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大越に電話をかけると「とりあえず家に来てください」と住所を言われ、大越の家に初めて行った。
日は暮れていたがその闇の中にそびえ立つ高層マンションの、それも最上階に住んでいるなんて知らず、この時初めて大越が本物のボンボンだったことを知った。
「瑞穂さんがどこにいるか知らないか?!」
ホールにあるインターフォンに大越が出ると、焦りのあまりいきなりそう聞いてしまった。
「中井くん。ずっと待っていました。とりあえず中へ」
大越は質問に答えず、オートロックのドアを開けて中に招いた。
エレベーターで昇り、再びインターフォンを押して部屋に入る。
室内は全体的に一世帯が暮らしても十分な広さだった。リビングには白い大きなL字型ソファがあり、とりあえず座ると大越も俺の向かいに座った。
「さっきの質問ですが、先程まで瑞穂さんはここにいました」
「どういうことだ?!」
俺の反応に臆する事もなく、大越は続けた。
「瑞穂さんがどこに行ったのか、心当たりがあります。ですが、中井くん」
大越はそう言うと息を吸い込み、今まで見た事のないような怒りを露にした。
「瑞穂さんが今まで、どれほど苦しんでいたと思うんですか?! 今日のことだって、どれだけ楽しみにしていたか……僕じゃ、ダメなんですよ……」
最後の方の大越は泣きたくても泣けない、辛い表情をしていた。
「中井くんがみなこちゃんのことを想っているのは分かっています。でも──」
「みなこちゃんとはもう、何もないんだ。それに、分かったから。大越」
落ち着きながら俺が言うと、大越は驚いたようにこちらを見てきた。
「今まで気付けなくて悪かった。詳しくは後で話す。だけど、頼む。瑞穂さんがいるところを教えてくれ」
俺の顔を大越は黙って見ていたが、立ち上がって外を見た。東側の壁一面が窓になっていて大学や街の光が輝く中、山の上に観覧車が見える。
「瑞穂さんは多分、玉那ランドに向かったと思います。ここからよくあの観覧車を見ていましたし、それに──」
俺が一度も瑞穂さんの口から聞いたこともない話を大越はする。いや、今日聞いた事はどれも、自分が〝知ろうとしなかった〟話だった。
「そっか、だから花火大会で…………分かった。行ってくる」
部屋を出て行こうとすると、「中井くん!」と大越が叫んだ。
「瑞穂さんを、頼みましたよ! 僕がなんで引き止めなかったか、分かってますよね?!」
その口調から、大越はもしかして瑞穂さんに本気だったのかもしれないと俺は感じた。
「あぁ、必ず連れ戻す!」
俺はそう言って、瑞穂さんの元へ向かう。




