第七話 管理官は未来を望む
彼ら/彼女達が歩む道は茨の道である。
「中佐、少尉っ! 二号、ここにいるって……は?」
空軍中央支部航空機用飛行場に二号管理官が駆けてくる。
少尉から直接の通信が入り、二号が飛行場にいることを聞かされたからだ。彼女の顔色は悪く、明らかに焦っているのが目に見えた。
だが、そんな彼女の顔が困惑したものになった瞬間を少尉と中佐は見た。そして、その理由も察していた。
「二号管理官、来たか。思っていたよりも早い到着だな」
「二号ならそこにいる。少尉の、いや、三号の部隊員達はよくやった方だ」
「あの、どうして二号の対応をその、部隊員達がやってるの? それも彼らって少尉が所属している三号小隊の子達、よね」
三人の目の前に広がる光景。
それは三号部隊員の隊員達が戸惑いながらも二号の相手をしている姿だった。二号は戸惑いながらも自らの周りで自分の気を引こうとしている部隊員達の様子を窺っていた。
「三号からのご要望で部隊員に二号を慣らさせておけと。何かあったときに対応できる人間を増やしておいた方が良いとのご指摘があった」
「三号にしては、とっても正論で軍人思いの指摘ね」
「本当にそうだな」
「こちらとしてはとっても有り難いのだけれど、部隊員達はそれでも大丈夫なの? 大分、こう、苦戦している気がするのだけれど」
二号管理官は少尉の言葉に息が止まりかけた。だが、それを顔には出さなかった。チラリと少尉と中佐に目をやれば、少尉は気付いてない様子で二号達の様子に目をやっていた。中佐は二号管理官の目を真っ直ぐに見ていた。中佐には動揺が伝わっているなと彼女は気付いたが、それを口には出さなかった。
「ああ見えて、三号を上手く扱える奴らだ。すぐに二号にも慣れるだろう」
少尉の温かい言葉に二号管理官は自分のことを棚に上げながらも困ったように笑う。
三号の前では言わないような甘い言葉。遠回しであっても、三号のことが大切でなければ出ないような言葉。
それは三号が本当の問題児であり、少尉が三号のことを想っていなければ出てこない言葉だった。
三号が「本当の問題児」であれば、通常の兵士は彼を扱うことは困難であることを遠回しに言っているのだ。
分かりやすく言えば、「三号が問題を抱えている子どもであり、そんな彼に対して上手く接することができる三号部隊員達はもっと制御が難しい二号の制御もでいるだろう」というようなことを言っているということだった。
「……少尉って、ホント、三号想いよね。ね、中佐」
「本当にな」
二号管理官が中佐に笑いかければ、中佐もそれに応えるように目尻を下げた。いつも気難しそうに眉を潜める彼にはない姿だった。
「は?」
少尉は二人の言葉に視線を二人のいる方向に戻す。眉を潜め、不満げな顔をしていた。
「だって、そうじゃなくちゃ、そんな顔ら普通の人はしないわよ」
「………………別に、そういうわけでは」
二号管理官がからかうように少尉の顔を指差せば、彼は何かに気付いたのか焦ったように浮かべていた笑みを引っ込めた。咄嗟に口元に手を寄せて隠そうとし、口を開くが、言葉は詰まった。
返す言葉が何も見つからなかった。否定する言葉は何も思い浮かばなかった。
「未来ある子どものためなら何をしたって構わない。そういう顔してるのよ、今のあなた」
「ふっ、言うな、二号管理官」
「言うわよ。事実だもの」
自分達よりも管理官歴が短く、未だ兵器に対しての感情を自覚しきれていない少尉の姿に二人は後輩を見るかのように柔らかい視線を送る。
「……御二人だって、同じようなものでしょうに。一号と二号の未来を想って、茨の道を歩んでいるくせに」
そして、そんな彼の口から発された否定できない事実についても、二人は否定しなかった。
それは自分達が彼らの未来のために茨の道を歩むことは当然のことだと考えているからだった。
彼ら/彼女達が望む未来は無謀だが、明るい未来だ。




