2 兄弟達
剣を交換しろと言われたが、聞き流して最低限の研ぎだけをした使い慣れたいつもの剣を受け取る。
強くなりたい気はある。だが、強くなってどうするとの疑問がまとわりついて消えない。フーゴが今以上に強くなって、その力は一体誰のために使うのか。この母国のために使うのか。それはただの消費にしか思えない。命が立ち消えるまで戦わされる。体力というか、人生そのものの浪費。
王宮の一角にフーゴの部屋がある。一般兵士と同等か少しいいくらいの部屋だ。寝るだけにしか使わないので、特に不都合は感じない。フーゴの持つ私物はごくわずかで、その狭いはずの部屋でもガランとして見えるほどしかない。
やることもないので、走りに行くか素振りでもするかと思案していると、扉を叩かれた。
「殿下達がお呼びです」
くつろぐ気分でもなかったが、ゆっくりする暇もない呼び出しに苦笑が漏れ出た。
「あ! なんだお前ら!」
「相変わらずうるせえ輩だ」
「ああ゛⁉ んだと、こら!」
「声がでかいんだよ……」
「そっちこそわざわざ煽ること言うなって」
呼び出された先にいたのは3人の『兄弟』達だ。フーゴと同じく継承権を持たない庶子王子だ。3人がなんやかやと言い合いをしている。フーゴはそれに混ざらずぼやっと眺めていた。
「なんだ、お前。自分は関係ありませんて顔しやがって」
「なんでそうやってどこにでも噛みつくかな」
「クソ短気なんだよ。もういい大人のくせに」
「ああ゛⁉」
フーゴにも絡んでこられたが、また3人での言い合いに戻っていく。
別にフーゴが特別大人しいわけではない。だが黙っていると、勝手にしゃべっているのでただ眺めて時間が過ぎていく。
フーゴは彼らと然程交流があるわけではないが、彼ら同士はよく出会うのか気安く口喧嘩をしている。
「さっきから妙に絡んでくるな。機嫌が悪いのか」
「寝不足か?」
「変な夢見たんだよ! 寝覚めが悪いっての」
「……」
変な夢という発言を聞いた他二人が顔を見合わせている。
「……それは、剣が降ってくる夢か?」
「ああ? なんで、言い当ててんだ」
「ええ。怖……」
そして、三人で黙って互いに神妙な顔をしている。
「お前らも?」
「なんで揃いも揃って同じ夢見てんだよ」
「気持ち悪いな……」
兄弟達もフーゴと同じ夢を見ている。それがいったい何を意味するのか。思えど、答えが出るわけでもない。
「呼び出されたの、この4人かー?」
「それっぽいね」
部屋で待機しているとまた使用人が入ってきて、別の場所へと案内された。
「最初から、そこに案内しとけよな!」
「二度手間だよねえ」
「お偉いといろいろ大仰にしないといけないんだろ」
案内された先では、4人の『王子』達が座って待っていた。
「よく来たな」
王子の一人が彼らに語りかける。
「お前らには、あるダンジョンの攻略に向かってもらいたい」
「だが、その前に現状を知ってもらおう」
そう言われると、また別の場所へと案内された。
「え? こんな王宮の深部に来たことないんだけど」
案内された先は、『王族』が住まう居室がある場所だ。王族と見做されていないフーゴ達が普段足を踏み入れることがない場所である。
「誰かに会わされんの?」
兄弟の一人が案内人に尋ねるが、答えは返ってこない。
「教えてくれてもいいのにさあ」
ぼやくが、それをとがめられることもない。どういうことだと兄弟達は顔を見合わせていた。




