まだ何も…。
忙しくてなかなか更新出来ませんが、どうか読んでやってください。
七月。
夏学祭まであと1ヶ月。
昴が名前を考えてこいと言ってから二週間は経っている。
「…おい、桐野」
「…はい。ごめんなさい」
部室は今とても空気が悪い。
「わかってるよな?あと1ヶ月だって」
なぜなら…。
「なんで名前も曲も決まってないんだよ!この間なにやってたんだよ!」
何も進んでいなかった。
いや。それは言い過ぎだろう。
進んだことはあった。
「煮詰まってきたから気分転換に演奏やら歌うというのはまあわかる。だけど…」
昴は周りを見て告げる。
「どうしてこの部屋がどんどん模様替えされ始めてるんだ…」
本棚や椅子、机。
そして機材。この機材は少しだけ新しい物になっている。提供したのは昴の父だった。
たまたま電話がかかってきて、ついでに余ってる機材がないか聞いたのだ。
父の仕事は音響機器の販売である。ちなみに社長である。
余ってる機材の中から扱いやすいものを届けてくれた父には感謝している。
みんなも喜んでくれたのだ。役に立てたかな、と昴は少し嬉しかったが、それでも今の現状を許せるほどではない。使ってくれるのはいいのだが決めることは決めないと話にならない。
「…芹沢」
どうしたらいいか考えてる昴に声をかけて来たのは桃山だ。
「どうした?桃山、何かあるのか?」
少し目を逸らしながら桃山は言う。
「ごめん。止めなかったわたし達も悪かったんだ。せっかく芹沢の父さんの知り合いのお店で自分の手に合うように、とカスタマイズやメンテナンスしてもらって前よりも使いやすくなったり更に好みの音になって楽しくなってしまって…。つい、気分転換に弾こう、と思ってしまったんだ。本当にごめん」
と頭を下げられた。
そう言われてしまうと、こちらはなんとも言い難い。
少なくとも自分もそうなのだ。
店を紹介してあげたら?と父に言われて紹介したし、楽しそうに笑ってるみんなを見て端で目を閉じて聴いてたりしたのだ。
頭まで下げられてはもう文句の言いようもない。
「…いや、こちらも悪い。少し焦ってしまった。悪いな」
素直に謝っておく。
関係が悪くなるのは避けたい。
「とりあえずだ。時間がもうない。だからこれからの方針を話す。何か意見があれば聞いてから言ってくれ」
昴はみんなを見て、考えてることを話す。
「まず時間がないから、今回は新曲は諦めてもらうことになる。つまり、今回はコピー曲のみだ。今まで聴いてたところ、Skyの曲ばかり弾いてたように思える。少なくとも三曲はやってただろ。弾ける中から三、四曲選んで決めてくれ。あとはそれを詰めていく。それでもってバンド名は各自家で考えながらにしよう。丁度いいから今日から活動日誌をつける。ノートも買ってある。ここに各自思いついたのを書いてもいいし、連絡を取り合ってもいい。名前はまだ間に合うからな…」
体育館を使用する部活なので申請しておかないと当日使わせてもらえない。なので一旦『新設軽音部』として名前を通してある。
ちなみにこの申請名を見た生徒会副会長である八雲先輩はこう言った。
「昴くん、これはセンスがないよー。こんなので発表するの嫌だから、早めに名前をつけてね!」
と。
たしかにこのままでは格好がつかない。
しかし決まらないのは決まらないで仕方ないのだ、とそう思うことにした。
「と、ここまでがこれからの予定だ。何か意見はあるか?」
全員首を横に振った。
「よし。なら早速曲を決めてくれ。俺はちょっと行くところあるから今日は帰るから」
「ん。わかった!なにかあればメールでもするね!」
その言葉を聞いてから昴は部室を出た。
廊下に出て、窓から空を見上げる。
白い雲がふわーっと青い空を漂っている。
ああ、今日もいい天気だな。
そんなことを思いながら昴はある場所へと向かって歩き始めた。
夏学祭まであと1ヶ月。




