女教師の煩悩
ー石山教師視点ー
教室の外がガヤガヤ煩くなった。
生徒たちが到着し始めたのかしら。
「今日は水曜日。ということは…」
自然と胸が踊ってしまう。
教師としてあるまじきことだけれど、私は一人の生徒に惹かれている。
恋と言っていいのかは分からない。
でも新田くんを見たら、知ったら、誰だってこんな感情を抱くんじゃないかと思う。
そのぐらい彼は、不思議で綺麗で魅力的だ。
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第一印象は、とんでもない美男子だと思っただけ。
「だけ」とは言ってもかなり衝撃だったけど…
中等部から入学した新田くんは、優しそうな老夫婦に連れられて応接間に案内されていた。
たまたま報告書を渡しに来ていた私は、思わず足を止めて見惚れていた。
最初から謎に包まれた子だった。
理事長が直々に面会する生徒がいるという異例事態に興味を抱いて、ドアの隙間から除いた。
斜め後ろから見えたのは、しなやかな細身のシルエット。
サラサラな黒髪の隙間から、校則違反のピアスが幾つもキラキラと光を反射していた。
正面でにこやかに話している理事長は、特に注意する素ぶりもない。
特別待遇、という言葉が頭をよぎった。
もっとよく見ようとしてドアの隙間を広げた瞬間、ギシッと音が出てしまい一同が私を振り返った。
私の目に映った彼は
生身の人間とは思えない美しさだった。
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「は〜い、皆さん、今日は先週から引き続き、百年戦争の文献を見ていきますよ〜。ほら、早く席に付いてね〜。そこ、お喋りしない!」