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本部役員奔走中 at みどり幼稚園  作者: 彩緒


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第1話:入園前なのに? 

数ある作品の中からご興味をお持ちいただきありがとうございます。

(第1話 2321字)

 よし!入園許可証は受け取った。

 書類もすべて出した。

 制服と帽子とカバンは三月に自宅に届く。

 あとは通園バッグなど、幼稚園指定のサイズで手作りすること。

 これが一番面倒だな。

 でも一人っ子なんだからそれぐらいはちゃんとしないとね。

 入園式、母親はやっぱりスーツにコサージュなんだろうか?

 感覚古いかな?


 理緒がお昼寝している間に、コーヒーを飲みながら調べてみよう。

 お湯を沸かすために立ち上がると、スマホがなった。

 知らない番号だ。迷ったが何となく出てしまった。


「浅井香里さんのお電話でよろしいでしょうか?」


 誰?セールス?


「私、みどり幼稚園で役員選出委員をしております立川と申します。突然のお電話ですみません。来年度の本部の役員をお願いできないかと思って連絡させていただきました」


 えっ、どういうこと?

 一週間前に園長先生と面接して入園が決まったばかりなのに?

 まだ十一月だよ。

 いや待って、私の電話番号をなんで知っているの?

 幼稚園が勝手に教えたってこと?


 いろんなことが頭に浮かんだが、とっさに上手い返しができず、たどたどしい話し方になってしまう。


「あの、先週入園が決まったばかりで、役員と言われてもよくわからないのですけど・・・・入園後、クラスで集まったときに、決めるものではないのですか?」 


「それはクラス委員ですね。そうですよねぇ。突然言われてもわからないですよね。本部の役員とクラス委員は別で、本部の役員は幼稚園全体の役員です。詳しいことは、本部の役員が後日電話いたしますね」


 立川さんはゆったりと、共感している感じで喋ってくる。対して私は、話が見えなくて余裕がない。完全に向こうのペースの会話になっている。それでも必死に頭を働かせる。


「今、説明してもらうわけにはいかないのですか?」


「すみません。私は本部の役員じゃないんです。役員選出委員は、次の役員を決めるだけの仕事なんです。わかる範囲でお話はしますけど・・・」


 えっ!

 何その人に嫌われそうな役目!


「うちは兄弟もいないし、役員のこと本当によく知らないんです。入園してすぐ本部の役員てできるものなんでしょうか?」


「今の本部の役員は5人中2人が年少の保護者ですよ。入園してすぐでも問題ないです」


「役員は一回引き受ければ、後はやらなくても大丈夫ですか?小学校入学前に引っ越すかもしれなくて」


「一回役員やれば卒園までやらなくていいかは、その学年の人数によります。今って、どこの幼稚園でも入園者減ってきていますよね。役員免除も人数次第かと・・・」


「えっ、あ、そうですよね。あと、この電話番号どうしてご存じなんですか?私、自分の電話番号は知り合いにしか教えていないんですけど」


「あっ・・・。すみません、幼稚園の先生から聞きました。・・・では、前向きにご検討くださるということで。一週間後、本部役員の方から電話いたしますのでよろしくお願いします」



 たった15分ぐらいの電話だったのに、すごい疲労感・・・。

 脇に汗をたくさんかいている。

 一週間でどうするか決めておかないと・・・。



 



「どう?引き受けてくれそう?」


「押せばいけそう。ってか引き受けるまで押す」


「じゃあもう決定でいいね。一人っ子で専業主婦なら断る理由ないっしょ。引っ越しねぇ・・・」


「たぶん予防線でしょ。次回電話かけるときは、本部役員を引き受けてくれたお礼でいいんじゃない?」


「とりあえず、これで5人目確保だね」



 



 電話を切ってしばらくたっても、心はざわついていた。

 いつか自分もPTA役員をやるとは思っていたけど、いきなり電話がかかってくると思わなかった。

 なんの準備もないところに、急に決断するよう迫られた感じだった。

 

 役員は、一度はやらなきゃいけないと思っている。

 でも入園していきなり本部って言われても・・・。


 理緒はまだ寝ている。

 そろそろ起こさないと夜が大変になる。

 あと10分だけなら・・・。

 なんとなく母に電話してみる。


「もしもし。理緒ちゃんは?ああ、まだ寝てる。えっ、入園前に役員の話?そんなに早くから?昔は入園式後にくじ引きだったけどねえ。入園者は・・・10人!?少ないねぇ。結局全員やることになりそうだね。働いていないなら時間あるでしょ。他のお母さんと知り合いになれて楽しいかもね」


「うん、まあそうなんだけど・・・」


「役員は先に済ませちゃった方が楽だよ。・・・そろそろ理緒ちゃん起こしたら?じゃあまたね」


 話しているうちに考えはまとまった。

 どうせやらなきゃいけないなら、最初にやってしまおう。



 



 三日後、本部の瀬尾さんという人から、電話がかかってきた。


「本部の役員を引き受けてくださると、立川さんから聞きました。ありがとうございます!」


 瀬尾さんは、明るい声ではっきりと言った。


「・・・えっ!?本部役員業務の説明とお聞きしたんですけど・・・」


「はい、でも来月の引継ぎのときに、役職が決まったら詳しく説明をするので、その時に聞いた方がいいと思います」


「・・・もしかして私が役員になること、決定になっていますか?」


「違うんですか?」


 瀬尾さんが質問で返してくる。


「いえ、どっちにしろ引き受けるつもりだったからいいんですけど・・・本部役員の業務の説明としか聞いてなかったので」


「そうだったんですね。とにかくありがとうございます。来月12日に、会議室の方へ来てくださいね」


 どこがどうということはないが、この人わざと私が役員を引き受けた前提で話している、というのがわかってしまった。

 そんなことしなくても引き受けるつもりだったのに・・・。



 ダメダメ。

 これからは幼稚園で顔を合わせることになるんだ。

 私は、瀬尾さんに聞こえないようにフーっと息を吐くと


 「来月会議室ですね。わかりました」


とだけ返事をした。


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