元々通りやすい声であるせいか彼らの耳にも届いた。


 そこに横たわるのは、このプラウドの王であり、彼らの実の父であった。具合が悪いとは聞いていた。病を患ったとして、ここ最近は公の場に姿を現すことはなくなっていたのだ。

 まさか、王に会わされるとは思っていなかったので、フーゴも彼らも神妙に黙ってその場に立つ。

 王に臣下として声をかけられたことはあれど、私的な出会いはこれまで一切なかったのだ。


「このように、意識はおありですが意思の疎通は困難な状態です」

 従者の一人が状況を教えてくれる。

「剣が! また剣が……この私を呪うと言うのか……呪われようと我々は屈しない……プラウドの栄光は陰らない……」

 王のうわごとは止まらず、彼の視線は茫洋としたまま天井に向いている。寝台の横に並ぶ彼らに視線を向けることはない。存在にも気づいていないだろう。

「では、お戻りいただきます」

 彼らは王の現状をただ見せられただけで、退室を促された。再び、案内人についていく。

 退室の際、フーゴはちらりと王を見てみたが、特に何の感慨も浮かばなかった。王を間近で見てみれば、きっと何か文句の一つでも言いたくなるのだろうと想像していた。だが、そうはならなかった。実の父のはずなのに、遠い存在だと思い知ったのだった。




「戻ったか」

 彼らは再び王子たちがいた部屋に帰ってきた。

「さて、あれの現状も知ってもらったところで、話を進めようか」

 この国で最も高貴なはずの存在を王子はどこかぞんざいな物のように語るが、誰もそれをとがめもしなかった。彼らはフーゴ達と違って家族としての触れ合いを経験しているだろうに、そんな扱いをしている。彼らにとっての最大の障壁だからだろうか。

 彼らの内の誰か一人が王になるための障壁。


 部屋で待っていた王子は4人。現王の子で継承権を持つのはこの4人だ。王弟などを含めると継承権持ちは他にもいるが、最も王位に近いのがこの4人である。

 呼び出されたのは4人の庶子王子。フーゴは人数を合わされていると感じた。


 継承権持ちの王子は5人いた。それが一人いなくなり、そこから『補充』がされていない。

 継承権持ちの王子が幼少の折、一人亡くなった際、庶子王子の内から最も後ろ盾が強い王子から一人『補充』されて、5人の継承権王子がいる状態が維持されてきた。

 だが、今回はそれがない。


 王の健康状態が良くないこと、すでに王子たちが成人していること。それらの理由が大きいだろう。

 もう継承自体が目前に迫っている。


 だが、継承自体はまだすぐには行われない。国としては他国に不安要素を知られたくないのだ。まだ次の王が誰か決まってない状態で王の健康状態が良くないと発表するわけにはいかない。王の病による退位はやはり次の王が誰か決定してからになる。


「まずは建前に準じた話をしよう。我らが王の健康状態が良くない。この病を治すには普通の方法ではまず無理だ。何か特別な方法をとらなければならない」

 建前の話にしては、随分直接的な物言いだな、とフーゴは思った。

「王家所有のダンジョンがあるのだ。お前達にはここに入ってもらう。そこで、この状況を解決するアイテムか魔法を得て欲しい」

 王家所有のダンジョン。初耳であったが、有ってもおかしくはないなとフーゴは思った。

 プラウド王家の始祖は元はそこまで高い身分ではなかったのだという。だが、不思議とその地位が脅かされることはなく、ここまで王家は続いてきている。ダンジョンで得た何かでその安寧が約束されてきたと考えれば納得できる。


「何かものすごい武器とかでもいいぞ。他国を圧倒するようなすごいやつとか、さ」

 王子の一人が笑いながら冗談でも言うかのように言った。だが、彼が真に欲しいのはその凄い武器の方だろう。

 ダンジョンで得られた凄い武器。そんなものもプラウドの安寧に貢献していたのかもしれない。プラウド建国以来、他国との衝突は多くあったが、それを制して今のプラウドがある。


「そう、我々は現状を打破したいんだ。そのためのダンジョン攻略だ」

 フーゴは聞きながら、まだ何かありそうだと感じていた。



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