序章
「金がねえ」
深夜、人気のない道を歩きながら矢吹龍は呟いた。
苦しい受験勉強を終え、華の大学生活を送るつもりだったはずなのに...。
気づけば大学生活も3年が過ぎ、友人たちは就活を始めているのに矢吹は無気力に1人で遊び歩いているだけであった。この日も、1人でダーツをした帰りであった。
「あれ、こんな道あったかな」
歩き慣れた帰り道だが、深夜ということもあるのか見慣れない道を見つけた。どこに繋がっているのか興味はあるが、如何せんその道は暗く、不気味な雰囲気が漂っていた。
(そこにいるのは誰?)
声が聞こえたような気がした。気づくと不気味さや恐怖心を忘れて矢吹はふらっとその道を歩き出していた。
暗い道を歩いていくと赤い光がぼんやりと見えてきた。その光の奥には階段が見える。
階段の下まで行くと、またさっきの声が聞こえてきた。ただ、前よりも確実に鮮明な声が聞こえてくる。
(こっちに来てはダメ、きっと後悔する)
後悔という言葉に一瞬ためらったが、それでも矢吹は進む。
「俺の人生後悔することばっかりだ。今更何かあっても後悔なんてしねえよ」
1人でそうつぶやき、一段一段階段を上る。暗い道、先もまだ見えずに不思議な声、自分がおかしくなったのか、はたまた夢の中なのかなどと漠然と考えながらも進んでいく。
階段を上った先には祠があった。矢吹がここで暮らしてから1年が過ぎたくらいだが、そこは初めて目にする場所だった。
「来てはダメと言ったのに。」
声がした。どこからかは分からない。ただ、とても近くからということはわかった。可愛らしい声だった。
「誰かいるのか」
矢吹も声を上げた。
そして、祠に1歩近づいた。
その時、夜の闇が消え、眩しいばかりの光が差し込んできた。




